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『おジャ魔女どれみ』ができるまで | 関弘美プロデューサーインタビュー【前編】

当初は『おジャ魔女どれみ』ではなく『おジャ魔女おんぷ』というタイトルで進んでいたんです ―― 『おジャ魔女どれみ』ができるまで | 東映アニメーション 関弘美プロデューサーインタビュー【前編】

今年で放送開始25周年をむかえるアニメ『おジャ魔女どれみ』。

2024年3月23日、24日に開催されたアニメの祭典「AnimeJapan 2024」では、新作映像のお披露目や、8月からの「おジャ魔女どれみ25周年メモリアル展」が発表されるなど、今も変わらぬ人気を誇っています。

そんな『おジャ魔女どれみ』にも、第1話ができるまでには様々な試行錯誤や裏話があるはず。そこで、この25周年というタイミングで、東映アニメーションの関弘美プロデューサーにお話を伺う機会をいただきました。

名付けて「おジャ魔女どれみができるまで」!

前編となる本稿では『おジャ魔女どれみ』という作品の企画の立ち上がりから、あのキャラクターの誕生に関わる意外な芸能人、頭身の秘密やクラスメイトの設定など、正に「おジャ魔女どれみができるまで」についてのお話を伺いました。

後編はこちら

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おジャ魔女どれみ
魔法に憧れる自称「世界一不幸な美少女」春風どれみは、ふと訪れたMAHO堂という変わったお店で、女主人マジョリカの正体を魔女と見破ってしまう。するとなんと、マジョリカは奇妙な魔女ガエルの姿になってしまった!どれみに責任を取ってお前も魔女になれとせまるマジョリカ。魔女ガエルになった魔法使いは、正体を見破った者の魔法でしか元の姿に戻れないのだ。…ひょんなことから魔女見習いになった3人の少女、どれみ、はづき、あいこ。どれみの妹のぽっぷ、人気アイドルのおんぷも魔女見習い仲間に加わって、学校と「MAHO堂」を舞台に、一人前の魔女になるためのマジカルでミラクルな修行の毎日が続く…。作品名おジャ魔女どれみ放送形態TVアニメスケジュール1999年2月7日(日)~2000年1月30日(日)テレビ朝日ほか話数全51話キャスト春風どれみ:千葉千恵巳藤原はづき:秋谷智子妹尾あいこ:松岡由貴瀬川おんぷ:宍戸留美マジョリカ:長沢直美(永澤菜教)ララ:高村めぐみスタッフ企画:株柳真司 堀内孝 荒井加奈子 関弘美 蛭田成一原作:東堂いづみシリーズ構成:山田隆司音楽:奥慶一製作担当:風間厚徳美術デザイン:ゆきゆきえ 行信三色彩設計:辻田邦夫キャラクターコンセプトデザイン...

 

『おジャ魔女どれみ』へと続く『とんがり帽子のメモル』と『夢のクレヨン王国』の存在

――今年で『おジャ魔女どれみ』が25周年ということで、インタビューの機会をいただき、ありがとうございます。

関弘美さん(以下、関):私もまさか25周年のインタビューに答える日がやってくるとは思ってもみませんでした。

――今回のインタビューでは「おジャ魔女どれみができるまで」というテーマで、第1話が放送されるまでの話をお伺いできたらと思います。

関:やはりオリジナルの作品ですから、実は第1話が放送されるまでが一番大変だったりするので、そのあたりの話を聞いていただけるのは光栄なことです。何回も話しているつもりですけど、話す度に「あっ、そういえばこんなことがあった!」と思い出すことが結構あるんですよ。

これは『おジャ魔女どれみ』と同タイミングで作っていた『デジモン』に関しても結構そういうことがあるんですよ。ですから『どれみ』も色々なことを質問していただいて、多角的なアプローチをしていただけると助かります。

 

 

――それでは、まずはそもそもの話になりますが、『おジャ魔女どれみ』という作品は、どのようにして企画が立ち上がったのでしょうか?

関:当時、東映アニメーションはオリジナルの作品を発信したいとずっと考えていたんです。みなさんもご存じのように1980~90年代は、多くの漫画原作のアニメを世に出していましたが、東映アニメーションが東映動画と言われていた時代には、宮崎駿さんや高畑勲さんがお作りになった『太陽の王子 ホルスの大冒険』という作品などがありまして、それもやはりオリジナルの作品だったんですよね。

原作ものは学ぶことも多くて、原作者の先生たちとも非常に良好な関係を築いていましたが、一方でオリジナルの作品を作りたいというスタッフの要望や希望もどんどん大きくなっていた時期でした。

――ちょうど会社やスタッフさんの気持ちが高まっている時期だったんですね。

関:そうなんです。私が入社した時にちょうど『とんがり帽子のメモル』という作品が放送されていたのですが、私はこの作品が大好きだったんです。原作が無いので、先々の展開を漫画などで読めませんので、毎回を真剣勝負のような気持ちで見ないといけない作品だったところに自分の心を突き動かされました。やはりオリジナルものを作っていかなくてはいけないと思ったのが、この作品だったんです。

この『とんがり帽子のメモル』という作品には、みなさんもご存じの佐藤順一さんや貝沢幸男さんのような錚々たる「1期の研修生(※)」と呼ばれる人たちや、アニメーターの名倉靖博さんなどたくさんの方が携わっていました。それもあって「オリジナルものを作れるスタッフがいる会社なんだから、作らなくては駄目だ」と、その時に誰よりも強く思いましたね。

※編集注:1期の研修生=東映動画 第1期研修生。日本アニメ史に残るメンバーが名を連ねている。

ーーなるほど。『とんがり帽子のメモル』ですか。

関:はい。あと、『おジャ魔女どれみ』の直前には、『夢のクレヨン王国』という講談社さんの児童文学を題材にしたアニメもありまして、これも繋がっていきます。

『夢のクレヨン王国』の原作者である福永令三先生は、ご自宅で児童文学を書く傍ら、近所の子供たちを集めて自然科学などを教える私塾をやっていらっしゃるような方で、子供相手の作品についてとても理解のある方だったんです。

原作の『夢のクレヨン王国』では、主人公がシルバー女王とゴールデン国王という結婚している女王様と王様だったんですよ。それをアニメ化させていただく際に、子供たちが共感を持って見られるようにと先生に調整のご相談をしたんです。

ゴールデン国王をお父さんという立ち位置にして、シルバー女王はシルバー王女という娘の立ち位置にして旅に出る。でも、原作にある「12の悪い癖」を持っているというところは変えずにいきたいです、と提案させていただいたんです。

そうしたら福永先生からは「児童文学だから王様と女王様にしているけど、それは僕が新婚だったからなんだよ。だけど、何年も経ってからアニメーションになるんだったら、やはり子供にもわかりやすいように主人公を子供の設定にするのは賛成です」と言ってくださったんですね。それで安心して、改めて設定を子供にさせていただいたという経緯があります。

そして、漫画やキャラクターなどのデザインも子供にも親しみやすい形にしようと講談社さんとも相談して、なかよしで片岡みちるさんという漫画家さんの連載をアニメをシンクロさせるような形で進めていったんです。

 

 
だから、劇中に野菜の精たちが登場しますが、そのデザインは当時の東映アニメーションのキャラクターデザイナーである稲上晃さんでしたし、監督も『おジャ魔女どれみ』と同じ佐藤順一監督、シナリオライターも同じく山田隆司さんなんですね。

彼らと一緒に、お話のベースはありつつ、子供向けに展開していくためのオリジナル要素の作業を進めていったことが、私たちにとっては『おジャ魔女どれみ』に向けての助走期間として非常にためになったと思っています。

――『とんがり帽子のメモル』から『夢のクレヨン王国』、そして『おジャ魔女どれみ』へと続く流れが見えてきました。

関:そういうことをやりながら、どんなオリジナルものを作ろうかと考えた時に、うちの会社には『魔法使いサリー』や『ひみつのアッコちゃん』のような「魔法少女もの」のアニメがいくつもあったのを思い出したんです。当然、私も子供の頃に見ていましたが、特にその2作品がとても東映アニメーションらしい成り立ちをしていたんです。

当時、『魔法使いサリー』の原作者の横山光輝さんも、『ひみつのアッコちゃん』の原作者の赤塚不二夫さんも、お二人とも最初の数話分のお話や設定みたいなものは作って下さるんですが、「あとは東映さんにお任せします」と言ってくださるんですよ。それは、色々な漫画家さんたちと共同でアニメを作るということを続けてきたのがベースにあって、そこで信頼を得ることができていたからこそなのかなと思います。

また、『魔法使いサリー』はその前に『ちびっこ天使』というベースになる漫画があったことは先輩プロデューサーから聞いていました。『ひみつのアッコちゃん』も赤塚先生が最初の奥様と離婚なさって、その時にお嬢様(現在の株式会社フジオ・プロダクションの代表・赤塚りえ子さん)と離れて暮らさなくてはいけなくなったので、それまでギャグマンガしか描いてこなかった赤塚先生が女の子が読める話を描きたくて『ひみつのアッコちゃん』の第1話ができているんです。

そういったバックボーンを色々と知っていましたので、やはりうちの会社でオリジナルものを作る時には「魔法少女もの」ではないかなと思っていました。だから、オリジナル物を作る時には『魔法使いサリー』や『ひみつのアッコちゃん』のような、東映アニメーションの魔法少女ものをベースにして作りたいと考えたのが、この『おジャ魔女どれみ』の立ち上げのきっかけです。

――東映アニメーションの歴史とも結びついて、『おジャ魔女どれみ』の企画が立ち上がっていたとは……。

関:『夢のクレヨン王国』で子供にすごく共感を持ってもらえたのは、大人の頭身ではなく12歳という設定にして子供の頭身にして描いたからではないかと、佐藤順一監督とも話していましたね。その経験があったので、オリジナルものを作る時は『美少女戦士セーラームーン』のような6頭身でスラッとした頭身ではなく、3頭身半にするところから始めましょうと話していました。

というのも『魔法使いサリー』のサリーちゃんや『ひみつのアッコちゃん』のアッコちゃんも、決して頭身は高くないんです。だから、魔法少女ものの王道のそういったところから学び、ちゃんと子供に届いて共感を持ってもらえる作品を作りましょうと、佐藤順一監督やスポンサーであるバンダイさんと話を始めていました。それがアニメ放送の1年前ですね。

 

 

『おジャ魔女どれみ』ではなく『おジャ魔女おんぷ』だった

――そういった話の中で、子供と魔女見習いと音楽という『おジャ魔女どれみ』を構成する要素はどのようにして決まっていったのでしょうか?

関:これはご存じない方もいらっしゃると思いますが、当初は『おジャ魔女どれみ』ではなく『おジャ魔女おんぷ』というタイトルで進んでいたんです。

「歌舞音曲(かぶおんきょく)」という言葉がありますが、歌・踊り・音・曲というのは子供たちが大好きなものですよね。幼稚園などでは、先生のオルガンに合わせてみんなでお遊戯をしたり、歌ったりして一緒に遊んだりしていると思います。歌や簡単な踊りの必要性というのは幼児教育の現場で既に実証されていると思いますが、そういうこともあって音楽を主軸にしようと考えていたわけです。

ところが「おんぷ」という単語は幾つかのメーカーさんが商標をお持ちになっていたので、それをタイトルにすることができなかったんです。でも「どれみ」で商標を調べたら取れたんですね。

だから、昔のシナリオ構成の第1話とかは『おジャ魔女おんぷ』になっています。

――そんな流れでタイトルが決まったんですね。

関:驚きでしょ(笑)。

――そうすると主人公の名前が「おんぷ」になっていた可能性もあるんですか?

関:名前だけは「おんぷ」になっていた可能性もありますね。

――ちょうど名前の話が出たのでキャラクターについてもお伺いしたいのですが、無印ではどれみ、はづき、あいこ、そして後からおんぷが加わって4人がメインキャラクターになります。この4人の構成は最初から決まっていたのでしょうか?

関:語呂合わせみたいに聞こえるかもしれませんが、うちの東映の三角マークの“3”というのは、絵を描く時にもレイアウトを取る時にも基本となる数字なんです。絵を描く時に「三角法」というレイアウトの法則があり、三角に配置すると非常にレイアウトが取りやすいんです。

その法則が頭にあったので、まずは3人でスタートすることが決まりました。ただし、1年間も番組を続けていく中で、お互いの関係がなあなあになってしまったり、またこういうパターンのお話なのかと思われてしまう懸念もあります。だから、新しいキャラクターを出すなら3クール目あたりかなと話をしていく中で、最初は3人で後からプラス1人というプランニングになりました。

 

 

――そうすると、声優さんを決めるのも、どれみ、はづき、あいこの3人が軸になったのでしょうか?

関:そうですね。うちの声優オーディションでは、必ず掛け合いのオーディションもやっています。各役にそれぞれ2人か3人くらいの候補が残っているとして、色々な組み合わせで台詞の掛け合いをするとバランスが見えてくるんです。そうやってオーディションで主役の声を絞り込むということを伝統的にやっています。

ですから、どれみちゃん、はづきちゃん、あいこちゃんたち3人の声優オーディションをやっている時に、集まった声優さんたちの声を聴きながら「この子は後半に出てくるおんぷちゃんじゃない?」とか「この子はどれみの妹だよね」という風に決めていったんです。3人の役のオーディションではあるんですけど、おんぷちゃんやぽっぷちゃんもそのオーディションの中で決まっていきましたね。

 

 

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