
TVアニメ『NieR:Automata Ver1.1a』パスカル役・悠木碧さんインタビュー|「誰を推しても心が死ぬので、それも含めて楽しんでほしい」
「話しかけられて一番安心する声を」
ーーパスカルを演じられるのは久しぶりだったかと思いますが、TVアニメで演じられてみていかがでしたか?
悠木:パスカルを演じるのは本当に久しぶりだと思いつつ、すごくインパクトの強いキャラクターだったので、久しぶりに演じてもパスカルの引き出しを見つけるのは難しくなかったですね。「少女の声でおじいさんを演じてください」と言われることは、後にも先にもないと思うので。自分の中にある数々の引き出しから「ここに絶対しまったな」と覚えていたキャラクターでした。
ーー「少女の声で、おじいさんを演じてください」というディレクションを最初に受けた時、どう思ったのかをおうかがいしたいです。
悠木:最初にパスカルのキャラクターデザインを渡されて「悠木さんの演じるキャラクターはこれです」と言われた時は、完全に資料を間違えられていると思いました(笑)。
でも、当たり前ですが蓋を開けてみると間違ってはいなくて。パスカルは体躯が大きい機械生命体だけど、周りの機械生命体やアンドロイドたちを怖がらせたくないと。機械だから声帯を自分で調整できるので、話しかけられて一番安心する声を選んだんですと、収録の際に説明をいただいたんです。それがパスカルの声に私が選ばれた理由でした。説明と共に「声帯は少女だけど、精神は穏やかなおじいちゃんとして演じてください」と言われた時、パスカルを一気に理解できて親しみが湧きました。
ーー今のお話でパスカルのキャラクター性をすごく理解できました。
悠木:体が大きいし、パーツも武器でできている。だから、安心してコミュニケーションを取ってもらうための工夫が詰め込まれているんです。機械生命体という存在の悲しみをはらんだキャラクターなんだと理解しました。
ーー事前に理解していたということは、演じる上で悩まれることはそこまでなかったのでしょうか?
悠木:悩まなかったですね。「どういう声が相手を安心させられるのか」を考えて、会話の相手を落ち着かせるようなニュアンスを入れたり、子守歌のようにしゃべってみたりできたらいいなと考えながらゲームの収録に臨みました。
とはいえ、私が「安心する」と思う声とみなさんの「安心する」と思う声が同じかは分からないので、それはスタッフのみなさんの意見を聞きつつ収録していきました。幸いスタッフのみなさんからも大きなご指摘を受けることはありませんでした。
ーーTVアニメでパスカルを演じる上で、ゲームと違う部分はありましたか?
悠木:アニメだと物語が進んでいくテンポが決まっているのと、ちょっとコミカルなテイストのセリフが入ってくることもあるので、ゲームよりは全部が穏やかなパスカルというわけではないかもしれません。でもアニメでも親しみが湧くように演じることは意識しています。それが見ている人たちに「機械生命体だけど害はないかも」と思ってもらえる第一歩だと思ったので。
あと、ゲームは基本的に一人での収録になるので、掛け合いでお芝居ができるのは楽しいなって思います。口数が少ない2B(演:石川由依)ちゃんだけど、9S(演:花江夏樹)が一生懸命話しているのを待っているだけで、言葉を発さずともお芝居になるんですよね。ゲームではその空気をなかなか感じられないので、アニメの収録で感じられてめちゃくちゃ楽しかったです。