アニメ
『天幕のジャードゥーガル』原作・トマトスープが問い続ける「学ぶこと」の意味【インタビュー】

『天幕のジャードゥーガル』原作・トマトスープ先生インタビュー|「学ぶこと」は何のためにある? シタラたちの人生をを通して、自分の答えを探してほしい

2026年7月4日より放送開始となるTVアニメ『天幕のジャードゥーガル』。トマトスープ先生による人気漫画作品を原作に、監督をAbel Gongora(アベル・ゴンゴラ)さん、総監督を山田尚子さんが務める注目作です。

アニメイトタイムズでは、原作・トマトスープ先生にインタビューを実施。アニメならではの魅力や歴史に惹かれ続ける理由などについて語っていただきました。

 

関連記事
天幕のジャードゥーガル
13世紀、イランの奴隷市場にその少女はいた。これは、広大な大陸を翻弄した一人の魔女の話――。⺟を亡くし、故郷からも遠く引き離されたシタラ。まだ幼く、一人で生きていく術も未来への希望も持たない彼女は、学者の一家に拾われ、穏やかな日々の中で“知”を授けられる。その頃、皇帝チンギス・カンによる地上最強の「モンゴル帝国」が他国への侵攻を繰り返し、日に日に勢力を拡大していた。その野望がシタラの住む街に到達したとき、日常は終わりを告げ、運命が大きく動き出す。作品名天幕のジャードゥーガル放送形態TVアニメスケジュール2026年7月4日(土)〜テレビ朝日系にてキャストシタラ:関根明良ドレゲネ:小清水亜美ファーティマ:桑島法子ムハンマド:齋藤潤オゴタイ:下野紘トルイ:鈴木崚汰シラ:入野自由チャガタイ:浪川大輔ジュチ:野島健児チンギス・カン:玉鷲関モンゴル兵士:玉正鳳関スタッフ原作:トマトスープ(秋田書店「スーフル」連載)総監督:山田尚子監督:AbelGongoraシリーズ構成:加藤還一キャラクターデザイン・作画チーフ:吉田健一演出チーフ:藤倉拓也美術監督:樺澤侑里色彩設計:今野成美撮影監督:高橋直希編集:廣瀬清志音楽:日野浩志郎音響監督:小沼則義ア...

 

『天幕のジャードゥーガル』を読んで、皆さんにはご自分の答えを探していただけたら嬉しいです

──アニメ化が決定した際のお気持ちをお聞かせください。『天幕のジャードゥーガル』は、歴史や文化、人物の機微など、映像化にあたって難しさも多い作品だと思います。アニメ化に対する期待や楽しみに感じていたこと、原作者として気になっていた点があれば、あわせてお願いいたします。

トマトスープ先生(以下、トマトスープ):サイエンスSARUさん制作とのことだったので、不安な気持ちは全くありませんでした。第一に私が見たい!と思っていたので、夢が叶った気持ちでした。山田尚子総監督の繊細で奥深い世界観と、Abel Gongora監督のパワフルでスタイリッシュな作風とが合わさったら、すごいことになるだろうな、と、本当に期待100%でした。

それというのも、『天幕のジャードゥーガル』という作品で私が描きたいことは漫画で全て完結していると思っていたので、アニメはアニメで別作品、自由に制作していただきたいなという気持ちがあったからかもしれません。結果的に、かなり原作や実際の歴史や文化にリスペクトを持って慎重に制作していただき、期待以上のすごいアニメーションになったと感じています。

──制作過程では先生への質問も多かったとのことですが、原作者としてどのような形で制作に関わられたのでしょうか? 実際に制作が進む中で、Abel Gongora監督や山田尚子総監督をはじめとしたスタッフの皆さんとやり取りを重ねる中で、印象に残っている出来事を教えてください。

トマトスープ:質問リストを都度都度作っていただき、私や監修の谷川春菜先生や桝屋友子先生でそこに回答を書き込む…というやりとりを何度か繰り返しました。シナリオができた段階でも、明確にこれは気になるなという箇所があればお伝えし、完成稿へ向かっていったという感じです。監修がしっかりとおりましたので、私としては「このシーンはこういう意図があってこう描きました」というようなコンセプトや、「私が参考にしたのはこの本のこの箇所です」と出典をお伝えすることがメインでした。

その中で、私自身気づいていなかった漫画内の時系列の誤りや、文化的な面で知らなかったことを指摘され、真っ青になって原作を修正する、というようなことまでありました。なので、コミックスはできれば最新版を買っていただきたいですね。

キャラクター設定や美術設定の資料をチェックさせていただくときは、本当に楽しみでした。漫画では画面構成を優先して誤魔化した部分がたくさんあるのですが、アニメはキャラクターも建造物なども立体的にさまざまな方向から映るので、漫画とは違うアプローチで一から構築し直されていると感じました。

──完成した映像をご覧になって、特に印象に残った演出やシーン、キャストの皆さんのお芝居を教えてください。原作を描いているときに思い描いていたものと重なった部分や、逆にアニメだからこそ受け取れた新しい魅力をお聞かせください。

トマトスープ:まず1話の冒頭からアザーンが流れ、小さなシタラがトゥースのオレンジ色の街を走り回り、青いタイルのモスクの前でタイトルが現れた瞬間、あ、この作品大好き!と思いました。色彩、造形、動きの滑らかさ、劇伴、演出など…この作品の素晴らしい要素が全て詰まったようなシーンで、何度も繰り返し見てしまいました。

この質問に回答している時点では、まだ全話をチェックしたわけではないのですが、私が拝見した限りずっと高いクオリティが保たれていて、自分が描いた展開ということを忘れて見入ってしまいます。世界最速上映会で3話まで通して拝見したときは、お客さんの反応を見るぞと思っていたのに、作中起きる出来事へのショックが大きくて、画面以外見られませんでした。

特にシタラが「もう知らないところに行くのはイヤ」と泣き出すシーンは、本当に小さな子が泣いているようで可哀想で…。後々別の回で、大人になったシタラが激しく叫ぶシーンがあるのですが、シタラというキャラクターの本質は、必死に学び考え続けても先の見えない闇の中から出られず、こうして泣き叫びながらまた学び考え続けるところにあるのかもしれない、と気づかされました。シタラ役の関根さんが見せてくれたシタラの本質だと思っています。

──本作では、モンゴルやペルシアをはじめとした歴史や文化が丁寧に描かれています。作品を制作するうえで、実在した歴史や文化を創作として扱う際に大切にしていることは何でしょうか。また、資料を調べ続ける中で、今もなお惹かれ続けている歴史の魅力についてもお聞かせください。

トマトスープ:可能な限り調べて描こうと努めていますが、どうしても限界はあるもの。そして私はその文化や信仰や歴史の当事者ではなく、エンタメを作るために外野から利用しているに過ぎないんだと最近強く感じます。『天幕のジャードゥーガル』に出てくる文化や信仰、歴史の当事者の方がどう思うかは、私にはとても想像できるものではありません。

私が想像できる範囲では、『天幕のジャードゥーガル』からモンゴル帝国やイスラム世界に興味をもった方が、能動的に調べてそれを愛するようになったら、『天幕のジャードゥーガル』のことは大嫌いな作品になると思います(アニメーション作品としては評価軸が複数ありますから、ここでは原作の漫画作品のみのことです)。

だったらせめて、自分が作っているものはあくまでエンタメのための創作であること、そして知らないことは知らないと言える創作者でありたいなと思います。

歴史は調べれば調べるほど「史実」という言葉への違和感が強くなります。時々私の来歴について書かれた文章を目にすることがあるのですが、嘘ではないのに、真実でもなく、たとえ私が言葉を重ねて詳細を語ったとしても、けして私から見た真実にはならないでしょう。歴史叙述とはこういうものだと気づきました。

もしタイムスリップして、モンゴル帝国の実際の人々を見られるとしても、それは決して自分が夢中になったその人たちではないわけだし、見たくないんじゃないかな……いや、見たいかな? 別の像を見たいかも……。こんな虚しい逡巡をもう10年以上続けています。虜です。

──本作の主人公・シタラは、「学ぶこと」を生きる力へと変えていく人物です。先生ご自身も以前のインタビューで、歴史を学ぶことへの関心について語られていましたが、現代社会において「学ぶこと」や「知性」はどのような意味を持つとお考えでしょうか。また、シタラの生き方を通して、読者や視聴者に受け取ってほしいものを教えてください。

トマトスープ:昔、私が非正規として会社で働いていたとき、年上の同僚が「自分はかつて独立して起業したこともあったけど、非正規に戻った。他人に決めてもらえるのって楽だよ」と言っていたのに対して、社会経験の浅い私は何も言えませんでした。

「学ぶこと」は何のためにあるのかというと、「自分で決める」ためなんじゃないかと、私は今のところ思っています。

ただ学ぶ機会を得られること自体、恵まれたことでもあります。シタラの生きた13世紀と比べれば、現代はずっと知の裾野が広がった時代ですが、それでもさまざまな事情で学ぶ機会を十分に得られなかった人もいます。そこを否定する描き方はしたくありません。知の裾野が広がった時代の恩恵を受けてきた身としては、それは望ましくない態度だと思っています。

あの同僚は、それはそれで自分で選んだ結果としてそこにいたんだと思うのですが、それでも「他人に決めてもらえるのは楽でしょ?」という問いにどう答えたら良かったのかを、シタラたちの人生を借りてずっと探しています。

『天幕のジャードゥーガル』を読んで、皆さんにはご自分の答えを探していただけたら嬉しいです。

──最後に、放送を楽しみにしている読者へのメッセージをお願いします。

トマトスープ:TVアニメ『天幕のジャードゥーガル』に打ちのめされてください。

作品情報

天幕のジャードゥーガル

あらすじ

13世紀、イランの奴隷市場にその少女はいた。
これは、広大な大陸を翻弄した一人の魔女の話――。
⺟を亡くし、故郷からも遠く引き離されたシタラ。
まだ幼く、一人で生きていく術も未来への希望も持たない彼女は、
学者の一家に拾われ、穏やかな日々の中で“知”を授けられる。
その頃、皇帝チンギス・カンによる地上最強の「モンゴル帝国」が他国への侵攻を繰り返し、
日に日に勢力を拡大していた。
その野望がシタラの住む街に到達したとき、日常は終わりを告げ、運命が大きく動き出す。

キャスト

シタラ:関根明良
ドレゲネ:小清水亜美
ファーティマ:桑島法子
ムハンマド:齋藤潤
オゴタイ:下野紘
トルイ:鈴木崚汰
シラ:入野自由
チャガタイ:浪川大輔
ジュチ:野島健児
チンギス・カン:玉鷲関
モンゴル兵士:玉正鳳関

(C)トマトスープ(秋田書店)/天幕のジャードゥーガル製作委員会

 

おすすめタグ
あわせて読みたい

天幕のジャードゥーガルの関連画像集

おすすめ特集

今期アニメ曜日別一覧
2026年夏アニメ一覧 7月放送開始
2026年秋アニメ一覧 10月放送開始
2027年冬アニメ一覧 1月放送開始
2026年春アニメ一覧 4月放送開始
2026夏アニメ何観る
2026夏アニメ最速放送日
2026夏アニメも声優で観る!
アニメ化決定一覧
放送・放送予定ドラマ作品一覧
平成アニメランキング