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『ウルトラマンアーク THE MOVIE』辻本貴則インタビュー【ネタバレあり】

【ネタバレあり】『ウルトラマンアーク THE MOVIE 超次元大決戦!光と闇のアーク』辻本貴則監督インタビュー|「この作品を作っている間は、みんなが想像力を解き放っていたんです」

竹中直人さんのお芝居は「読めない」

ーーここからは劇場版のお話を伺いたいと思います。ひとつの物語の中で複数の試練に挑むという構成になっていますが、全体のストーリーはどのように考えていったのでしょうか?

辻本:一応TVシリーズは綺麗な終わり方をしたつもりではあるので、その続きを描くか、ルティオンの世界でのゼ・ズーとの戦いを描くか。そのどちらかが普通の流れだと思うんですけど、折角TVシリーズを見たのに「結末は映画館で」というのもちょっと失礼な話だし、僕自身も「なんか違うな」と思っていて。どちらかというと劇場版は、今まで観てくれた人が「TVシリーズは終わったけど、もう一度あのキャストたちに、ウルトラマンアークに会える」みたいなちょっとご褒美的な内容にしたかったんです。

なので、岡本プロデューサーと継田さんには「劇場版の時間軸を最終回後ではなく、どこかの間にしたい」という話をしていました。そんな中で、岡本プロデューサーが「オムニバスはどうですか?」と言ってくれたんです。「お、それやっていいの?」と思って、今の形ができたのはそこからですかね。

その次は当然「どの辺りを描く?」という話になるじゃないですか。前日譚という手もあるけど、それだと折角のアーマーを出せなくなってしまいます。「どうしようかな」と思った時に、ちょうど奇妙な単発回があって。

ーー第22話「白い仮面の男」ですね。

辻本:第22話は前半に色々な謎があったんですよ。シュウが腕を怪我してたり、車の傷のことを話していたり。「そこに結びつけるのも面白いね」ということになって、第22話の前に入れ込むことにしました。

ーーお話を伺うまで、「第22話の段階で既に考えていたのかな?」と思っていました。

辻本:これは本当に考えていませんでした。この作品を作っている間は、みんなが想像力を解き放っていたので、いろんなアイデアが出てくる。この「想像力を解き放て!」ってすごく便利な言葉なんですよ。『ウルトラマンアーク』が終わったら、もう使えないのが非常に残念です(笑)。

ーー(笑)。宇宙賢者・サスカル役として竹中直人さんが出演している点も注目ポイントではないでしょうか。

辻本:TVシリーズのスイードは佐藤江梨子さんにやってもらったので、劇場版のゲストは男性にしようと思って、竹中直人さんにお願いしたんです。かつて継田さんが竹中さんの監督作品で脚本を書かれたことがあって、今でも連絡を取れる仲らしいんですよ。そこで「今度『ウルトラマン』の脚本をやります」、「出してくださいよ」という会話が1回あったとか。恐らく社交辞令でしょうけど、そこはもう恥ずかしげもなく乗っかっちゃって、オファーさせていただいたという流れです。

ーー竹中さんのお芝居を現場でご覧になって、いかがでしたか?

辻本:ご一緒するのは初めてだったんですよ。何となくイメージってあるじゃないすか。竹中さんのパブリックイメージというか、「何をするのか分からない人」という勝手なイメージがあって。だからこそ、いざやってもらうまではどう転ぶか読めないから、「臨機応変に対応しなきゃ」と思っていました。もしかしたらすごく機嫌が悪いかもしれないし、延々とはっちゃけるかもしれないし……。

そうそう、竹中さんの弾けたお芝居ってあるじゃないですか。あれは監督からのオーダーがないと竹中さんの方からはやってこない、ということが判明しました。

ーー衝撃の事実です……!

辻本:積極的にはやられてないみたいです。こちらからお願いすると「そっちの方ですね」という感じで、どんどんやってくれます。そのはっちゃけ芝居に関しても、毎回同じものにはならないということが途中で分かったんです。そりゃそうですよね、とにかくはっちゃけてますから。同じものにならないくらいぶっ飛んでいるから面白いんですよね。僕が「同じシーンを別アングルでもう1回」と言ったら、そこはもう同じものにはならないので、ちゃんと見極めないと後で編集で困るんだなと、現場で気づく。だから撮影している間、僕は劇中のユウマと同じ気持ちでした。「次は何が飛び出てくるんだろう?」って常にドキドキしている(笑)。でも本当に撮影は全部楽しかったですし、ありがたかったです。

ーー戸塚さんは竹中さんと一対一の芝居が多かったですよね。

辻本:そこですよ! 「何でそんなに普通に芝居ができるの?」って(笑)。

ーーすごいですね(笑)。

辻本:ちょっとでも「あー緊張した」とか言ってもらえるとホッとするんですけど、何も言ってくれないんですよ。普通にお芝居しているから、拍子抜けするというか。

リハーサルはもちろんやりますけど、基本的にはその場で「竹中さんがどういうお芝居をするのか」が分かる訳です。それに対して、普通に対応している戸塚有輝が頼もしいっちゃ頼もしいけど、つまんないっちゃつまんない(笑)。

一同:(笑)

辻本:僕とか周りのスタッフは緊張しているのに、何故か1人だけ普通でした。

ーーあとは、辻本監督と親交の深い水野美紀さんも声で出演されています。

辻本:声のみとはいえ、本当にありがたいです。劇場版はやりたいことを全部やるという感じでした。僕自身もそうなんですけど、テレビシリーズを観ていると、やっぱりキャラクターに愛着が湧きますよね。その人たちが普段見せないお芝居を観られるのは嬉しいと思うので、そういった部分も楽しみにしていただければと思います。

やりたいことを詰め込んだ、てんこ盛りな劇場版

ーー劇場版の目玉である「ギルアーク」についてもお聞かせください。劇場版でもう1人のアークを出そうと思った理由は何ですか?

辻本:半年間応援してくれたファンの皆さんにとってのお楽しみ、ご褒美のようなお祭り映画だと思っているので、サービス精神の多い作品にしたいなと。

それまでの『ウルトラマンアーク』のテイストとは、少し逸脱しているかもしれないけど、ファンに楽しんでいただける方がいいと考えていたところに、円谷さんの方から悪いウルトラマンを出すというアイデアが。アイデアというか……「そんなパターンってあります?」みたいな。

要は円谷さんが宣伝とかいろんな展開も考えた上で、「悪いウルトラマンがもし出せるなら……」という話があったんです。」って。個人的にも「ファンの人は喜んでくれるはず」と思って、むしろウェルカムな感じで登場させることにしました。なので、出すことが決まってから中身を考えたという流れです。改めてポスターとかを見ると、ギルアークは居てくれて良かったと思いますね。

ーー劇場版で新たに登場し、辻本監督がデザインを担当されている、犬狼怪獣ドグルフ(ムーゴン)についてはいかがでしょうか?

辻本:犬っぽい怪獣ありきではなかったんですけど、ちょうど人間に寄り添う怪獣が登場するエピソードができたので、ここはもう「犬の怪獣を作らせて!」と岡本プロデューサーにお願いしたんです。『ウルトラマンX』でも宇宙化猫ムーという名前の怪獣も出してましたし、僕の“ウルトラマンシリーズ”デビュー作から犬は散々擦っているんですけど(笑)。※「ちょっとデザイン描きます」と言って描いたのが、ザ・犬。しかも鼻が長くて明らかに柴犬。もうこれで思い残すことはないですね。


※:辻本監督は自身の作品に愛犬の「むーちゃん」を何らかの形で度々登場させている。

ーー邪悪怪獣レポディオスの存在も気になります。

辻本:『ウルトラマンアーク』は怪獣らしい怪獣、いわゆるゴモラタイプが少なかったですよね。ゴメスなど既存の怪獣は別として、新規の怪獣で、ああいうどっしりとボリュームのある二足歩行のデザインは意外となかった。子供たちが喜びそうな角やトゲが沢山あって、という部分を分かりやすく出したいという思いで、レポディオスのデザインは発注しました。

ーー本当にひとつの作品とは思えないほど、てんこ盛りな劇場版になっていますね。

辻本:そうですね。本当はもうちょっと尺はあったんですが、やっぱり子供たちに楽しく見てもらえる時間は75分ということで、テンポよく編集しました。色々なことが上手く転がって、物語の構成もビジュアル面もかなり面白いことができたので、『ウルトラマンアーク』最後のお祭りとしては良かったなと思っています。

[インタビュー/小川いなり]

『ウルトラマンアーク THE MOVIE 超次元大決戦!光と闇のアーク』作品情報

ウルトラマンアーク THE MOVIE 超次元大決戦!光と闇のアーク

あらすじ

「君に勇者たる資格があるかどうか、だ――」

『宇宙賢者』を名乗る謎の男「サスカル」が主人公・ユウマに告げたその言葉が、この闘いのすべての始まりだった。ユウマに課せられる想像を超えた究極の試練。

「失敗すれば、君はアークとしての力を失う――」

怪獣防災科学調査所「SKIP」のメンバーとして守ってきた星元市の平和、「SKIP」に集う仲間たちと築き上げて来た信頼の絆、たびたび直面して来た怪獣を倒す意義への葛藤…。ウルトラマンに変身する光を手にしたからこそ、ひとり重圧を噛み締めて来たそんな使命たちが、いま、サスカルの手により弄ばれ、次々にユウマに襲い掛かる!

暴れる大怪獣たち、荒ぶる邪悪な宇宙人、時空さえも歪められた超次元の中で、ついにその姿を現す黒いウルトラマンアーク、「ギルアーク」。

果たしてユウマは…ウルトラマンアークは、『想像力』を超えて最大の試練に打ち勝ち、未来を守り抜くことができるのだろうか?!

キャスト

飛世ユウマ:戸塚有輝
石堂シュウ:金田昇
夏目リン:水谷果穂
伴ヒロシ:西興一朗
武川モトキ:中山翔貴
乾あかり:田中日奈子
サスカル:竹中直人

【声の出演】
ユピー:広瀬裕也
邪悪怪人レポ星人:水野美紀

(C)円谷プロ(C)ウルトラマンアーク製作委員会・テレビ東京
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