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『シンカリオン』の“進化”の歴史に迫る! プロデューサーSP鼎談

プロデューサー陣と振り返る『シンカリオン』プロジェクトの“進化”の歴史──鈴木寿広さん(ジェイアール東日本企画)×横山拓也さん(タカラトミー)×根岸智也さん(小学館集英社プロダクション)1万字インタビュー【シリーズ10周年記念】

 

決定‼ 新規IPの打ち出し方

──『シンカリオン』という新規IPを広げていくにあたって、三社間でどのような方針で進めていましたか?

鈴木:まずは三社それぞれができることを持ち寄って展開していく、という方針でした。タカラトミーさんは、玩具周りはもちろん、その流通先と調整して告知の場所を作ったり、小学館集英社プロダクションさんの番組を使ったり。ジェイアール東日本企画は交通媒体を活用した展開を行うといったものです。当時は潤沢な予算があったわけではありませんから。

横山:最初に決めた重要な方針の一つが「いきなりTVアニメ化はしない」ということでした。最初からアニメありきで立ち上げると、すごく大きな計画や予算が必要になってしまうので、計画通りにいかなかった時にIPを継続できない可能性が出てきてしまうんです。ただ、『シンカリオン』は新幹線というものすごく強いモチーフがあるので、アニメが無くても育てていける確信みたいなものはありましたね。

 

 
鈴木:2015年頃って、いきなり大きくプロジェクトを立ち上げて展開するアニメ企画が多かったんです。何とは言わないですけど(笑)。あえてそれらとは逆のアプローチをやろうとしました。

──プロジェクト発表後、子どもたちからはどんな反応がありましたか?

横山:玩具に関して言えば、非常に好調な売れ行きでした。あと、タカラトミーの公式YouTubeチャンネルは子どもたちが視聴者の中心なんですが、中でも『シンカリオン』の関連動画がすごく高い再生数だったので、ターゲット層にきちんと届いているという手応えを感じていました。

根岸:当時、弊社のYouTubeチャンネルにも動画をアップしていましたが、アクセスデータからターゲットとしている子どもたちの親層が見てくれているのはわかりましたね。

それと小学館グループ内での反応も大きくて「シンカリオンの情報を掲載したい」といった声が編集部から届き始めていました。広く子どもたちに受け入れられている企画でなければ、雑誌というページ数が限られた媒体の特性上なかなか載せたいとはならないと思うので、そういった声が届くことにも反響の大きさを感じていたように思います。

鈴木:イベントでの反応も大きかったですね。2015年3月の北陸新幹線開業に合わせて『新幹線変形ロボ シンカリオン』としてプロジェクトを発表したんです。当然、こちらも新幹線に関係した話題なので、新聞に取り上げられるじゃないですか。新聞によっては北陸新幹線のことよりも大きく扱われることもありました。

世の中の話題に乗っかる形で発表しましたが、逆にその話題を凌駕するような場面があったのも一種の反響かもしれません。

 

究明‼ なぜシンカリオンは土偶と戦ったのか?

──そういった内外の反響に繋がった施策の一つにプロモーション用アニメ(以下、PV)があるかと思います。このPVが制作された段階で『シンカリオン』の設定は、どの程度まで固まっていましたか?

 

 
鈴木:主要キャラクター3人や必殺技の設定とか、あのPVが作れる必要最低限くらいですね。

根岸:もうどこにあるかもわかりませんが「こんなストーリーです」という資料を書いた記憶があるので、逆に言えばそれくらいしか設定はなかったと思います。将来こんな話をやりたいから、裏側ではこういった設定があると思って、映像として齟齬がないように作ってください、というための資料でした。

実は先にPVで土偶モチーフの敵を作ってしまったので、後付けで「彼らは何者で、なぜあの姿なのか?」といった理由を考えないといけなかったんです。その設定の隙間を埋めようとしていた覚えがあるな。

──そもそも、どうして敵のモチーフを「土偶」にしたんですか?

横山:自分の記憶だと「新幹線は日本の技術の最高峰」という点から「日本」がキーワードにあって、そこから連想して「土偶」が敵になったと思います。でも、これは後付けの理由だったのかもしれないな……。

根岸:当時はデザイナーのセンスに頼る部分も多かったので、デザイナー側から提案されたものを了承した流れもあったと思いますね。厳密なストーリーや設定からプロジェクトが始まっていなかったので、それで後から理由付けや設定を繋ぎ合わせていく作業があったような気もします。

鈴木:敵の設定として「日本全国どこにでも出現する」という条件もあったと思いますよ。

 

 
根岸:当時は「数多く登場させられる」とか「汎用性の高さ」みたいなことが求められていたのかもしれません。武器で切るなら一体で良いけど、グランクロスを撃ったら複数の敵が連続して爆発してほしいから、そういう意味で複数存在していいようなタイプの敵が必要でした。

でも、なぜ土偶なのかは思い出せない(笑)。この謎を解明するには、当時のデザイン担当者や初期の映像作りに関わったメンバーとかも必要ですね。

横山:個人的には敵として「埴輪」は絶対に嫌だったんです。自分の中で埴輪は良い奴というイメージがあったので、それで土偶なら敵でも良いかなと。

根岸:モチーフになっている遮光器土偶って宇宙人を模していると言われることもあるので、敵キャラクターっぽいイメージが上手く合わさったのかもしれないですね。

 

熱唱‼ 「チェンジ!シンカリオン」をやまちゃんが歌った理由

──この時期に印象的なこととして、山寺宏一さんが歌う「チェンジ!シンカリオン」という楽曲は外せません。どういった経緯で山寺さんが歌うことになったのでしょうか?

 

 
根岸:僕がやまちゃん(山寺宏一さん)と仕事をしたいと思ったんです(笑)。

横山:ちょうど山寺さんが『おはスタ』を卒業したタイミングだっけ?

根岸:僕は昔『おはスタ』のスタッフだったんですけれど、当時の「おはスタ」のメインMCが山寺さんだったんです。その山寺さんが『おはスタ』を卒業される際にパーティーみたいなものを開いたんですが、山寺さんは少し会でやることもあったので控室をとっていたんです。そこで山寺さんと二人でお話ししている時に「そうだ!この件をお願いしよう」と思い立ったんです。

「いよいよ『おはスタ』を卒業されるので、これを機に何かご一緒できませんか?非常に力を入れている新しいIPなので、ぜひ山寺さんにお願いしたいです」とお話ししたところ快諾いただいたという流れです。

山寺さんは長年『おはスタ』という子ども番組の顔だったので、子どもたちにも非常によく知られた存在でした。ディズニー作品などの吹き替えでも活躍されていますが、歌もとても上手い方なので、正に今回の企画にうってつけだと考えたんです。

 

 

──この楽曲制作に際して、作曲家の井上裕治さんにはどんなオーダーを出しましたか?

根岸:実は井上さんの楽曲以外にも候補があって、それをプロジェクトの皆さんに聴いてもらったんです。その中から井上さんの楽曲が選ばれたという流れです。

──所謂コンペ形式だったんですね。

根岸:だから当初はワンコーラスしかなかったんです。でも、やっぱりツーコーラスあった方が良いという話が出て、急遽自分で歌詞の案を書き足すことになって。別作品のアフレコの合間にスタジオの個室に籠って、一番の歌詞を二番にコピペしながら「ここをこう変えれば良いんじゃないか」みたいにやっていましたね。

それくらいタイトなスケジュールだったから、山寺さんのレコーディング日だけが先に決まっていたのかもしれません。皆さんから「曲のイメージが全然違う」といった反応がきたらヤバいと焦りながらプレゼンをした記憶があります。

鈴木:スムーズにこの曲に決まったと思いましたけどね。

横山:すごい短期間で進めた記憶があるけど良い曲だったよね。

根岸:井上さんの曲が素晴らしかったから一発で決まったんだと思います。

──もうすぐYouTubeでの再生回数が2000万回にいきそうなくらい、ファンの間でも人気の楽曲になっています(※再生回数は2025年4月時点)。

根岸:ちなみに「シンカ シンカ シンカリオン」というバックコーラスが入っていますが、あそこはレコーディングに立ち会った3人くらいのプロジェクトメンバーでコーラスしているんです。

──アニメのアフレコでスタッフがガヤをやる話は聞いたことがありますが、コーラスで参加というのは珍しいですね。

根岸:コーラスに厚みが欲しくて、でも山寺さんとは違う声色の方が良いだろうということで、時間も限られていたので自分たちでコーラスをやって完成させた記憶があります。

 

(C)プロジェクト シンカリオン・JR-HECWK/超進化研究所・TBS
(C)プロジェクト シンカリオン・JR-HECWK/超進化研究所Z・TX
(C)プロジェクト シンカリオン・JR-HECWK/ERDA・TX
(C)Project E5
(C)カラー
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