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『ウルトラマンブレーザー』メイン監督・田口清隆さんインタビュー

『ウルトラマンブレーザー』メイン監督・田口清隆さんインタビュー | ガヴァドンに託したシリーズへの愛――スター怪獣の"ゲスト感"を取り戻す手法とは?

毎週土曜あさ9時からテレビ東京系列にて放送中のシリーズ最新作『ウルトラマンブレーザー』。

防衛チームの隊長がウルトラマンに変身するという斬新な設定や作り込まれた世界観、大人も楽しめるストーリーが話題を呼んでいます。

今回は、そんな本作でメイン監督・シリーズ構成を務める田口清隆さんにインタビューを実施! 溢れ出る怪獣愛からメインキャストとのエピソード、ガヴァドンが登場した第15話への想いまで、様々な角度からお話を伺いました。

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ウルトラマンブレーザー
世界的な怪獣災害の発生を受けて、世界各国は、地球の内外から攻めてくる怪獣や地球外生命体に対処するべく、1966年に地球防衛隊「GGF(GlobalGuardianForce)」を設立していた。自然破壊や温暖化が急激に進む現在。ある夜、宇宙甲殻怪獣バザンガが出現。地球防衛隊の掃討作戦は難航し、ヒルマゲントが率いる特殊部隊が絶体絶命の危機に陥る。その時、眩い光とともに謎の巨人が降臨。何十年も前から宇宙飛行士たちの間で噂されていた未確認大型宇宙人、コードネーム「ウルトラマン」だ。その後、司令部に呼び出されたゲントは突如、ある任務を言い渡される。それは、密かに組織されていた、特殊怪獣対応分遣隊「SKaRD(SpecialKaijuReactionDetachment)」の隊長就任。怪獣型の主力巨大メカ「アースガロン」を駆り怪獣災害に立ち向かう特殊部隊の指揮。それと同時に、バザンガの戦いで出現した「ウルトラマン」が排除すべき敵なのかを調べる任も命ぜられたゲントの脳裏に、遥か遠くの銀河…ブレーザーの眩い光の記憶が煌めく。「俺が行く。」ウルトラマンブレーザーの光に包まれたゲント隊長は今、組織されたばかりの「SKaRD」に配属された個性豊かな隊員たちとともに、確かな勇気と揺るがぬ正義を胸と...

「ガヴァドンだけはどうしても自分でやりたかった」

――アニメイトタイムズです。第1話「ファースト・ウェイブ」の舞台となった池袋には、アニメイト池袋本店があるのですが「バザンガに破壊されたのでは!?」と社内でも話題に上がっていました。

田口清隆さん(以下、田口):それは嬉しいですね。新宿、渋谷はよく映像作品に登場し破壊されるのですが、池袋はあまり狙われていませんでした。サンシャイン60なんて最高のターゲットじゃないですか。ウルトラマンシリーズの聖地でもありますし、ずっと狙っていたんです。

――「ウルサマ(ウルトラヒーローズEXPO サマーフェスティバル)」の会場に続く道をゲントたちが通っていましたね。

田口:よく考えるとあの辺りに着地する理由は全くないのですが(笑)。僕も毎年「ウルサマ」に行くときは通る道です。見慣れたトンネルが映るだけでも喜んでもらえるという確信がありました。

――放送開始から数ヶ月経ちますが、反響は届いていますか。

田口:聞こえてくる反響としては、概ね好感触です。これまでと違う流れを作ろうとしたので、放送前は少しだけ不安もありました。結果的には提示したものをそのまま楽しんでもらえているようで、安心しています。

――“新しいウルトラマン”を作るうえでは、様々な挑戦があったのではないでしょうか。

田口:今回の一番大きな挑戦は、隊長を主役にしたことです。ウルトラマンと人類、部下と上司、家庭と仕事など、隊長をウルトラマンにすると色々な板挟みが起こると気づいて、本作のシナリオを作り始めました。

――ゲント隊長の設定からスタートしたと。

田口:長く続いているシリーズなので、毎回アイディア勝負だと思っています。ただ僕自身が「違う流れを作る」と言いつつも、ウルトラマンに関しては王道が好きなんですよ。なので自分がメイン監督を務めるときには、王道に戻すことを意識します。その中で味つけとして、新しい要素も入れていくという感覚です。

――新しい要素と言えば、必殺技・スパイラルバレードの演出も楽しみのひとつです。

田口:『ウルトラマンX』でメイン監督を務めたとき、ザナディウム光線という光線技を打つシーンで凝った演出をやったら、各話監督の皆さんも色々な演出で変化をつけ始めたんです。当時は「ザナディウム大喜利」なんて言われていました。今回もそんな趣向を作りたいと思ったのですが、光線技だとどうしてもアングルの見せ方だけになってしまいます。もっと自由自在な必殺技で演出の幅を拡げたいと考え、スパイラルバレードの設定を作りました。各監督がどういう演出にするかはお任せしているので、僕も毎週楽しみにしています。

――レインボー光輪やチルソナイトソードなど、タイプチェンジとは異なる強化演出も話題を呼んでいます。

田口:タイプチェンジ廃止の提案を受け入れてもらった代わりに、倒した怪獣を武器にしていくというアイディアを出したんです。例えば「ゴモラを倒した翌週にゴモラの角で作った槍を持っている」とか。だけどそれは駄目だと言われまして。それで結果的に考案したのが、ニジカガチの力を使ったレインボー光輪や宇宙金属・チルソナイトを使ったチルソナイトソードです。ガラモンを形作っているチルソナイトを使った剣なら、オールドファンから新規ファンまで引っかかるものがあるはず。ガラモンを登場させるアイディアは越知靖監督からですが、ちょうど剣を出す前のタイミングだったので「じゃあガラモン剣にしよう!」という話になったんです。

――先日放送された第15話についても伺います。ガヴァドンの登場は田口監督の念願だったとか。

田口:造形部さんが年に何体か、主にアトラクション用に怪獣をリメイクしていて、それをTVシリーズに使用することで、過去のスター怪獣を何体か出してきました。僕は造ってほしい怪獣を聞かれるたびに、ブルトンとガヴァドン(A)を希望していたんです。ただこの二体はかわいい系ですし、難しいと言われていて。ただ、めげずに「絶対ウケるから!」と言い続けたら、ブルトンは通ったんですよ。今回に関しては、造形部さんから「ガヴァドン(A)を造っているよ」とこっそり教えてもらいました。思わず「絶対に自分が撮りたいから、他の人には内緒で!」とお願いしましたね。初代『ウルトラマン』の第15話「恐怖の宇宙線」は、何回観たかわからないくらい大好きな回なんです。メイン監督をやっていると枝葉の回は中々担当できないものですが、ガヴァドン(A)だけはどうしても自分でやりたかった。世の中にたくさんいるガヴァドン好きには、厳しい目を持った方が多いと思うので(笑)。

――(笑)。田口監督もそのひとりではないでしょうか。

田口:そうですね。自分を含めたガヴァドンを愛するファンの気持ちだけは外したくないです。僕の担当回はほぼ小柳啓伍さんに書いてもらったのですが、第15話だけは中野貴雄さんに担当いただいています。『ウルトラマンギンガS』から毎年一緒にやってきた大先輩です。元々僕の中で考えたプロットもあったのですが、中野さんには新しい話を書いてもらいました。僕が最初に作ったのはすごく暗い話で「なんで念願のガヴァドンでこの話をやろうしたんだろう?」と今は思っています。

魅力的な怪獣の条件とは?

――本作では新たな怪獣も多く登場していますが、過去作の怪獣はどのように選ばれているのですか。

田口:造形部さんがまとめている怪獣のリストがあるんです。使用可否などが書いてあって、毎年そこから各監督が担当回で使いたい怪獣を選んでいます。近年は同じ怪獣がたびたび登場するようになっていました。例えば『ウルトラマンメビウス』の頃は、基本的に新しい怪獣が登場して、スター怪獣が時々出るからゲスト感があったと思うんです。ところが最近は、スター怪獣のはずなのに「またこいつか」と言われてしまう。そういった現状が個人的には悲しかったし、新しい怪獣が見たいファンは多いと思っていました。加えて、『ウルトラマンブレーザー』と『ウルトラマンデッカー』は同時進行で進んでいたので、怪獣の一覧表が一緒になってしまったんです。

――そうだったのですか。

田口:保存状態が良い怪獣は使われていくから、こっちで選べる違う怪獣がほとんどない状況でした。ますます新しい怪獣を造らなきゃ駄目だぞと。他の監督たちも知恵を絞って、自分の担当回で新規怪獣を出すべく頑張っています。例えば、越監督からは「ピグモンをガラモンとして使う」、「デマーガを子供の姿に改造して、ベビーデマーガにする」というアイデアをいただきました。辻本貴則監督(辻の一点しんにょう)は、既存の怪獣を出さずに、アースガロンが暴れてブレーザーと戦う回(第6話「侵略のオーロラ」)を作ってくださいました。そこまでやれば、スター怪獣が出たときのゲスト感が戻ってくるんです。

――逆に新規の怪獣はどのような流れで造られるのでしょうか。

田口:基本的には各回の監督にお任せですね。脚本と怪獣のデザイナーについては「お目当ての方がいれば連れてきて下さい」と伝えていました。怪獣には色々な姿がある方が良いと思うので、色々な人が色々な発想で描いてほしい。僕の担当回でも楠健吾さんに加えて、キセンさんという新しいデザイナーさんにも入ってもらいました。話に沿ったデザインにしたいという提言は各監督からも受けていましたし、それぞれが思い思いの怪獣を造っていたと思います。

――放送前のプレミア発表会で、怪獣が並び立っている姿は壮観でしたね。

田口:あれだけの数の怪獣が並ぶことは本編でもないので、良いアイデアでした。舞台に立っていたので、お披露目の瞬間は見れませんでしたが、振り返りたくてしょうがなかった(笑)。ガヴァドンとガラモンが隅にいたり、カナン星人がやたら堂々としていたり、間違い探しみたいで楽しかったですね。

――田口監督の中で、魅力的な怪獣の条件があれば教えてください。

田口:怪獣は生き物であるということです。本当にいたらこうなるという要素は思いつく限り入れるようにしています。生態はもちろん、進化の過程や人前に出てきた理由、細かな動きに実在感が宿っているか。僕は昔から動物園や水族館が好きなのですが、例えばハシビロコウがひとたび動くと、突然羽根を広げて身体を大きく見せたり、くちばしを鳴らしたりしますよね。生物を見る楽しさを怪獣に乗せたいと常々思っています。

――怪獣ではないですが、ウルトラマンブレーザーにも端々に生き物の要素を感じます。

田口:実はブレーザーのデザインはスーツにシワが寄っても、生物としてのデザインに見えるように計算されているんです。

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