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『しん次元!クレヨンしんちゃんTHE MOVIE』3DCGスタッフインタビュー

『しん次元!クレヨンしんちゃんTHE MOVIE』スタッフインタビュー|3Dのしんちゃんはどのように生まれたのか?「目指すは、しんちゃんをしんちゃんらしく3Dで表現すること」

シリーズ初の3DCGアニメーション作品『しん次元!クレヨンしんちゃんTHE MOVIE 超能力大決戦〜とべとべ手巻き寿司〜』が現在公開中だ。2023年8月4日(金)の公開から週末3日間で動員32万2000人、興行収入4億0100万円を記録している。

約30年『クレヨンしんちゃん』シリーズを手掛けてきたアニメーション制作会社のシンエイ動画と、『シン・ゴジラ』など数多くの作品を手掛けてきたCGのプロフェッショナル集団・白組がタッグを組み制作した本作。公開を記念し、アニメイトタイムズではスタッフインタビューを実施した。

本作で企画制作プロデューサーを担当したシンエイ動画の吉田有希さんと、ラインプロデューサーとして制作現場のマネジメントを務めた白組の畑中亮さんに、3DCGの制作の様子や苦労、こだわりなどを聞いた。

3DCGでアニメ化するのは無理。だからこそ挑戦した

ーーまずはじめに、『クレヨンしんちゃん』を3DCGアニメ化するに至った経緯から教えてください。

吉田有希(以下、吉田):『STAND BY ME ドラえもん』で『ドラえもん』が3Dになった後、「『しんちゃん』も3Dで見てみたいです。やらないんですか?」というお声を色々なところからいただくようになりました。同時に、白組さんとは『STAND BY ME』から会社同士のお付き合いがある中で、白組の現代表取締役会長である島村(達雄)さんが「『しんちゃん』は2Dの魅力がいっぱいの作品だから、3Dアニメ化するのは無理だ。だからやるんだ。それができたら3D業界はすごいことになる」とおっしゃっていたんです(笑)。その流れもあって、本作の制作が決まりました。

畑中亮(以下、畑中):僕自身、初期の開発開始当時は直接関わっていないのですが、現場では「すごい難題が来た……」と思っていたと思います(笑)。吉田さんがおっしゃるように、島村はそういうチャレンジが好きな人なんですよ。「絶対に白組がやるんだ」と開発を始めたのですが、そういう人がいてくれたからこそ、現場も頑張れたのではないかなと感じています。

ーーまた、本作は「超能力もの」がテーマですが、それは3DCG映えするのが理由でしょうか?

吉田:監督の大根(仁)さんが「自分は何かテーマをもらった方がやりやすい」とおっしゃられたのもあって、私の方で“3Dで表現したら面白い話”と“大根さんにお願いしたら面白い話”の両軸で原作のストーリーをいくつかピックアップしました。その中の一つが「超能力もの」。3D映えするだろうし、お祭り感のある映像になるのではないかと思いました。監督的にも「これがいい」となった感じですね。

数年かけて完成した「2.85D」

ーー2Dのイメージが強い『クレヨンしんちゃん』を3Dアニメ化するにあたって、一番のハードルは何でしたか?

畑中:一番のハードルは、“キャラクターを成立させる”こと。「これはしんちゃんじゃない」と言われないよう、しんちゃんをしんちゃんらしく3Dで表現することを目標としていました。

なので、しんちゃんらしい造形を成立させるために、3Dでつくっている部分と嘘をついている部分があります。例えば、しんちゃんの顔を3D上でつくると、当然ですが立体的になるので、光の影響で影が出てきてしまい、ほっぺたの部分がぽこっと浮き出ているように見えるんですよ。だけど、しんちゃんの場合は浮き出ていることを分からせる必要がないので影をぼかす処理をしています。また、キャラクターの輪郭線があるところにセルアニメっぽさを残しています。しんちゃんに限らず、いろんなキャラクターが登場しますし、それぞれのキャラクター造形が特殊ゆえに3Dで表現するのには苦労しました。

▲3Dで作ったしんちゃんのほっぺたの構造

▲3Dで作ったしんちゃんのほっぺたの構造

▲ほっぺたに影ができた状態

▲ほっぺたに影ができた状態

▲ほっぺたの影にぼかしをかけた状態

▲ほっぺたの影にぼかしをかけた状態

ーー『STAND BY ME ドラえもん』はどちらかというと立体感の強いCGでしたが、『しん次元』で2D感を残したのには、どのような意図があったのでしょう。

畑中:一番はしんちゃんというキャラクターをキャラクターらしく見てもらうためですね。とはいえ、体や世界観などキャラクター造形以外に関しては、3Dらしさをちゃんと表現しています。なので、我々としてはフル3DCGアニメーションをつくっている感覚があります。

ーー満足のいくキャラクター造形に至るまで、どれくらいの時間を要しましたか?

吉田:2年はかかっていますね。2023年3月に解禁した予告映像で、初期テストフィルムも使用しているのですが、あの造形に至るまでが大変でした。それこそ『STAND BY ME』的なアプローチをしたもの、着せ替え人形のようにフワッとした髪の毛にしたものなど、白組さんにはたくさん時間をかけてつくっていただきました。

そんな中で、一旦原作に立ち返ろうと「原作を3D化したらどうか」という話になり、思い切って線の雰囲気も原作に寄せたアプローチをしていただいたんです。そこから色をつけたり、3Dとしての利点を活かしたりしてキャラクターが出来上がっていきました。自分たちの間では「2.85D」と言っているのですが、その落としどころを見つけるまでは大変でしたね。

▲初期モデル

▲初期モデル

▲中期モデル

▲中期モデル

畑中:“3Dでやる意義”を考え、絵に落とし込み、最終的にあの形になりました。白黒の初期パイロットフィルムが完成して「これなら大丈夫だ」という形にはなったものの、それを踏襲して90分流しても問題ない絵にするところにも苦労しました。白黒の映像を90分間流すわけにはいかないですよね。カラーにしても原作にある“ゆるさ”を表現しなければいけません。開発期間も長かったので、現場としてはかなり根気のいる作業でした。

▲後期モデル

▲後期モデル

▲完成モデル

▲完成モデル

吉田:制作を進めていく中、普段自分たちがつくっている2Dアニメーションがいかに嘘をついて誤魔化しているかに気が付きました。2Dだとしんちゃんの身長って50センチくらいしかないなとか(笑)。

畑中:あはは(笑)。3Dと比較するとそうなりますよね。

吉田:3Dは空間の中にキャラを置いてつくっているので誤魔化しがきかないのですが、2Dは絵として成立していればいいので、根本的なつくり方の理屈が違うことに気づきました。

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