
俳優・声優・アーティスト・七海ひろきにしか表現できない多彩な輝き――3rdアルバム『Crystal』に込めた想いと表現の核に迫るインタビュー!
俳優・声優としてアニメや舞台で幅広く活躍するなか、2024年にアーティストデビュー5周年を迎え、音楽活動においてもファンと共に充実した軌跡を歩んでいる七海ひろきが、自身3枚目のフルアルバムとなる新作『Crystal』を4月16日にリリースした。
昨年にデジタルリリースされたTVアニメ『戦国妖狐 千魔混沌編』のエンディングテーマ「夜の隨」や5th Anniversary Song 「Dearest」に新曲を加えた全9曲。ジャンルも曲調もバラエティーに富んだそのすべてに、“俳優・声優・アーティスト”の七海だけにしか表現できない、クリスタルのような輝きが確かに息づいている。七海が3rdアルバムに込めた想い、アーティストとしての現在地にインタビューで迫る。
道標となる存在──ファンとの相互の絆を歌に込めて
──昨年にアーティストデビュー5周年を迎えたわけですが、アニバーサリーイヤーはどんな時間になりましたか?
七海ひろきさん(以下、七海):改めて支えてくれているファンの皆さんのことを近くに感じることができました。アーティスト活動では記念のオーケストラコンサート(『HIROKI NANAMI 5th Anniversary Orchestra Concert "Dearest"』)を開催して、舞台も3作品に出演させていただいたので、ファンの方もかなり忙しかったと思うんです。
そんな中で、いつも一緒に歩んでくれて応援してくれることが改めて嬉しく感じましたし楽し、皆さんの存在を噛み締めることができました。
──オーケストラコンサートはどんな経験になりましたか?
七海:約50人編成のオーケストラさんの演奏をバックに歌わせていただいたのですが、迫力が本当に凄くて。その力を後ろに感じながら、前にはいつも応援してくれる皆さんがいたので、全方位に私を支えてくださる方たちがいる、とても幸せな空間でした。アレンジもオーケストラ用に仕立てていただいたので、自分の楽曲も新鮮に感じることができて。
アンコールでは宝塚時代の楽曲も何曲か歌わせていただいたことを含めて、すごく充実した時間になりました。
──そのコンサートと同じタイトルの5周年記念ソング「Dearest」に込めた想いについても、改めてお伺いしたいです。
七海:5周年ということで、ファンの皆さんに感謝の気持ちを伝えたくて作った楽曲になります。
楽曲は私のライブでよく演奏してくれている西村奈央さんにお願いして、歌詞は自分で作詞しました。伝えたい気持ちが多すぎたので、それを限られた文字数の中で言葉にするのにかなり悩んだのですが、1stミニアルバム『GALAXY』にかけて“宇宙”の要素も入れつつ、私にとってはみんなが“道標”という想いを込めて書いていきました。
特に歌い出しのフレーズ“君がいて僕がいる”は最後に書いたのですが、歌詞に触れるたびにまた新たな気持ちが生まれるような、これからこの楽曲を歌うたびに、お互いの気持ちを深めていけるような楽曲になればいいなと思っています。
──曲名の「Dearest」自体も、七海さんにとっては特別な言葉らしいですね。
七海:そうなんです。手紙で相手への親愛の意味を込めて「Dear」と書きますが、私は親愛よりも大きな最愛の意味を込めて「Dearest」とよく書いていて。それで、私が宝塚歌劇団在団中にディナーショーをやらせていただいた時、私にとっては応援してくれているすべての皆さんが最愛の人なので、その想いを込めてショーの題名を「Dearest」にしたんです。なのでこの楽曲のタイトルを考えた時も、この言葉しか出てきませんでした。
──七海さんは、ファンの方が“道標”になっている気持ちが強いんですか? 表舞台に立つ方なので、ある種、七海さんがファンの方の“道標”になる、という見え方もあると思うのですが。
七海:お互いがそういう存在でいられたら、一緒に引っ張り合っていけたらな、という思いはあります。この歌詞を書いている時も、私から皆さんへの「Dearest」という気持ちだけでなく、皆さんから私への気持ちとしても聴けるような歌詞に出来たらと思っていました。
──ピアノやストリングスを中心とした穏やかな出だしから、徐々に熱を帯びていく楽器隊の演奏と、想いの強さを感じさせる七海さんの歌声のアンサンブルも素晴らしくて。
七海:ピアノの西村さんをはじめ、いつもライブで演奏してくれているバンドの皆さんが制作に関わってくれていて、楽曲としても支えられていることを感じられるものになりました。後半に行くに従って高まっていくような演奏になっていて。伴奏は2パターン送ってくれたのですが、よりエモーショナルな方を選びました。
──そんな「Dearest」も収録した今回のニューアルバム『Crystal』ですが、まず制作にあたりどんな作品にしようと考えていたのか、当初イメージしていたコンセプトをお聞きしたいです。
七海:いまお話しした「Dearest」と、TVアニメ『戦国妖狐 千魔混沌編』のエンディングテーマとして発表済みの「夜の隨」の収録は決めたうえで、その他の楽曲に関しては私がいま作りたい楽曲・歌いたい楽曲をテーマにどんどん制作していきました。その結果、ジャンルを問わず幅広い楽曲が揃ったので、多面的な作品という意味を込めて『Crystal』というタイトルにしました。
──素敵なタイトルですよね。
七海:ありがとうございます。クリスタルは無色透明な石なのですが、そこに光が当たることによってまた違った光を放つ素敵な石で、そこに自分らしさもすごく感じたんです。
私が発信するものを受け取り側の方の好きな感性で受け取ってほしいと常に思っているので、無色透明な楽曲が受け取り手によって、いろんな光を放つ。そんな思いも込めました。なおかつクリスタルは4月の誕生石でもあるので、リリース時期にもピッタリなんですよね。クールな楽曲から爽やかな楽曲まで、さまざまな光が集まる作品になりました。
──これは余談ですが、1stミニアルバムのタイトルが“銀河”を意味する『GALAXY』で、2ndミニアルバムは『FIVESTAR』、前作の2ndアルバムは『DAYLIGHT』。今回の『Crystal』を含め、キラキラしたものをモチーフにしたタイトルが多いですよね。
七海:確かに。そういえば全部輝いていますね(笑)。歌詞を書く時も、気を付けないとすぐに“光”という言葉を入れてしまうんですよ。やっぱり美しいもの、キラキラしているもの、綺麗なものが好きなので、自然とそういう傾向になるんだと思います。でも、逆に今後も光るワードを突き詰めていけば、私の特徴になるのかも。
──いいですね。ちなみに過去作と比べてどんなアルバムになったと感じますか?
七海:これまでで一番多彩な表情を持つアルバムになったと思います。それはこれまでの5年があったからこそで、きっと5年前であれば歌えなかった曲もあると思うんです。
私は『DAYLIGHT』のリリース後のライブの頃から、1曲ごとに物語を感じて役者のように歌うことをより考えるようになったのですが、それを経ての今回のアルバムだったので、1曲1曲に奥行きが生まれるように、一音一音の響きを大切に、繊細に表現しながら制作していきました。今回は1曲ごとの色がより明確になった感覚があります。
──アルバムのリード曲「Skyward」は、PaniCrewでの音楽活動でも知られるダンサー・演出家の植木豪さんプロデュースによる、ラップ入りの力強い楽曲です。
七海:豪さんとは、2024年に出演した舞台「サイボーグ009」でご一緒して、そのご縁で今回プロデュースをお願いしました。
以前からラップを取り入れた楽曲をいつか歌いたいと思っていたのですが、前作の『DAYLIGHT』でもまだ早いということで見送っていたんです。そんななか、「サイボーグ009」でヒップホップ系の楽曲を歌わせていただいたり、その後に出演したミュージカル「blue egoist」でもラップの入った楽曲を歌わせていただいたので、このタイミングで挑戦しました。
──植木さんとはどんなお話をしながら制作を進めたのですか?
七海:最初のディスカッションでは「七海ひろきらしいヒップホップ曲にしたい」ということをお伝えしました。その時にお話ししたキーワードが“お茶の間ヒップホップ”で、私はヒップホップ初心者でかっこいいラップ曲はまだハードルが高いので、お茶の間でこたつに入りながら聴けるテンションと言いますか、距離の近いヒップホップ曲にしたい、というお話しをしたんです。豪さんは笑っていましたけど(笑)。
──とはいえ、すごくかっこいい仕上がりになっていますよね。
七海:本当ですか? 嬉しいです。これは自分の中にある挑戦心と、ラップだからこその自由な感性が融合された楽曲だと感じていて。ラップ部分の自由さがゆえの難しさも含めて挑戦の曲になりました。
ラップの場合、尺の中で自由に言葉を発していいのですが、速く言い過ぎたら尺が余るし、遅くても良くない。その絶妙なバランスを測りながらかっこよくラップするために、仮歌のラップを参考にしながら、家で何回も練習してレコーディングに臨みました。今回は口ずさめるラップをコンセプトにしましたが、いつかもっと難しいラップ曲にも挑戦したいですね。
──歌詞の内容に目を向けると、聴く側が共感を覚えるようなメッセージが込められているように感じました。
七海:そこは豪さんが考えてくださった部分で、作詞・作曲・編曲をしてくださった田中マッシュさんも、それを汲み取ってくださったんだと思います。
「Skyward」というタイトルや歌詞からは、空に向かっていく爽快感や、不安があっても前に進んで行く気持ちが感じられて、すごく私らしい歌詞でもあるなと思いました。私は決していつもハッピーな感じではなく、どこか不安や迷いがあるのですが、そんな中でも常に上に向かって進もうと思っているので、そういう気持ちに重なる部分があって。
──七海さんは不安を抱きがちなんですか?
七海:いつだって不安な部分はあります。でも、みんなが応援してくれているから、私も「やるぞ!」という気持ちになれている部分があって。私はひとりだと何もできない人なので。
──そんなそんな。
七海:いや、本当にそうなんですよ(笑)。でも、常にファンの人が応援したくなるような私でいたいと思います。













































