多くのメディアミックスを手掛けてきた名編集者・井上伸一郎さんによる著書『メディアミックスの悪魔 井上伸一郎のおたく文化史』発売！　アニメイトで行われた記念トークショーレポート&インタビュー

「メディアミックスの悪魔」という書名の由来は？

「どんなすごいことが起きていても、文字に残しておかないと風化してしまう。だからこの本を作れて本当に良かった」と話す太田さん。2010年の『東京国際アニメフェア』への出展取りやめから『アニメ コンテンツ エキスポ』の開催、『AnimeJapan』創設までの経緯や、1981年に新宿アルタ前で行われた「アニメ新世紀宣言」に2万人が集まり、大ガード下からタカノフルーツパーラーまで人が連なったことなど、歴史の証言を本書のようなかたちで残していく意義を振り返りました。

また井上さんも2010年代に、9つの会社を「ＫＡＤＯＫＡＷＡ」という1つの会社に統合した時期については「大変だった」と振り返り、「それぞれの会社が持つカルチャーも歴史も大切にしたいけど、1つにならないとすべてがダメになってしまう。つぎはぎだった状態をまとめるまで、やはり10年かかりました」「バンダイナムコの高須武男さんからは『それぞれの会社の文化が融合するまで7年はかかる」と言われて、そんなにかかるの？と思ったけど、やってみたらかかりますね」と語った井上さん。

「7年くらい経てば社員も結構入れ替わりますからね」と太田さんも同意しながら、当時角川書店に在籍していたある方を自社に誘ったところ「いまはＫＡＤＯＫＡＷＡがおもしろいから行き着く先を見てみたい」と断られた、という秘蔵のエピソードも明かしました。

また「メディアミックスの悪魔」という由来についても井上さんから説明がありました。

「井上さんは悪魔なんですか？とよく尋ねられましたが、そうではなくて（笑）。『チェンソーマン』が好きなんですけど、もし私が悪魔だったら何と契約するかなと考えたら、きっと“メディアミックスの悪魔”だろうとふと思いついて。ちなみにどれだけ作品が好きかというと、今日着ている衣装はGround Yと『チェンソーマン』のコラボアイテムで、マキマさんのボタンを付けています（笑）」と、本書タイトルの由来を明かしました。

加えて「せっかくこういうタイトルを付けたので、メディアミックスのノウハウ的なことや自分が思うメディアミックス論を書きました」と語る井上さん。

太田さんが「自分が好きなＫＡＤＯＫＡＷＡは井上さんによるところが大きいと今回改めて思いました」と話し、「まだネットがない時代には『ニュータイプ』を通じて情報を知るわけで、カルチャーと繋がっている感覚でいられたのはＫＡＤＯＫＡＷＡのおかげです。それがなければここで話すような人間になっていなかった」と熱弁。

続けて、「井上さんが駆け抜けた40年は出版がいい時代でしたよね？」と問いかけると、井上さんは「80年代、90年代前半までが雑誌の時代でしたね」と答えつつ、雑誌にとってWindows95の発売やTwitterの普及が大きな転機になったと語りました。

参加者からの質問コーナーから新プロジェクトを発表！

終盤には来場者からの質疑応答のコーナーも設けられ、本書に関する質問や井上さんの仕事に関する質問が寄せられました。

「ＣＬＡＭＰさんが手がけた表紙の井上さんの肖像部分の監修はされましたか？」の質問には「してません（笑）」と答え、「このイラストを使ったVTuberデビューの予定は？」の質問には「VTuberではありませんが、YouTubeデビューはします。実はもう何本か収録しています。パートナーはコルピ・フェデリコというイタリア人の方です。初回では、日本のアニメはイタリアでどう見られているのかを話して、その後はゲストを呼んでトークしていきます。4月末くらいにはアップする予定なので、楽しみにしていてください」と新たなお知らせも。

またマフィア梶田さんと中村悠一さんの『わしゃがなTV』で、よく『ニュータイプ』のことがよく扱われていることについてどう思われているのか？」という質問が。

『わしゃがなTV』は井上さんも番組を視聴しているそうで、「（自身が手掛けた）創刊5号目の『魔法のプリンセス ミンキーモモ』の表紙のバックの影はすべて文字だったことを番組で取り上げてくださり、最高の誉め言葉をいただきました」と喜んでいました。太田さんが「今度ゲストに行って、この本の宣伝をしてください（笑）」とお願いする場面も。

そうして、あっと言う間に1時間が経過してしまい「刊行前なのにこんなに話せるとは？」と驚くお二人。「満足していただけましたか？」の問いかけに会場から大きな拍手が送られました。

まだまだ話し足りない様子でしたが、本書の発売後の4月26日にも東京・渋谷ロフト9にて刊行記念トークショーが行われます！　

2部構成で開催され、第1部のゲストは永野護さんと声優の川村万梨阿さんが、第2部には佐藤辰男さん、宇野常寛さん、『電ファミニコゲーマー』編集長の平信一さんが出演し、井上さんによるサイン会も行われる予定とのこと。第2部のチケットはLivepocketにて発売中ですので、この続きはぜひ4月26日のトークショーで！