『ゾン100～ゾンビになるまでにしたい100のこと～』梅田修一朗さん×楠木ともりさん×古川慎さん×髙橋ミナミさん 声優インタビュー｜シズカが啖呵を切るシーンは、これから社会人になる人に1回は見て欲しい

他者への思いがあったから啖呵を切れたし、自分自身も救うことができた

――ブラック企業時代の上司・小杉権蔵との再会から決別までが描かれた6・7話は、本作の転機のひとつとなる物語だったと感じました。

梅田：シズカさんが自分で気持ちを伝える話であり、アキラは逆に仲間に気づかされる話だったと思います。アキラはこれまで「これをやりたい、こうしていきたい」って行動してきたけれど、改めて自分の意思でどう『したい』かを小杉リーダーに伝えることで、彼自身がまたひとつ成長できた気がします。

――小杉へ気持ちを伝えるときのテンションや雰囲気は、今までのポジティブな感じとは異なりました。

梅田：ですね。アフレコ時も、「やりてー！」っていう心の底から溢れるセリフ・感情の動き方とは異なり、ちゃんと考えて「俺はこうしたいんです」と伝えるように演じました。

楠木：シズカは「リスクヘッジお姉さん」というあだ名が付けられていて、本質がつかめない人でした。そういう性格になった理由は、父親の「私に従う『べき』」という言葉に縛られていたからということが、6・7話で明らかになるんです。その過去からの縛りを、小杉に啖呵を切りながら自らがやり『たい』ことを言葉に出すことで、打ち破りました。

――シズカは啖呵を切る前、「働き続ける『べき』」「リーダーの恩義に応える『べき』」など、『べき』という言葉を何度も使うアキラに「あなたのおかげでようやく目が覚めた」と言っていました。

楠木：アキラのためじゃなかったら、あそこまでは言えなかったんじゃないかと私は勝手に思っていて。彼女は「世の中はこういうものだから」と決めつけちゃうところがあるので、自分ひとりだと父親からの呪縛を打ち破れなかったと思います。アキラに何かを伝えたいという、他者への思いがあったから啖呵を切れたし、自分自身も救うことができたんじゃないかな。シズカにとって、とても大事なシーンだったと思います。

――そのシーンのアフレコはいかがでしたか？

楠木：呪縛を打ち破るまでのシズカを演じるときはミステリアスで落ち着いた雰囲気で、という意識をしていました。声量もあまり出さず、ほぼ独り言なんじゃないかぐらいのセリフも多かったと思います。ただ、小杉に向かって啖呵を切るシーンはもうキャラが変わるくらいお腹に力を込めました。特に「全身全霊」という言葉は、監督から「1単語、1単語ハッキリ切ってください」というディレクションがあり、「全・身・全・霊！」と言い切ったんです。長めのセリフの場合、徐々に声量を大きくしたり、キーとなるワードに合わせて抑揚をつけてメリハリを出したりすることが私は多いのですが、ここのセリフに関してはほぼ差を付けませんでした。ずっと100％・120％で小杉に言葉をぶつけたんです。プレッシャーがありましたが、言い終えた後の達成感と爽快感はものすごいものでした。

――その爽快感はもしかしたら、シズカも感じていたかもしれません。

楠木：感じていたと思いますね。彼女、いい顔していたので。

梅田：小杉リーダーについては、演じる三宅健太さんの芝居がすごかったです。アドリブも含めた罵倒は本気で怖くて、圧を感じました。

楠木：怖かったですね。でも私が芝居で負けちゃうと、あのシーンの説得力がなくなってしまうので、負けてられないという気持ちでアフレコに臨みました。

――古川さんは6、7話に関して、どのような印象をお持ちですか？

古川：ケンチョはケガをしていて、ほとんど役立たずだったんですよね（笑）。だから、ケンチョとして言えることはそんなにないのですが、やっぱり「どう『したい』」とか「どうする『べき』」っていう言葉は色々と考えさせられました。こういう言葉って、みんなぶつかったことがある感情な気がしていて。大人だから、いい歳なんだから、立場があるんだから、こうする『べき』ってものに囚われてしまうというか。それらから逸脱するには何らかのリスクは伴うと思います。簡単に選択できることではありません。それでも、「どう『したい』か」を考えて行動すれば、その後に見える景色は変わってくるんだろうなと、アフレコを通じて感じました。シズカが啖呵を切るシーンは、これから社会人になる人に1回は見て欲しい、聞いて欲しいですね。