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『岸辺露伴は動かない 懺悔室』渡辺一貴監督が捉えた人間の弱さと愛おしさ【インタビュー】

「人間の弱さや愛おしさがにじみ出るような映像が沢山撮れたと感じています」渡辺一貴監督が映画『岸辺露伴は動かない 懺悔室』の撮影、“生身の人間が演じることの凄さ”を語る【インタビュー】

 

「ポップコーン対決」をいかに実写化するか

──今作に出演するキャストについて、お聞かせください。まずは、岸辺露伴役の高橋一生さんと泉京香役の飯豊まりえさんから。

渡辺:一生さんはいつも落ち着いていて変わらない佇まいで撮影に臨まれているように感じます。ヴェネツィアでもそれは同じです。芝居相手とのキャッチボールを楽しみながら、今回も驚くような表現を随所でして頂いています。

また、今回は呪いにまつわるエピソードが濃いので、飯豊まりえさん演じる泉京香とロレンツィオ(※作中の登場人物)の二人のシーンに救いを感じます。底抜けの明るさが、暗くなりがちな物語のバランスを取ってくれているなと。毎回、何気なく話している中で、京香が本質的なことを言うシーンがあるんですけど、今回もすごく大切なことを言っています。彼女の明るさには、いつも助けられている感じですね。

 

 

──今作の鍵を握るゲストキャストの皆さんはいかがでしたか?

渡辺:田宮役・井浦新さんと水尾役・大東駿介さんは、何度かお仕事をご一緒させていただいて、今作でも想像を超えたお芝居をしていただいているので、楽しみにしていただきたいです。

マリア役・玉城ティナさんとは初めてご一緒したんですが、すごく存在感のある方だなと。今作のマリアという役は、とてもミステリアスで、前半から「何か影があるな」と思わせる役なんです。非常にピッタリで、素敵な演技をしていただきました。

ソトバ役・戸次重幸さんはどちらかというと、スマートでシャープな芝居をするイメージが僕の中にあったんですけど、「そういう方にこそ、ソトバを演じてほしい」と思っていました。

恐らくソトバにも浮浪者になる前の人生があって、そこから変容していったと思うんです。戸次さんみたいなスマートな方が落ちぶれていくという説得力は凄まじいですし、そこにもドラマを感じる。一見、戸次さんだと分からないくらいにめちゃくちゃ汚して、演じていただきました。

 

 

──今作の中で特に注目してほしいポイントをお聞かせください。

渡辺:全部と言えば全部なんですが、原作を知っている方にとっては、「ポップコーン対決をいかに実写化するのか」が気になるところだと思います。僕も「どうやって撮影しようか」と試行錯誤していたんですが、役者さんのお芝居の力で、スペシャルな結果が生まれたと思います。

また、特に後半の部分では、エモーショナルな人間の弱さや愛おしさがにじみ出るような映像が沢山撮れたと感じているので、その辺りも楽しみにしていただければと思います。

 

「懺悔室」は“ポップコーン”でなければならない

──多くの人々から愛される『ジョジョの奇妙な冒険』『岸辺露伴は動かない』という作品ですが、渡辺監督から見て作品の魅力はどんなところだと思いますか?

渡辺:「予想外」なところでしょうか。先が読めないというのとはまた違うんですよね。この人はこのタイミングでこういうセリフを言うのか、とか……。それこそ「ここで、ポップコーンを使って勝負しよう」とは誰も思わないじゃないですか(笑)。本当に荒木先生しか思いつけない発想だと思うんです。そして物語全体に「ポップコーン対決」でなければならないという不思議な説得力もある。

「ジャンケン小僧」も同様で、5回勝負のジャンケンだけで命懸けのスリリングなドラマが展開される。人生がポップコーン投げやジャンケンに凝縮できるなんて……。それは僕たちの発想ではたどり着けない唯一無二のイマジネーションの世界で、それが魅力的なんだと思います。

 

 

──監督は『ジョジョの奇妙な冒険』をお好きだとお聞きしましたが、特にお好きなシリーズ、キャラクターはいますか。

渡辺:やっぱり全シリーズ好きなんです。連載開始当初から読んでいたんですけど、本当にのめり込んだのは第3部(スターダストクルセイダース)からなので、ディオ・ブランドーやイギーが好きですね。

──監督ご自身が影響を受けた作品や人物についても伺いたいです。

渡辺:発想的には、荒木飛呂彦さんと筒井康隆さん(※1)が僕の中の大巨匠ですね。想像を超えた発想力をお持ちのお二人で、僕の発想の9割ぐらいは、お二人からインスピレーションをいただいている気がします。

※1 筒井康隆:1934年生まれ、日本の小説家、劇作家、俳優。主な作品に『時をかける少女』、『旅のラゴス』、『富豪刑事』、『家族八景』など。

 

 

──最後に、映画の公開を楽しみにしているみなさんへメッセージをお願いします。

渡辺:原作を読んで楽しみにしている方もいらっしゃると思いますし、初めての方もいらっしゃると思います。どんな方でも110分間、不思議な世界観に浸れる作品です。

原作を知っている方には、“生身の人間が演じることの凄さ”を改めて感じていただけるんじゃないかなと。初めての方には、いわゆるわかりやすい起承転結があるような話とは違うのですが、「こういう物語の流れもあるんだ」と、楽しんでいただけると嬉しいです。

 
[インタビュー/宋 莉淑(ソン・リスク) 編集/小川いなり]

 

『岸辺露伴は動かない 懺悔室』作品情報

5月23日(金) ロードショー

岸辺露伴は動かない 懺悔室

あらすじ

漫画家・岸辺露伴はヴェネツィアの教会で、仮面を被った男の恐ろしい懺悔を聞く。それは誤って浮浪者を殺したことでかけられた「幸せの絶頂の時に“絶望”を味わう」呪いの告白だった。幸福から必死に逃れようと生きてきた男は、ある日無邪気に遊ぶ娘を見て「心からの幸せ」を感じてしまう。その瞬間、死んだ筈の浮浪者が現れ、ポップコーンを使った試練に挑まされる。
「ポップコーンを投げて3回続けて口でキャッチできたら俺の呪いは消える。しかし失敗したら最大の絶望を受け入れろ…」。奇妙な告白にのめりこむ露伴は、相手を本にして人の記憶や体験を読むことができる特殊能力を使ってしまう…。やがて自身にも「幸福になる呪い」が襲いかかっている事に気付く。

キャスト

岸辺露伴:高橋一生
泉京香:飯豊まりえ
田宮:井浦新
マリア:玉城ティナ
ソトバ:戸次重幸
水尾:大東駿介

(C) 2025「岸辺露伴は動かない 懺悔室」製作委員会 (C) LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社

 

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