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『メガトン級ムサシX』永井豪&日野晃博ロングインタビュー

『メガトン級ムサシX』に『マジンガーZ』と『ゲッターロボ』が参戦! 原点と最新作から見るロボット作品の魅力とは?|永井豪さん&日野晃博さんロングインタビュー

映画は年間100本見る

ーー他に日野さんから永井先生に聞きたいことはありますか?

日野:はい。技を叫ぶのはなぜなのでしょうか? 技の名前を叫ぶなんて今日日『メガトン級ムサシ』でしかやってないません。攻撃するのに喋る必要はないですからね。

永井:よく「なんで叫ぶんですか?」って言われたりしましたけど、かっこいいし、声優さんも喜ぶし……(笑)。

日野:それも『マジンガーZ』から始まったものですよね。

永井:そうですね。声を張れる演技も声優さんたちが喜んでくださるので入れた部分はあります。

日野:キャラクターの声とかはどうでしたか? 兜甲児はこういう声じゃない! みたいなことはなかったんですか?

永井:最初はちょっとありましたけど、あっという間に慣れちゃいましたね。最初にイメージした声はすぐに忘れちゃいました(笑)。

日野:『バイオレンスジャック』と世界観が似ているって言われたりするんですけど、確かに世紀末的な世界観の中で生きる人達を描いているのは永井先生の作品にもあって。そういう世界観を表現する楽しみがあったのですか?

永井:『バイオレンスジャック』は戦国漫画を企画として出した時に始まりました。「時代劇は流行りません」って却下されちゃったんですよね。

じゃあSFでやってみようと。どうすればいいかなと思って、ああいう風に滅びてしまった世界で、そこで生きる人々、群雄割拠な時代になっていく。それを動かすエネルギーとしてバイオレンスジャックっていうキャラクターを考えて、持っていったら通りましたね。

後で描いてるうちに思ったのは、自分の中で『デビルマン』で世界を滅ぼした辛さっていうのが残っていて。

日野:辛さ?

永井:はい。世界を滅ぼしてしまったっていう痛みが自分の中に残るんですよね。それをやってしまった飛鳥了なんかは悲惨な想いをするんですけど、なんでこういう物語になったのか自分ではわからなかったんです。

でも最後には『デビルマン』のレクイエムなんだなって理解するんです。そうすると『バイオレンスジャック』の話がまとまるなと。

日野:なるほど。

永井:そういう方向に行ったんですよね。あれは『デビルマン』が滅ぼした地球なんです。そこで生き残った人たちが新たな国を作っていく過程を描きたいと思っていました。

日野:漫画家の先生たちの世界観は、ひとつ好きな軸がある気がします。同じ世界観の中で複数の作品を展開する松本零士さんもそうかなと思うんですが、作品が違ってもどこかで繋がっているような。

永井:そうですね。根本の部分やコアなところは一緒なんですよ。

別作品をやってるのに、これは繋がっちゃうなって思うこともけっこうあります。自分ではそういうつもりはないんですけど、どこかでポンと出てきてしまう。

日野:根本的に好きな世界や描きたい事がひとつある感じがしますよね。自然とそうなってしまうというか。

永井:全然違うものを作ったつもりでも、描いてるうちに繋がってしまう。あの作品の影響だな、とか反動が来てるなってよく思います。

日野:さらに新しいロボットのアイデアが思いつく事はありますか?

永井:やたらとあって(笑)。こういうの作ったんだけどって渡したりするんだけど、なかなか動けないものもいろいろあって、そこは任せていますね。

日野:ということは動いてるものもありそうですね……?

ーー(笑)。

永井:思いつくのはすぐ作っちゃうんです。それで見せて反応が良ければもっと設定を作る。

日野:お仕事を依頼してて思うんですが、アイデアを続々と出してくださるので、また新しいものを作っちゃうんじゃないかなって思っていました。

永井:作れると思いますよ。アイデアが突然生まれるんです。なぜかはわかりません。

日野:そうですね。職業柄というかちょっと分かる気がします。そんなアイデアを持ってくる場所を是非うちにしていただければ……!

ーー(笑)。自然な流れで営業!

一同:(笑)。

永井:それは嬉しいです。

日野:『メガトン級ムサシ』はまだ続きますけど、それ以外の連携もまたできると思っています。

永井:やりたいですね。この年齢なので、今の子供の感覚とはズレているかもしれないなって思っているんです。日野さんはその辺りを的確に掴んでいると思うので。

日野:僕も日々苦労しています……! 永井先生の発想で僕も刺激を貰いたいなと思っております。

永井:本当にもう僕はつまらない事を思いついても作品にしちゃうんです。普通はやらないようなものをやってしまうので、『へんちんポコイダー』とかとんでもないものになるときもありますね。

日野:その発明がずっと続いているわけですもんね。

永井:『けっこう仮面』なんか誰もやらないよね。

日野:いろんなものの歴史を作ってますからね。ちょいエロ系の方もすごいですから永井先生は。

永井:いたずら描きで面白がっていたらいつの間にか作品にしています。

日野:それはそれでまた2時間くらい話せますけどね! 床屋さんとかで興奮しながら読んでましたから。

ーー(笑)。以前のインタビューで日野さんはゲームからアイデアを思いつく事があると仰っていたんですが、永井先生のアイデアの源泉はなんですか?

日野:やっぱり手塚先生ですか?

永井:それもあります。あと未だにすごい量の映画も見るし、小説も最近は読んでないですが若い頃はSF中心にすごい量を読んでいました。漫画に役に立ちそうなものはやたらと貪欲に。落語でも歌舞伎でも好奇心を持ったらすぐに行っちゃうとかね。

面白いものは大好きだから、自分の中でごちゃごちゃ混ざって出てくるんじゃないですかね。今も年間で100本くらい映画を見ているんじゃないかな。もちろん劇場で見るのは毎週1~2本くらいなんですけど。

試写会もよく行ってたんですけど、時間に縛られちゃうからめんどくさくなって(笑)。

日野:最近見た映画で面白かったものは?

永井:『ジュラシック・ワールド』とか『キングダム2』とかね。『鋼の錬金術師』の実写も全部見たし。なんでも観ますね。

日野:本当にジャンルが広いですね。いわゆるVOD系や配信サイトはどうですか?

永井:それもよく観ますね。『オビ・ワン・ケノービ』とか『マンダロリアン』とか、『ゴッサム』などいろいろ観ますね。本当になんでも観ます。恋愛ものもアクションもSFも。うちの奥さんと映画を見に行くのでミュージカル映画も見ますよ。

日野:付き合いで行って退屈だな~なんてことはないですか?

永井:ありますけど、それなりに面白い部分を見つけますから。

日野:逆にSFすぎると奥様が嫌になったりしますか?

永井:だんだん僕に感化されていきますからね。妻も好きになっています。嬉しいですね。

日野:長い付き合いだと趣味は当然理解されてますよね。

永井:時々「この映画は結婚しなければ観なかった映画だ」って言ってくれますね。今度はジョーダン・ピールの『NOPE』を見に行こうかと思います。『ゲット・アウト』ですごい監督だなと思って。

ーー監督なんかも追いかけたりするんですね。

永井:『シックスセンス』のM・ナイト・シャマランなんかも出てきた時は驚きましたね。

ーー日野さんも多く見てらっしゃいますしね。やはりお二人共映像表現もお好きなんですね。

日野:ロボットもののすべてが永井先生の影響を受けています。その中で僕がやりたかった事があるんです。今いろんなロボットものが出てきて、どれくらいリアルに作れるのかって競い合うようになっている状況の中で、空中で合体したり、技名を叫んだりある種、意味のない行為を最新の技術を使ってしっかり受け継いでやる。

そういう昔にかっこいいと感じたものを、そのまま最新の映像で作っていくっていうのをドキドキしながらやっています。

永井:良いですね。自分が撒いた種が広がっている気がして嬉しいです。

日野:いわゆるスーパーロボットで作られた遺伝子を体現しているのが『メガトン級ムサシ』なのかなと思います。作品のファンの人達はみんな言います。「日野はゲッター線を浴びている」って。

僕がギリギリのオリジナルを見ている世代だと思うんですけど、その後の若いクリエイターの人たちは『スーパーロボット大戦』とかで知っていて後でフィルムを見るんですよね。

ロボットには、昔の原点となるコンテンツを若い人たちが今見ても魅了される力がありますよね。この間『ゲッターロボ』の第1話を見返したんですけど、ドッキングシーンが印象的で。

当時はサクッとドッキングしてた感覚なんですけど、今見ると試行錯誤しながらやっていたんだなって思いましたね。

永井:『トップガン マーベリック』は見ましたか? あれも実際にあんな感じだとすごいことになりますよね(笑)。

日野:『トップガン』もかなりケレン味があって、空中戦も現実的に無理だと思うんです。でも必殺技的な感じで後ろに回ったりとかするのでわかってるなと。

永井:映画は面白くなきゃいけないですからね。

日野:リアルかどうかを問うてるわけじゃないですから。『メガトン級ムサシ』もリアルさは一定のところまでちゃんとやるんですけど、その線を超えたら物理を無視するとかいろんなことやってます。

今はロボットものやると必ずリアリズムについて触れられるので、『メガトン級ムサシ』ではストーリーの最初に地球に大穴を開けたんです。こんな所が舞台なんだからリアルとか関係ないよって伝えたかったんですよね。過去一ひどい地球ですね。

永井:僕もそれはやってないな。

日野:非常識をしっかり認めてもらうように、面白みとしてやってます。でもそれも永井先生の発明の上で成り立っています。

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