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『アキバ冥途戦争』スタッフ座談会で明かされる物語誕生の経緯【連載第3回】

秋アニメ『アキバ冥途戦争』増井壮一監督、シリーズ構成・比企能博さん、Cygamesプロデューサー竹中信広さん、P.A.WORKSプロデューサー・辻充仁さんによるスタッフ座談会をお届け! 作品が生まれた意外な(?)経緯を語る【連載第3回】

「面白いんだけど、俺、どうしたら良いんだろう?」

──比企さん、増井監督はお話をいただいた時は、作品に対してどのような印象があったんでしょう?

比企:僕がこの話をもらった時は企画書段階だったんです。話を聞いて「面白そう」とは思ったんですけど、最初は内容が読み取れなくてですね……(笑)。

竹中:あはははは!

比企:その時は美少女メイドが戦うことだけが面白いアニメなのかなと思っていたんです。それはあまり好きじゃないなと(笑)。でも話を聞いていくと、そういうことではなくて。結果的に美少女が戦っているのは1割くらいのような……。

辻:1割ですかね(笑)。

比企:先日、最初の段階の企画書を読み返したんですよ。そうしたらコメディ6割、アクション1割、ドラマ2割って書いてあって。それ9割じゃんって(笑)。

一同:(笑)

──増井監督は?

増井:僕は比企さんのプロットを辻さんから見せてもらっていたんですよね。僕が見た段階では、結構細かいところまで詰められていて。それで「面白いな」と思ったんですけど……さきほど比企さんが「美少女メイド」と言ってましたが、そのメイドたちの活躍と、暴力描写との棲み分けが分からなくて。

「面白いんだけど、これはどうしたらいいんだろう?」って思った記憶があります。ちょっと腰が引けるような感じがしました。それで竹中さんや比企さんに質問をいくつか投げさせてもらったんです。

竹中:質問状をいただきました。

増井:読み取れなかった部分をリストにして、皆さんがどこを狙っているのか聞くところからスタートしました。

──そのリストにはどのようなことが書かれていたんですか?

辻:(パソコンを見て)当時のメモが残ってますよ。結構ボリュームがあります(笑)。内容は全ては書けないと思うんですけど。

竹中:その質問リストを受け取った感想としては「まあ、そうだよな」と(笑)。

増井:まず世界観が分からなくて「どういう世界なんだろう」と。メイドがピストルを持つということは、コスチューム、街の様子、乗ってる車の車種はどんなものなんだろうと質問させていただいた記憶があります。「普通の車じゃなさそうだな」って。

車に関しては、最初のうちは竹中さんと意見が違うところがあったんです。僕はいわゆる痛車や、ウィングが派手な車を想像していて。そういうのがスタンダードな世界なのかなと思っていましたが、意外にも竹中さんは「ベンツでいきたい」と(笑)。

あと、お題としては各話読み切りのような内容だったので、その楽しみと、シリーズを通した流れの両立のために、キャラクターのつながりをどうしたら良いのかなどを共有しました。

竹中:タイミング的には脚本になってない前段階だったんです。まずは監督のやりたいことを形にしてもらいたいなと思っていたので、僕と比企さんで監督の意見を聞きながら「調整していこうか」と、動きをシフトしていった記憶があります。

──さきほどから思い出すように皆さんお話されていますが、かなり前のことになるんです?

竹中:そうですね。

辻:脚本期間がめちゃくちゃ長いんです。PAの他作品に比べて本当に長かった。スタートから最終話のアップまでは2年半くらい掛かっています。制作的に、そこまで時間をかけられないんですけど(笑)。

──企画を詰めるまでに時間が必要だったということですね。

比企:でも体感的には早くて、大きく詰まったことはあまりなかった印象なんですよね。ただ、監督が「スタッフもキャストもキャラクターも、皆、ただ真面目に生きてるだけですから」とコメントを出していましたが、コメディだけど真面目、みたいな雰囲気を掴むまでには1年間くらい掛かった気がします(笑)。「これは真面目に、メイドたちが任侠をやっているんだ」と帰結していくまで、徐々にというか。だからさっきの痛車の話も「真面目だから黒のベンツに乗ってるんだ」と思っていました。

竹中:監督に入ってもらってからはスムーズだった気がします。「最終決定権を持ってる人が生まれた」というのは大きかったのかなと(笑)。

辻:それまで「じゃあ、これでいこう!」と舵を取る人がいなかったですから(笑)。監督がいない状態では決められないので。

舞台設定の裏話

──舞台は1999年のアキバ。その設定には、なにか理由があったんですか?

比企:本当に初期の段階で「携帯電話を使わせたくないよね」という話があったので、1999年という話があがったんですが……。

増井:スマホがあると、連絡手段が楽になるんですよね。携帯電話以前って「待つ時間」「待たされる時間」があって。駅前で30分待たされて激怒するとかね(笑)。スマホが登場すると、都合がよくなりすぎてしまいますから。だから、スマホを持っているとするなら、店で没収されるか、使う時間を制限されている、という裏設定にしようかなと思っていました。

──強豪校の部活じゃないですけど。

増井:そうそう。なるべく黒電話に頼るしかないようにしたいなって。

竹中:1999年にはすでに携帯はあるんですけどね(笑)。でも今のように、スマートフォンが主流ではなくて。あとは世紀末感や街並みでしょうか。電球がまだ残ってる感じが良いよねって。「めちゃくちゃこだわりを持って決めました」という感じはなかったんですけど。

辻:でも、その時代にすると「設定大変だな」と思った記憶がありますよ(笑)。どこまで再現できるかな、と。

増井:僕は面白いなと思いました。昔と言えば昔なんですけど、微妙な昔なんですよね。僕はあまりアキバに詳しくなくて、今と1999年で何が変わってるのかなと考えたときに……ピッチやガラケーはあったけど、スマホがない時代。

あと、オタクや萌え文化、それこそメイド喫茶も一般的に盛んじゃないかなと。オタク文化が定着する前の、いわゆる本当のジャンク品や、ワープロ、マイコン、無線とかがまだ生きている時代。それが決定的に違うなと思って。画面上では今とあまり変わらないかもしれないんですけど、よく見るとパソコンが野暮ったかったり、スマホを持っていなかったり。そういう差を出さなきゃなと思っていました。あと車の車種が違いますよね。

──私は車の知識があまりないんですけど、20年弱違うと、そんなに変わるものなんですね。

増井:角ばっているんですよね。

辻:新しくなるにつれて丸みを帯びていってる印象があります。

なごみ役の近藤玲奈さんは「唯一無二」

──キャスティングについてもお伺いさせてください。とんとことんのメンバーはオーディションがあったと聞いたのですが。

竹中:主要メンバーはオーディションで決めていきました。制作時間が長かったことで、意外と(制作チームの)キャラクターに対するイメージは合致していたんじゃないかなと。テープオーディションからのスタートだったんですけど、数は結構絞っていたような気がします。

辻:意見が割れることはあまりなかったですね。

竹中:うん、意外とすぐ決まった。

増井:しぃぽん役の黒沢ともよさんは僕がご指名しました。最初は「スケジュールが合わないから難しい」というお話だったんですけど「それでも入れて下さい」という希望を出しました(笑)。

──そうだったんですね!

増井:以前、別の作品でご一緒したことがあったので、しぃぽんいけるんじゃないかなと思って。彼女は作品を真剣に捉えてくれる方なので、ある意味、これだけふざけた作品に出演するのは迷ったと思いますよ(笑)。

竹中:申し訳ない(笑)。

──ゆめち役の田中美海さんや店長役の高垣彩陽さんに関してはどうだったのでしょうか?

辻:キャラデザの仁井(学)さんは「田中さんは絶対ハマる」って言ってましたね。

竹中:田中さんはゆめちに合うだろうなと思っていましたが、実際にすごく合っていました。店長はオーディションの段階から皆さんドンピシャでした。

──連載の第1回・第2回は、近藤玲奈さん、佐藤利奈さんにお話を伺いました。近藤さんはオーディションの段階では「愛らしい雰囲気のなごみをあえて違う感じで表現しました」といったお話をされていたのですが。

竹中:僕、近藤さんのオーディションは明確に覚えていて。唯一無二感があったんですよね。なごみのあの抜けた感じ……僕らが計算して作ろうとしたなごみを外してきた感じが新鮮でした。僕から「近藤さんどうですか?」と提案した記憶があります。

増井:近藤さんは「もっと汚く」ってお願いしたらオーダーに応えてくれたことが印象的でした。皆さんかわいい声なので、どうしてもかわいくなってしまいます。そんな中で、気にしないで思いっきりやってくれて「そうそう、その声が欲しい」と。殴られるところとか(笑)。

竹中:限定的(笑)。

──佐藤さんもアキバのゲームセンターでバイトされていたことがあったそうで、メイド服を着られていたことがあったそうです。

竹中:そうだったんですか? 知らなかった(笑)。佐藤さんの嵐子も、オーディションから「これだ」という感じでした。

(C)「アキバ冥途戦争」製作委員会
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