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『義妹生活』上野壮大監督に聞いた制作秘話

夏アニメ『義妹生活』・上野壮大監督に聞く制作秘話・裏話・見どころ

三河ごーすと先生によるライトノベル(MF文庫J刊)を原作としたTVアニメ『義妹生活』(2024年7月~9月放送)。親の再婚をきっかけに高校生の浅村雄太と綾瀬紗季が、一つ屋根の下で兄妹として暮らすことになる新生活物語です。

アニメイトタイムズでは、スタッフ(上野壮大監督)インタビュー連載を実施! 特に印象的な話数の制作秘話や裏話を振り返ってお届けしていきます。

 

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義妹生活
高校生・浅村悠太は父・太一の再婚をきっかけに、同い年の少女・綾瀬沙季とその母・亜季子と一つ屋根の下で暮らしていくこととなる。互いに両親の不仲と離婚を経験しているがゆえに、男女関係に慎重な価値観の二人は、義理の兄妹として適切な距離感を保とうと約束する。「私はあなたに何も期待しないから、あなたも私に何も期待しないでほしいの」考えを述べあい、すり合わせを重ねることで、互いを理解していく悠太と沙季。新たな生活に居心地の良さを感じはじめた時、二人の関係はゆっくりと、しかし確実に、変化をはじめて…………これは、いつか恋に至るかもしれない物語。“他人”が“家族”へ、そしてその先へ。少しずつ変わりゆく日々を映す、恋愛生活物語。作品名義妹生活放送形態TVアニメスケジュール2024年7月4日(木)〜2024年9月19日(木)AT-XT・OKYOMXほか話数全12話キャスト浅村悠太:天﨑滉平綾瀬沙季:中島由貴読売栞:鈴木みのり奈良坂真綾:鈴木愛唯丸友和:濱野大輝浅村太一:小林親弘綾瀬亜季子:上田麗奈藤波夏帆:種﨑敦美新庄圭介:新井良平工藤英葉:園崎未恵スタッフ原作:三河ごーすと(MF文庫J「義妹生活」/KADOKAWA刊)キャラクター原案:Hiten監督:上野壮大シリーズ構成:広田...

★「第12話  と  」追加

 

目次

第1話「他人 と ただいま」

――『義妹生活』を制作する上で、全編を通してこだわっている部分についてお聞かせください。

上野壮大監督:「実在感」でしょうか。

そこにいる、そこにある、それが例え目に見えないとしても、耳で聞こえないとしても――という「確かさ」ということですかね。

第1話でも、画面外への目線や画面外からの光、音といったものが印象的だったかなと思います。

本来、心情そのものは目に見えないし、聞こえない。けれど、帰ってきた時のリビングからのあたたかい光、お風呂を入れ直す時の給湯器の音、Bパートラスト、相手との距離をはかるようなノックの音、「ありがとう」と「おやすみ」を聞いて暗い廊下に灯した光、といったものは……。

 

 
ふれて確かめる、というのも積極的に取り入れています。

新しい部屋の中を歩いて広さを確かめてみたり、色あせたシールを撫でてみたり、知らないスイッチを何度も押してみたり…。

これらはいわゆる「実在感」の演出ということに集約されるかと思いますが、大事なのは「現実的でリアルな描写」をするためではない、ということかもしれません。

それらの演出は、言葉だけでは表現できない不明感情、相手のことを考え想う心情は見えない聞こえないけど、そこに確かにあるんだ、あったんだ、ということを描写するため、でした。

――浅村悠太と浅村太一の父子、綾瀬沙季と綾瀬亜季子の母娘。他人が家族への一歩を踏み出したお話でしたが、物語の始まり、第1話でのキャラクターたちでのポイント・印象に残ったシーンを教えてください。

上野壮大監督:提示しつつも「隠してしまう」という点でしょうか。これは意識的であれ、無意識的であれ、ですかね。

せっかく隠したものを暴いてしまうのも野暮ではありますが…、、沙季の部屋での会話シーンから、アフレコ台本に書かせていただいたト書きを少し抜き出してみます。

(#1 26p C-86 「悠太、柔らかい笑みに少しの動揺を隠しながら」)

「やっぱ思った通りだ」とふわり笑う沙季の笑顔を見た悠太。

「…すり合わせ、か。言い得て妙だなぁ」という言葉の中にはほんのわずかな動揺を隠してもらいました。

 

 
(#1 27p C-89 「左手のブレスレット 何かを隠すように言葉は溢れ続ける」)

「うん。だから1人以外は、みんな切っちゃった」と言った沙季。

いつもより少し饒舌に理由を後づけて溢れて揺れる沙季の水面もまた、何かを隠しているように聞こえます。

悠太はそれに対し、「荷物の整理、手伝おうか」という言葉をかけますが、言外の意図があり、どうしてそれを沙季は「優しい」と形容します。

 

 
これからもいくつもの言葉を重ねて、「すり合わせ」を繰り返すふたり。

そのふたりが、言葉の外(もしくは内)に何を隠してしまうのか、微妙なニュアンスのお芝居の「揺れ」に注目していただけると、より楽しめるのかなと思います。

そしてそれはふたりだけではなく、両親、周りの人々もまた…、

…ここで言及するにはあまりに早すぎるので、、これ以上は私も隠してみます。

――アニメオリジナルで描かれたシーンも多くあり、悠太・沙季の生活により現実味を持たせてくれているように感じます。どのように、オリジナルのシーンを作っていったのでしょうか。

上野壮大監督:今回ありがたいことに、三河先生には構成打ち合わせから始まり、脚本会議、コンテや設定のチェック、アフレコ、といった要所に全て参加していただくことができました。

どのようにアニメオリジナルシーンを、ということですが、映像での表現(翻案)に関してその都度、三河先生とすり合わせをすることが出来たのが、本当に大きかったと思います。

そして自分はそれに甘えすぎてしまい…、最終的に先生が確認してくれるなら一度このアイデアで聞いてみようかな、、と色々なアイデアを出しすぎてしまいました。(第1話だと、色褪せたシールや日記のデザイン、幼い頃の髪型や持っているぬいぐるみ、カップ味噌汁、キッチンの動物の置物、風船、給湯器、最後の電気ぱちぱち等々。。)

監督としては、良くない仕事の仕方だったと反省していますが、映像として拡がる世界観を豊かに、そして確かに、描くことができたのではないかな、とも思っています。

 

 

――第1話ではBパートとCパートの間にオープニング映像も流れました。制作時のコンセプトやこだわった部分などを教えてください。

上野壮大監督:正直に話すと…、最初にデモを聞かせていただいた時、自分はこの楽曲が「義妹生活」に似合わないかも、と感じてしまいました…。

それは大きな思い違いだった…とあとあと猛省することになるのですが……。

音楽が持つ希望や光が、あまりに眩しくて…、何かに期待することを諦め、期待されることも避けて日々を過ごそうとするふたりとは乖離しているように、聴こえてしまったというのが大きな理由です。天使という概念も、現実的なふたりから出てくる言葉とは思えず……。

 

 
けれど、制作が進んでいき、改めて聞かせていただいた際、「これは、ふたりが失ってしまった、けれど確かにあった希望や光を、その再生 – 修復を歌っているんだ…」とやっと気づくことができ…、幼い悠太の背中に天使の羽を預けて、ああいったコンテを描かせていただきました。最初に気づけなかった自分が本当に恥ずかしい…。

先日、フルverを聴かせていただいた日。あれは朝の、人の多いバスの中だったのですが…、我慢できずボロボロと泣いてしまい…。

皆さんにも、最終話まで見ていただけたら、その後にもぜひこの曲を、もう一度聞いて欲しいです。そして、聞く環境には、お気をつけて…いただけた方が…良いかと思います…。

1話の演出等で参加していただいた小林さんに、OPのコンテを読んでもらった時に言ってもらった言葉も印象的でした。

「冒頭のバスのシーン、これから出会う「ふたつのひとり」という感じがして好きでした」

 

 
あ。大事なことを忘れてました。

このオープニング映像、これから何度か、わずかにですが変化します。

お楽しみにしていただけますと幸いです。

 

 

 

(C)三河ごーすと・Hiten/KADOKAWA/義妹生活製作委員会
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