マンガ・ラノベ
『メディアミックスの悪魔 井上伸一郎のおたく文化史』発売記念トークショーレポート&インタビュー

多くのメディアミックスを手掛けてきた名編集者・井上伸一郎さんによる著書『メディアミックスの悪魔 井上伸一郎のおたく文化史』発売! アニメイトで行われた記念トークショーレポート&インタビュー

井上さんアフターインタビュー

――まずトークショーを終えた感想をお聞かせください。

井上伸一郎さん(以下、井上):太田さんと掛け合いでのトークショーになりましたが、おかげさまで大変盛り上がって嬉しいです。なにせ本が発売される前に、予約してくださった方に本の内容の話をする経験は初めてなので(笑)。本のさわりの部分だけですが、これだけ話せて良かったです。あと今回やってみて、まだまだ本に書いていないことやイベントで話していないことがあるなとも思いました。

――たくさんの方が来場されて、井上さんのファンの多さに驚きました。

井上:サクラがいたんじゃないですか?(笑) でも客席の中に業界の知り合いの顔も見つけて、わざわざ来てくれたんだなとありがたく感じました。

――終了後、お客さんが語り合いながら会場を出ていく様子を見て、お二人のトークを聞いていたら「あの時の自分もそうだった」と語り合いたくなるのでしょうね。

井上:この本には1980年代から現在までのことが書かれているので、誰でもどこかの時代には当てはまると思います。人の話を聞いたら思い出すことがあるでしょうし、自分も太田さんと話しているうちに思い出したことがいくつもありますから。

――また、本書は聞き手に宇野常寛さんを迎え、各章に宇野さんによる解説が加えられた方式とお聞きしましたが、この形にして良かったなと思うことは?

井上:聞かれないと思い出せないことや言われて初めて気が付くことが結構ありました。宇野さんと話しながら、同席した太田さんもツッコんでくれたので、自分一人で書くよりもアイデアや想い出を膨らませたり、より鮮明に書けたのかなと思います。

――我々はアニメ作品や監督のお話を、雑誌やラジオなどで視聴していましたが、アニメ制作の更に裏側の話を知る機会がないので、ありがたかったです。

井上:本当はもっといろいろな作品についてのことを書きたかったのですが、紙面にも限りがあるので。もしひとつひとつ触れていったらかなり膨大になるでしょうね。

作品という「点」でアニメをみるだけでなく、プロダクションでスタッフがどう繋がっているのかといった「面」でみていく。タツノコプロやサンライズ、東映アニメーションなど様々なアニメプロダクションがありますよね。「こういう流れでアニメスタジオが派生したり、誕生して、この作品ができた」とか「なぜこの人は違うプロダクションに行ったのか」など、そういう「面」によって初めて見える地平もあるけれど、それをひとつひとつ調べていくのは大変です。

だから他の人たちとみんなで、いろいろな視点で本を書いていくときっと見えてくるんじゃないかなと思うし、それは僕らの世代がやらなくてはいけない仕事なんじゃないかなと思っています。

――また編集者やライターにとっても参考になる本なのかなとお話を聞いていて思いました。

井上:監督や作家などにインタビューする機会は多いけれど、編集者に話を聞く機会はなかなかありませんよね。私は、客員教授として着任しているZEN大学で、マンガ家やアニメ監督だけではなく編集者、出版社の営業マン、アニメプロデューサーなどへもインタビューさせていただいています。そこからいろいろなことがわかってきているんですよ。

現在のアニメシーンの大きな違いは?

――黎明期から現在までのアニメシーンをご覧になって、変化を感じる点を挙げていただけますか?

井上:大きな変化といえば世界中の人が日本のアニメを観られるようになったこと。昔は30分のアニメの放映権が、海外になんと10万円くらいで売られていました。しかもたとえばある国のディストリビューター(代理店)に売られたアニメが、さらに各国へと再販売され、どの国で放送されているのかさえ把握できていなかった時代も長かった。

でも配信の時代が始まり、権利元がしっかり管理し、各国での放映状況を追跡できるようになりました。そうなった2010年代以降は、マーケットが広がり商圏が広がったことでそこから得るインカム(売上)も増え、最終的には制作の現場に還元されています。今はそういう循環がようやくできてきたかなと思います。そしてもっともっとアニメの地位を高めてほしいなと願っています。

――自分の幼少期はまだアニメが“テレビまんが”と呼ばれていましたが、徐々に認知度や評価が高まっていく過程や、“おたく”という言葉が広がっていく世相もおもしろいなと思っていました。そういうことも本書を読むと思い出してきます。

井上:まずおたくに冷たかったり、おたく自体が認識されていない時代が長かったですよね。でも「宮崎勤事件」など負の歴史ではあるけれど、あの時に初めて一般的に認知されて、そこからプラスに転じていく経緯もあった。

そういう出来事がないまぜになって今があるので、あらゆるものに光と影があるなと。そして影がないと光は浮かび上がってこないのかもしれないなと最近思うようになりました。もちろん影はないほうがいいんですけどね。

――現在でもアニメ界は各クールごとに50本以上が制作されていますが、80年代から勢いを増していき、音楽界や出版界、エンタメが輝いていて。そんな時代を若い人たちは作品を通してしか想像できませんが、本書を読むことで体感できるのは素晴らしいことですね。

井上:80年代を過ごしてきた人が思い出したり、共感するだけではなく、若い人にとってもそういう手助けになったり、感じてもらえたらいいですね。

最近、『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)』が話題になっていますが、アレを見て、今どんな現象が起きているのかといえば、配信で一作目の『機動戦士ガンダム』がたくさん視聴されるようになったり、富野由悠季さんが書いた最初の『ガンダム』の三部作の小説が売れたりとか、何かの刺激があると「オリジン」に帰ってくるのかなと。

「古いものだから観ないとか言わないで、観てみたらおもしろいですよ」と伝えたいですし、この記事をご覧になっている方も機会があれば試しに“ファーストガンダム”に触れてみたり、いろいろなものを観てみてください。

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