
冬アニメ『全修。』スタッフ連載インタビュー最終回:山﨑みつえ監督|ルークが、愛した人を傷つけた町の人たちと簡単に仲直りされたら解釈違いですよね
株式会社MAPPAのオリジナルTVアニメ『全修。』が、2025年1月5日よりテレ東系列ほかで放送。初恋をテーマにした劇場ラブコメ作品のコンテ作業中に意識を失い、子供の頃に夢中になったアニメ映画『滅びゆく物語』の世界へと転生した天才監督・広瀬ナツ子。元々の『滅びゆく物語』の物語へと収束しようとするなかで、ナツ子は大好きだった『滅びゆく物語』の結末を“全修”して、世界を救いました。
アニメイトタイムズでは、本作の魅力、そしてアニメ業界のお仕事に迫るインタビュー連載を展開! 連載の締めくくりは山﨑みつえ監督にナツ子のモデルなどの裏話や、監督を務めるうえで大切なことについてお話を聞きました。
ナツ子のモデルは何人かいます
──自分が好きだったアニメ作品の結末を“全修”して世界を救った広瀬ナツ子。ここまでの物語を踏まえて、監督が本作を通じて伝えたかったこと、伝わればいいなと思っていることを教えてください。
山﨑みつえ監督(以下、山﨑):ナツ子は『滅びゆく物語』を体感して、仲間を得たり、恋を知ったり、自分の役割について考えて成長しました。本作を見てくれた方々が好きなアニメを見て楽しんだり、絵を描いたり、深く考察することが自身の人生において新しい価値観を得たり、仲間を得たり、人生が豊かになる……ことがある……かもよ~ということが伝わればいいなと思ってます。あと、ハマグリ弁当で死なないでください。
──ナツ子はアニメ監督ですが、モデルとなった方はいますか? また、山﨑監督自身は、ナツ子と共感できる部分はありましたか?
山﨑:ナツ子のモデルは何人かいます。天才として参考にした方、女性として参考にした方、オタクとして参考にした方など複数います。
共感できる部分は「やったことないからわっかんねえ~」ってイラつく部分。共感できない部分は「自分がやったほうが早い」って思ってる(思ってた)ところですね。私は誰かに頼んで仕事するほうが意外性あって、楽しくて好きです。
──鳥監督(鶴山亀太郎監督)の「安易だな。ハッピーエンドだけが 、エンタメだと思うなよ」という言葉が個人的には印象的でした。鳥監督はどんな気持ちでこの言葉を発したのでしょうか?
山﨑:(脚本担当の)うえのきみこさんが書いてくれた初稿からあったセリフですね。とてもいいセリフで(鶴山亀太郎監督役の)榊原(良子)さんが「このセリフで鳥監督が何を考えていたのかわかりました!」っておっしゃっていたのが印象的でした。
個人的な考えですが、そういったハッピーエンドの終わり方は、鶴山監督は『滅びゆく物語』制作時にすでに考えたことがあって、何度も却下したアイデアだったんじゃないかと思っています。考え抜いた先にできたのが、あのルークが世界を滅ぼすというエンディングでしたから、やっぱり“皆ハッピー”という終わり方なんて幼稚だなって思ったんじゃないでしょうか。ルークが、愛した人を傷つけた町の人たちと簡単に仲直りされたら解釈違いですよね。