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WOWOWオリジナルアニメ『火狩りの王』構成・脚本 押井守インタビュー【連載3回】

WOWOWオリジナルアニメ『火狩りの王』構成・脚本 押井守さんインタビュー|相当な難物だからこそ「誰にも任せず自分で書く」と選択した【連載3回】

心中できる「監督」「音響」を前提に構成・脚本を承諾

ーー西村さんが『火狩りの王』の監督になったのは、押井さんのオファーだったんですね。

押井:同期はほぼ死んじゃったか、リタイアしたからね。私の上にいる巨匠たちも3人くらいしか残っていない。だけど、若い子がつくれる作品かと考えたら、申し訳ないけど無理だなと。だから「西村くんが断ったらどうしようかな、おりちゃおうかな」と考えましたよ(笑)。書きっぱなしで、その後の責任は持てないもん。

アニメの仕事ってね、“誰と心中するか”なんですよ。

ーー心中、ですか?

押井:そう。それくらいの覚悟が必要だし、しかも1人ではできない仕事。最低3人の“当事者”が必要だと言われるんですよ。“当事者”というのは、商品ではなく作品として向き合う決意がある人。作品から絶対に逃げない人。作品と心中できる人ということですね。「そういう人間が3人いればアニメーションができる」と私の師匠(鳥海永行)が言っていたんですよ。

多くの場合、その3人は「監督」「脚本家」「アニメーター」と言われている。そこで『うる星やつら』からの付き合いで『ぶらどらぶ』で久しぶりに組んだ古株の西村くんを選んだ。あとは「アニメーター」と言いたいところだけど、今は作品に1人のアニメーターを立てることは不可能。なので今回は「音響」に当事者となる人間を置いてもらいました。それがワカ(若林和弘、音響監督)と川井(憲次、音楽)くんです。作品の半分は音響で決まる、いわば最後の砦です。それを2人が仕上げてくれればなんとかなるだろうと。監督に西村くん、音響にワカと川井くんという座組を前提に仕事を受けました。

ーー押井さんから見て、西村さんはどんな監督なのでしょうか?

押井:西村くんは温厚な人だから鬼みたいなことはしない(笑)。監督というのは現場の人間に最後まで作品に責任を持たせるために奮起させる役割があるんだけど、西村くんはそれができる人間だと思っている。

人によっては現場を潰してでもやるんですよ。良い作品は残るかもしれないけど、それと引きかえに現場が潰れることは何も珍しい話じゃない。そういう監督が昔はいっぱいいたんです。それが現場の経験値になることもあるし、そういう場所でしかステップアップしないこともある。今ちゃん(今敏)や宮さん(宮崎駿)も張本人の一人だけど(笑)。アニメの現場はスタッフがやる気を出すことはめったにないから、監督がやる気を出せば出すほど孤立するから難しいんだけどね。そういう意味でも西村くんは現場を踏ん張らせることのできる監督だと思っています(笑)。

準備でやるべきことをすべてやり、最小限の作業を課す

ーーでは、本作の構成・脚本を手掛ける上で、押井さんが意識されたことをお聞かせいただけますか?

押井:とにかく作戦を考えて、準備しましたよ。ハードカバー4冊分の原作を30分枠の脚本として翻訳するのは大仕事です。なんとなく書いていたら確実にオーバーする。考えながら書く仕事ではないと分かっていたから、頭の中で1回アニメとして物語を終わらせてから書かないといけない。どういうことかというと、あらかじめ書く部分と書かない部分を分けるんですよ。必要のない設定、書かない場面を考えていく。例えば、登場人物を選別したり、誰に退場してもらうかを考える。さらに、退場した人間の枷を代わりに誰に背負わせるかを考えるんですよ。

そうしないと絶対に悩む。悩んだ分だけ良くなると思いがちだけど、それは大間違い。悩むということは準備をしなかった証拠だから。脚本だけではなくコンテを含めてアニメーション制作は準備がすべてです。準備でやるべきことをすべてやる。そして、最小限の作業を自分と現場に課すんです。最小限にすることで頑張る余白を残すんですよ。その余白でいろんな発想を盛り込むことができる。最初から最大限だとそれ以下の出来にしかならない。いかに無駄のない最小限の作業で高いクオリティを目指すかを考えることが大切です。

ーー準備には相当な時間を要しそうですね。

押井:かなりの時間をかけたけど、今回は大変やりやすかったですよ。先生のお人柄がとても謙虚な方だったから。私は原作者とそこまで関わったことはないけど、めちゃくちゃな人がいっぱいいますからね(笑)。ケンカをしないで進められることはなかなかないですよ。私も昔は原作者と散々ケンカしてきましたから(笑)。

だけど今は原作者の気持ちがよく分かる。原作者はファーストランナーとしてスタートダッシュしてバトンを渡したあと、ゴールまでの走りを全部見ていなきゃいけないわけだよね。「こけたらどうしよう」「失敗したらどうしよう」「自分の走りが無駄になったらどうしよう」って考えている時間はつらいと思うよ。そういう思いをしみじみ考えるんですよ。ちゃんと走り終わってテープを切る姿を見たいだろうなって。生意気盛りの頃は欠片も思わなかったけどね(笑)。

ーーあはは(笑)。

押井:「監督のやりたいようにやるんだ!」「それの何は悪いんだ!」って。でもそれは勘違いですよ。だからといって「自分の原作や企画でやれば誰も文句は言われないだろう」と思ったら、これまたとんでもない勘違いでしたよ。苦労ばかり多くてロクなことがない(笑)。

そういう経験もしてきたから今回はいろいろ考えてしまって、途中で監督にバトンタッチしなきゃいけないのにアンカーまで走り切りたいと思ってしまったよ。西村くんには申し訳ないけど、そうならざるを得なかった。結局、私は脚本家として生きる覚悟があるわけじゃない。どこかでやっぱり監督なんですよ、監督の方がやりがいがあるし楽しい。「構成・脚本というのは微妙な仕事だな」としみじみ思ったね(笑)。

理想的で仕事のしやすい環境だった

ーー久しぶりにTVアニメの制作現場に戻られて、押井さんは何を感じましたか?

押井:つくづく世代交代ができない形式だなと思いましたね。一部を若返らせる、次世代にすることはあるけど、世代交代はできていない。アニメの制作現場は難しいですよ。基本的には人の作品(原作モノ)で仕事をするわけですけど、いつもすごく不思議な仕事だと思うんだよね。「責任を取る」と言いながら、どこで責任取るんだろうと。あるとすれば仕事が来なくなる責任しかない。

私自身はいくら「面白くない」と言われても「私は面白いと思う」「あんたが間違っている」と言って40年以上仕事をしてきたけど、多くの人はめげますよ。なかなか理想的な仕事もなかったしな……。それでもやってこられたのは半ばケンカしていたせいか、半ば「あいつはそういうやつだから」と私の人間性を認識してもらえるかどうかだったりする(笑)。だからすごく難しいけど、やっぱりやっていて楽しい仕事でもあるとは思うよ。

ーー現在(取材時点では)制作中ではありますが、本作の制作現場についてはいかがでしたか?

押井:今回はWOWOWさんをはじめとして、私の立場で言えば理想的で仕事がしやすかった。ラインプロデューサーの立場で言ったら「理想的じゃねぇよ!」って感じだと思うんですけど(笑)。

特に今回はキャスティングが素晴らしい。よくこれだけ達者な役者を集めたなって。このキャスティングは若林じゃないと無理。音響監督としてさすがだと思った。中でも私は(榊原)良子さんにナレーションをしてほしいと思ったんですよ。それも見事に叶えてくれて。

ーー榊原さんとは『うる星やつら』『機動警察パトレイバー』などでご一緒されていますよね。

押井:ええ。なので、アフレコにも立ち合いました。良子さんがいるのに私が行かないわけにいかないので。

川井くんもリッチな良い音楽を作ってくれたし。良い条件は揃っているんですよ。完成版を見ていないから確たることは言えないけど(笑)。筋の良い企画だし、役者も音楽も心配していない。私が一番不安なのは現場がどこまで踏ん張れるかだけど、今のところ何とかなっているはず。そういう意味でも、本作の座組は言うことないんじゃないかな?(笑)

[インタビュー/阿部裕華 写真/MoA]

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この記事をかいた人

阿部裕華
アニメ・音楽・映画・漫画・商業BLを愛するインタビューライター

WOWOWオリジナルアニメ『火狩りの王』作品情報

放送・配信日:2023年1月14日(土)午後10時30分より放送・配信スタート(第1話無料放送)

 

あらすじ

人類最終戦争後の世界。

大地は炎魔が闊歩する黒い森におおわれ、人々は結界に守られた土地で細々と暮らしていた。

最終戦争前に開発・使用された人体発火病原体によって、この時代の人間は、傍で天然の火が燃焼すると、内側から発火して燃え上がってしまう。

この世界で人が安全に使用できる唯一の<火>は、森に棲む炎魔から採れる。

火を狩ることを生業とする火狩りたちの間で、あるうわさがささやかれていた。

「最終戦争前に打ち上げられ、永らく虚空を彷徨っていた人工の星、<揺るる火>が、帰ってくるー」と。

“千年彗星<揺るる火>を狩った火狩りは、<火狩りの王>と呼ばれるだろう”

紙漉きの村に生まれ、禁じられた森に入って炎魔に襲われたところを、火狩りに助けられた灯子。

首都に生まれ、母を工場毒で失い、幼い妹を抱えた煌四は“燠火の家”に身を寄せることを決意する。

灯子と煌四、二人の生き様が交差するとき、あらたな運命が動きだすー

 

スタッフ

原作:日向理恵子(「火狩りの王」ほるぷ出版 刊)
キャラクター原案:山田章博
監督:西村純二
構成/脚本:押井守
キャラクターデザイン:齋藤卓也
総作画監督:齋藤卓也・黄瀬和哉・海谷敏久
エフェクト作画監督:小澤和則
イメージイラスト/プロップデザイン:岩畑剛一
美術設定:中島美佳
メカニックデザイン:神菊薫
クリーチャーデザイン:松原朋広
美術監督:小倉宏昌
色彩設計:渡辺陽子
筆文字:勝又まゆみ
劇中画:水野歌
CG監督:西牟田祐禎
CG制作:レイルズ
タイトルデザイン/2Dワークス:山崎真紀子
特殊効果:櫻井英朗
撮影監督:荒井栄児
編集:植松淳一
監督助手:菅野幸子
音楽:川井憲次
音楽制作:フライングドッグ
音響監督:若林和弘
音響制作:プロダクション I.G
アニメーション制作:シグナル・エムディ

 

キャスト

灯子:久野美咲
煌四:石毛翔弥
明楽:坂本真綾
炉六:細谷佳正
綺羅:早見沙織
緋名子:山口愛
クン:國立幸
照三:小林千晃
火穂:小市眞琴
油百七:三宅健太
火華:名塚佳織
焚三:宮野真守
灰十:三木眞一郎
紅緒:原優子
ほたる:宮本侑芽
炸六:真木駿一
炎千:上田燿司
火十:綿貫竜之介
ヤナギ:大原さやか
キリ:嶋村侑
ひばり:石田彰
ナレーション:榊原良子

 
公式サイト:http://hikarinoou-anime.com/
公式Twitter(@HikarinoOuAnime):@HikarinoOuAnime

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