マンガ・ラノベ
『葬送のフリーレン』フェルンとシュタルクの関係を考察してみた

彼らもまた「人を知る旅」をしている──『葬送のフリーレン』フェルンとシュタルクの関係について考察してみた

魔王を打ち倒した勇者パーティーの魔法使いフリーレンの「人の心を知るための旅」が描かれた人気作品『葬送のフリーレン』。昨年秋から放送が始まり、現在第2クールが放送中です。

フリーレンは弟子である少女フェルンと、かつての仲間であるアイゼンの弟子・シュタルクとともに旅をしているのですが、この2人の関係に注目しているファンもかなり多いよう。

そこで、本稿ではフェルンとシュタルクの関係について原作を読み返して考察してみました。2人の関係に注目して読み返してみると、関係性が少しずつ変化していっていることに気が付きました。

※本記事には、ネタバレや個人の見解が含まれます。

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葬送のフリーレン
勇者ヒンメルたちと共に、10年に及ぶ冒険の末に魔王を打ち倒し、世界に平和をもたらした魔法使いフリーレン。千年以上生きるエルフである彼女は、ヒンメルたちと再会の約束をし、独り旅に出る。それから50年後、フリーレンはヒンメルのもとを訪ねるが、50年前と変わらぬ彼女に対し、ヒンメルは老い、人生は残りわずかだった。その後、死を迎えたヒンメルを目の当たりにし、これまで“人を知る”ことをしてこなかった自分を痛感し、それを悔いるフリーレンは、“人を知るため”の旅に出る。その旅路には、さまざまな人との出会い、さまざまな出来事が待っていた―。作品名葬送のフリーレン放送形態TVアニメスケジュール2023年10月6日(金)~2024年3月22日(金)日本テレビ系ほか話数全28話キャストフリーレン:種﨑敦美フェルン:市ノ瀬加那シュタルク:小林千晃カンネ:和氣あず未ラヴィーネ:鈴代紗弓ヴィアベル:谷山紀章ユーベル:長谷川育美デンケン:斉藤次郎ラント:小松昌平リヒター:花輪英司ラオフェン:石上静香エーレ:伊藤かな恵ゼンゼ:照井春佳ゲナウ:新垣樽助ゼーリエ:伊瀬茉莉也ヒンメル:岡本信彦ハイター:東地宏樹アイゼン:上田燿司スタッフ原作:山田鐘人・アベツカサ(小学館「...

似た環境で育ったフェルンとシュタルク

戦災孤児だったフェルンは勇者パーティーの僧侶ハイターに拾われて育てられ、その後フリーレンに魔法の指南を受け弟子となります。一方、シュタルクは魔族に故郷の村を襲われ、1人だけ逃がされたところを同じく勇者パーティーの戦士アイゼンに拾われ、弟子として育てられました。

2人とも同じような境遇であり、詳しい描写はあまり出てきませんが、ハイターの家は森の奥にあるようですし、アイゼンの家も集落から外れたところにぽつんと建っているようなので、フェルンもシュタルクも同年代の子どもと関わる機会が非常に少なかったことが考えられます。

そんな2人はおそらくお互いが初めてまともに関わる同年代の異性。出会ったばかりの頃、フェルンがシュタルクにぶっきらぼうだったのは、同年代の男性に対する接し方がわからなかっただけ。年齢よりも大人びて見えるフェルンもまだまだ子どもなのです。
 

2人とも超ピュア!

大人のお姉さんと旅をしたがる僧侶ザインに対し、フリーレンが「私が大人のお姉さんだ」と主張し、色仕掛けのつもりで投げキッスをするシーン(原作第28話)。色仕掛けが全く通じていないザインとは対照的に、フェルンとシュタルクは「エッチすぎる…」「直撃を食らっていたら危ないところでした」と信じられないほどピュアな反応を示します。

 
ツッコミ不在のギャグシーンとして描かれている場面ですが、2人がこんなにピュアなのは育った環境に理由があると私は考えました。ハイターにしてもアイゼンにしても、2人とは祖父以上に年齢が離れており、おそらく恋愛や男女のあれこれに関して興味は皆無だと考えられます。そのため2人は、恋愛に関する話や書物に触れることがなかったのではないでしょうか。

また、触れる機会があったとしてもハイターやアイゼンが持つそれらに関する常識は、彼らが若かりし頃、つまり約80年前のもの。現代の常識と異なっていてもおかしくはないのです。(自分たちの世代と祖父母世代の恋愛観に大きな違いがあるように……)
 

共に過ごす中で少しずつ打ち解けていく

最初は(接し方がわからないゆえに)フェルンはシュタルクに冷たい態度を取っており、臆病なシュタルクはそんなフェルンを怖がっていました。しかし、共に旅をする中で少しずつ打ち解けていきます。

2人が打ち解ける最初のきっかけとなったのは、第12話(コミックス第2巻)で描かれている城塞都市ヴァールでのこと。関所の通行が認められていないため、フリーレン一行はしばらく足止めを食らうことになります。

「久々にゆっくり魔法の研究ができる」と長期滞在をむしろ喜ぶフリーレンに対し、これまでの経験から年単位の滞在を懸念するフェルン。その心配をシュタルクに打ち明けたところ、シュタルクも長期滞在を嫌がったため自分と同じ時間間隔を持っていることが判明し、仲間意識が芽生えます。

その後、2人で関所を通過する方法を探して回る中で、フェルンは「師匠が生きているうちに旅の土産話を持ち帰って恩返しがしたい」というシュタルクの想いを知ることに。

かつてフェルン自身も、育ての親であるハイターが生きているうちに一人前の魔法使いになって恩返しがしたいという一心で必死に研鑚を積んだ過去があり、シュタルクの気持ちは誰よりも理解できるでしょう。その想いを聞いたフェルンは、それまでシュタルクに見せたことのない穏やかな笑みを浮かべています。

その後、無事関所を通過できた一行でしたが、ここで足止めされなければ2人が打ち解けるのにはもう少し時間がかかったかもしれません。

 

初めての感情に静かに戸惑うフェルン

最初こそシュタルクへの接し方のわからなかったフェルンでしたが、シュタルクを知っていくうちに、これまで抱いたことのなかった感情を抱くようになっていっている様子。

物静かな彼女が騒ぎ立てることはありませんが、初めての感情に戸惑う姿が描かれているエピソードをピックアップしてみました。
 

誕生日プレゼントのブレスレット

自分の誕生日にシュタルクがプレゼントを用意してくれていなかったことでフェルンが怒り、ケンカに発展してしまいます(原作第29話)。フリーレンやザインが怒り過ぎを指摘していますが、フェルンはシュタルクの誕生日にプレゼントをあげていたこともあり、用意してくれていなかったことがショックだったのだと思います。

仲直り後、いっしょにプレゼントを選びに行った2人。シュタルクが贈ったブレスレットは「久遠の愛情」の花言葉をもつ鏡蓮華の意匠がついたものでした。その意味を知らずに選んでいたシュタルクに「馬鹿ですもんね」といつもに増して辛辣な言葉を放つフェルン……素敵な花言葉で嬉しかったのではないでしょうか。ゆえに、知らなかったことにガッカリしてしまったのでしょう。

 
しかし、その後もずっと肌身離さず付けているだけでなく、嬉しそうに手入れをする描写も。戦争で故郷や大切なものを失った経験のあるフェルンにとって、シュタルクにもらったプレゼントはとても大切な宝物なのです。

 

オルデン家での出来事

貴族オルデン卿から戦死した息子と瓜二つなシュタルクに、三ヶ月後の社交会で息子のふりをしてほしいという依頼を受けたフリーレン一行(原作32話)。シュタルクは三ヶ月間みっちり社交会での作法を叩き込まれる地獄の日々を送ることに。

フェルンの手を取って跪き、練習中の作法を実践してみるものの、フェルンからは「…似合ってない」と変わらず辛辣な言葉を掛けられてしまいます。しょんぼりと肩を落として去っていくシュタルクでしたが、掛けた言葉とは裏腹に彼に取られた手を見つめるフェルン。今まで感じたことのない感情に気づいたものの、その正体まではわかっていない様子です。

また、こちらのシーンは原作第30話でヒンメルがひそかに恋心を抱くフリーレンに跪いて指輪を贈るシーンと同じ構図。まるで王子様のような所作が様になっているヒンメルとその気持ちに気づいていないフリーレンに対し、同じ振舞いのはずなのにいまひとつ似合っていないシュタルクと僅かな心の変化に気付き始めたフェルン。

両者を対比させたような描かれ方も、フェルンとシュタルクの関係性を示唆しているように感じられます。

その後、フェルンもシュタルクのダンス相手として一ヶ月にわたり作法を仕込まれ、社交会では二人でダンスをするシーンも。漫画ではダンスの詳細が描かれていませんが、アニメのダンスシーンは、始めの硬い表情から少しずつ緊張がほぐれにこやかになっていくフェルンがとても印象的でした。

 
ダンスに誘うシュタルクに「本当に似合っていませんね」と言いながらも、彼の三ヶ月の努力を感じたことと普段から信頼を置いているからこその微笑みだったのではないかと私は推測しています。

 

ヴィアベルの勧誘

一級魔法使いの試験でフリーレン一行はいろんな魔法使いと出会い、人に好かれやすいシュタルクは北部魔法隊隊長のヴィアベルに気に入られ、パーティーへ勧誘されます。(原作62話)

「こいつ口説いてもいいか。」とヴィアベルに聞かれ「勝手にすればいい」と返すフリーレンに対し、不安そうな様子で何か言いたげなフェルン。シュタルクにパーティーを抜けてほしくないのです。

その後、ヴィアベルの話を断ったことに加え、シュタルクはフリーレンとフェルンの二人と一緒に旅がしたいと思ってパーティーに加わったことをフェルンに明かします。「俺はどこにも行かないよ」というシュタルクの言葉を聞いても表情を変えないフェルンですが、内心はものすごくホッとしたのではないでしょうか。(おそらく読者も)
 

<次ページ:シュタルクはまだまだお子様……>
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