音楽
“Cing(シング)”照井順政インタビュー|キャラクターアーティストプロジェクトとは?

すしお×照井順政タッグが生み出すキャラクターアーティストプロジェクト“Cing(シング)”とは? キーマンである照井さんにインタビュー!

「自分探し」の解釈を発展させるか、Cingの楽曲を創り出す上でのこだわり

ーー曲はどのように作っていったのでしょうか?

照井:僕はコンセプトから曲を作るタイプで、スタッフさんの考えた初期設定のようなものを、いつも自分で考えているんです。ただ今回はそれがすでにあったので、自分なりに解釈していく中で、近未来の東京のビートのイメージをつかみたいと思い、最初にリズムから考えていきました。サイバーパンク的世界観で言うと、僕の中では芸能山城組や川井憲次さんの音楽が根付いていましたので、まずはそのイメージから膨らませていきました。

ーー『AKIRA』や『攻殻機動隊』ですね。

照井:そうです。雑多なアジアの近未来都市の中に、和太鼓や民謡などの和のテイストが入っているような感じは引き継ぎつつ、それをどうアップデートできるか、自分なりに解釈するとどうなるのかを考えていく感じでした。

ーー今回の舞台である街のリズムは、どんな感じなのでしょう?

照井:ダンスミュージックのジャンルでジューク/フットワークというものがあるのですが、自分がそこに傾倒していたので、伝統的なサイバーパンクの世界観に、それをかけ合わせていけないだろうかと考えました。

ーー先程世界観を自分で作っていくとおっしゃっていましたが、今回のように他者からそのアイデアを受け取って一緒に作るとなると、またひとりでやるものとは違ったイメージが生まれるものなのでしょうか?

照井:世界観は自分も加わって考えることができたのですが、いただいた中で引っ掛かりがあったのは「自分探し」というテーマですね。Cingの場合は記憶を失っているので、文字通り「自分探し」なので例外ですが、一般的に使われている「自分探し」という言葉にはあまり良いイメージを持っていなかったんですよ。言い訳がましいというか。

言いたいことはわかるんです。社会の中での自分と、個人としての自分のイメージが乖離してしまっているというようなことだと思うんですけど、そのままだとあまり気乗りのするテーマではない…その状態で世界に入り込んで曲を作れるのかというと厳しいと思ったので、「自分探し」の解釈を発展させようと思いました。

ーーどう発展させたのですか?

照井:個人の内面や、その個人の欲望の対象にフォーカスするのではなく、むしろ個人を引き裂いている要因である「社会」や、「コミュニティ」の方にフォーカスを当ててみようと思いました。そこに照射した光の反射で個人というものを逆説的に浮かび上がらせるというようなことができないかと。僕が以前プロデュースしていたsora tob sakanaでやっていたことも、何となく“君と僕と世界”といったような大きくてわかりやすいものを扱うことが多く、それはユニットのカラーに合っていたし全く悪いことではないのですが、Cingではもう少し違った視点を持って、その間にある社会といったものを扱うことによって一段深く人間を見つめられたらと考えました。

それに今回は記憶を失くしての「自分探し」という意味もあったので、自分というものはどういったところから立ち上がってくるのかを考え、社会と繋がっていくことによってあぶり出される自分みたいな形であれば「自分探し」も頑張れるかもと思い、そこをテーマに音楽を作ろうと考えました。

ーーすごく深くて面白いです。

照井:ただ1曲目なので、物語や世界観もある程度提示しなければならなかったこともあって、抽象的な言葉が多かったりまだそのテーマにあまり踏み込めてはおらず、具体的さに欠けるみたいなところはあったんですけどね……。なので2曲目、3曲目ではもう少し具体的に踏み込んだ言葉にしていきたいと思っています。

ーー抽象的とおっしゃっていますが、曲自体はものすごくカッコ良くて、記憶を失っているということが分かれば伝わるような歌詞だったと思います。先程のリズムから作り上げていったというアレンジについて、もう少し詳しく伺ってもいいですか?

照井:アレンジもかなりいろいろな要素を詰め込んだのですが、それも1曲目だからというところは大きいです。sora tob sakanaのときもそうですが、自分の曲は要素を詰め込みすぎで、おそらくその力いっぱい感が良さであり、恥ずかしくもあったのですが(笑)、今回は一曲目ですし名刺代わりに喰らわせなければいけないと思って、パンチは出そうと思っていました。

ーーCingの歌声から始まりますが、イントロから、さっそく民族的な雰囲気もあって引き込まれました。

照井:竹を叩いているような音ですね。あれは都市の月灯の中でヤバい奴たちが集まっている雰囲気というか。スラム感を出したいと思い、こういうリズムにしました。きっちりとした楽器の音というより、ゴミ箱の蓋を叩いているような音で構成する感じですね。

サイバーパンクだとありがちなテーマかもしれないですが、テクノロジーと近未来を全面に押し出しておいて、最終的なテーマは肉体性だったり、自己連続性ってどこにあるの?というところは避けて通れないので、まずは生きている身体のイメージを提示したいと思ったんです。冒頭は記憶を失っているCingがスラム街の片隅で目を覚ますというようなイメージもありました。そこからコードが入ってくるところで街の明かりが広がっていくイメージで作っています。でも、設定的にこの街はそんなキケンなところではないんですけどね(笑)。

ーーBメロのところはトリッキーでしたね?

照井:カットアップ的な手法を使ったところですね。自分がやっていたエレクトロニカ、ポストロックというジャンルで多用されている手法なのですが、それを引用しつつ錯綜する記憶感、混乱感を出していきました。失った記憶の断片がぐるぐるしているイメージです。そこにトラップっぽいハイハットを加えてみたり、多少戯画的に今っぽい音楽を描こうとしています。

ーーサビの部分がきれいなメロディでした。

照井:そうですね。パーンと視界が広がっていくようなイメージでした。

ーーそこからサイレンっぽい音が鳴り響いたり、不穏な感じも匂わせつつでしたが。

照井:ここも少しキケンな部分にフォーカスした感じです。

ーーサビからどんどんベースが強調されていき、2番からのベースリフがとてもカッコよく感じました。

照井:ここでトランシーに同じフレーズを繰り返すことで、、プリミティブな反復の快感みたいなところを出そうとしています

ーーそして何と言っても、ボーカルがとてもきれいな歌声でした。

照井:この世界観を音楽にしていくところで、もうひとつ大きく考えていたのは、Cingの歌声に合う曲を作ることでした。自分がこれまで一緒にやってきた女性ボーカルの方は、割とストレートに、イノセントに歌う方が多く、自分もそれが好みだったんです。

でもCingに関しては、表現力の幅が広くて情感のある歌声だったので、自分がやったことがないメロディラインに挑戦できると思い、その声に合うメロディを作ろうとは思いました。個性的な歌声だと思うのですが、無垢さと歌姫感とのバランスがすごく良いんですよ。

ーーすごく表現力があるのに、不意に垣間見える無垢な感じがとてもいいんですよね。ちなみにスタッフさん的には、リテイクなどはあったのでしょうか。

スタッフ:リテイクなんて大それたことはしていないのですが、この曲ができる前に曲の原型のような、「頭の中で考えているイメージの集合体です」と、曲をいただいたんです。それを聴いた時点で「これでお願いします!」と思い、社内の会議も通しました。その原型から、新たな曲ができてきたのですが、直前で今できているサビを作り変えたいと照井さんから言われたんです(笑)。

照井:その際は失礼いたしました(笑)。完成してしばらく経って、歌声の良さをこのサビでは活かしきれないかもしれないと思い始めてしまって。本来なら言いづらいことなのですが、一発目だしちゃんとやらなければと思い、直させてもらいました。元のメロディも気に入っていたのですが、Cingの歌声をもっと活かしたいと思ったんです。

ーー3曲で第一章が終わるそうですが、3曲トータルで考えているのですか?

照井:そうですね。歌詞は任せていただいているのですが、2曲目もすでに作り始めていて、なんとなくこういうことをしようというのは考えています。

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