
百合子は“一応”常識人? 黒ちゃんとのラブラブ生活の中、よぎる一抹の不安ーー『忍者と殺し屋のふたりぐらし』百合子役・大久保瑠美さんインタビュー
花澤さん&喜多村さんと並んでシャフト作品のメインキャラクターを演じる感動
――喜多村さん演じる黒の印象はいかがでしょうか?
大久保:あまりにもダメな人なのですが、その具合は実は原作よりもアニメの方がマイルドなんです。原作はもうちょっと「おお……やってんな……」みたいな。女性だとしても「この人は自分が一緒にいないといけないのでは」という人に惹かれる人はいると思います。黒ちゃんはもうそういうタイプなのかもしれませんね。
百合子はそんなダメな黒ちゃんが「パチンコに行かない」「働く」と誓っておきながらも約束を破ってしまうのに、お小遣いを渡して面倒を見ている。その時点で恋愛に関しては、物事を深く考えていないし、若干相手に依存してしまうような性質なのかなって。
黒ちゃんは凄くカッコいいし優しいけれど、百合子はおそらくそんな彼女のダメなところにハートを刺激されているんだろうなっていうのは感じています。悪い女ですよ、黒ちゃんは……!!
――第1話冒頭に関しても、自分ひとりではなくさとこや仲間たちを連れて脱走をするという一面がありますし、結構打算的というか。
大久保:そうなんですよ。黒ちゃんは最初から登場していてさとこの面倒を見たり、意外と心配していたりするので優しいかと思いきや、過去に付き合っていた女の子の名前をあっさり間違えたりする。おそらく黒ちゃんは、情は滅茶苦茶あるんだけど、いざ自分や自分に近しい人のことになったら……。
百合子のことは大事にしてくれていますし、私は絶対に無いと思っています。でも、もし今後、百合子と何かがあって遺恨を残さずお別れしたとしたら、きっとそういう扱いになってしまうんだろうなっていう一抹の不安を一瞬覚えました(笑)。
少なくとも原作やアニメでのラブラブっぷりを見ていたら、もうふたりはゴールインでしょう。だけど、一緒に痴話喧嘩をいっぱいするシーンは演じていて楽しかったので、また喧嘩はしてほしいなって思っています。
――さとこやこのはに関しては百合子との生活に支障をきたすような原因になった場合、連絡を断ったりはしそうな予感があります。
大久保:黒ちゃんの中の上下関係では、おそらくさとこよりも百合子が上だろうなと。さとこが困っていてそれが百合子にも影響するなら動いてくれるだろうけれど、いざどちらか選ばなきゃならないとなったら、きっと百合子を選ぶと思います。
そういうところもきっと百合子は好きなんですよ。ダメンズならぬダメウーマンに引っ掛かってしまったのかなと思いますが、そういうところも魅力的なので。だから黒ちゃんを好きになる気持ちはわかりますし、私も黒ちゃんは好きですね。
――喜多村さんの声が付いた黒の印象はいかがでしょうか?
大久保:私の中で喜多村さんは、可愛い女の子からハキハキとしたしっかり者の女性まで、様々なお芝居をされる方だという印象があります。なので、黒ちゃんみたいなカッコいいけどダメな一面もある女性はどんなお芝居でくるのかなと思っていたのですが、もう聴いた瞬間にキュンとしました!
新人の頃、『にんころ』と同じシャフトさん制作の作品に番組レギュラーのモブキャラクター役で出演していたことがあって、その作品では喜多村さんがメインキャラクターのひとりを演じていて。当時の私はモブでしたが、今は喜多村さんが演じるキャラクターの恋人役を演じられることになったので、本当に光栄だなという感慨もありました。
そういうところもあって個人的にも凄く嬉しかったですし、役としても素直に「黒ちゃんいいなぁ、好きだなぁ」ってなりました。競馬新聞を楽しんじゃう、「そういうところは『しょうがないなぁ』って思いながら、でもカッコいいし良いか!」と思わせてくれる。そんな可愛さとカッコよさを兼ね備えたお芝居が素敵だなって思います!
――新人の頃からというと、かなり前から喜多村さんの背中を見ていたんですね。
大久保:昔からアニメや漫画が大好きだったのですが、喜多村さんはそんな私が子供の頃から見ている作品に出演されていたんです。花澤さんもそうなのですが、実は私もおふたりと年齢的にはそこまで変わらないんです。だけど芸歴はかなり上なので、そういう意味では花澤さんよりお姉さんの役を演じるのも個人的には衝撃的で。
――花澤さんと&喜多村さんはかなり前から第一線で活躍し続けていらっしゃいますものね。
大久保:お仕事として考えると、そんなおふたりと並んだ立ち位置に自分がいることに感動があります。大先輩である喜多村さんが演じる黒の恋人役であり、花澤さん演じるこのはよりもお姉さんの役を、芸歴を重ねたことで自分が演じられる感動はやっぱり強かったです!
また、百合子はある意味、この作品のバランサー的なポジションだと思っています。ぶっ飛んでいるさとことこのは、そしてマリンもどちらかというとそのタイプ。黒ちゃんもまあダメな方となると、さとこの柔らかさだけではなくどこかに別の柔らかさが無いとバランスが取れなくなる。その役割を担うのが百合子だと思うので、選んでいただけて光栄でした。
――喜多村さん演じる黒と掛け合う上でどんなことを意識されていましたか?
大久保:喜多村さんの返しが本当に的確で、とても演じやすかったんです。割と私が先導してアドリブで喧嘩するようなシーンを演じることがあったのですが、そういう時は大体黒ちゃんが昔の女と絡んでいたり、だらしなかったりするので、「もういいよ......」みたいないじける感じのお芝居をすると本当に綺麗に返して下さるんです。
事前に打ち合わせることもありますが、そのシーンは当初アドリブをやるかわからなかったので、とりあえずテストの時に入れてみようかという感じになりまして。元々ある台詞の流れでもう少し必要だなと思って入れたアドリブに対して、「そんなこと言うなよ、百合子……」みたいにしっかり返してくれたので、ふたりの掛け合いはスムーズだったと思います。
後は第4話で家出してきたさとこがふたりの家に泊まることになりましたが、朝のイチャイチャシーンとかも、本当に想像通りの甘くてカッコいい黒ちゃんできてくれたので、私も「いやんダメダメ」みたいに存分に遊べました(笑)。
遊ばせてくれるって本当にありがたいことなんです。役者としても、こういうお芝居で遊べる時が一番楽しいなって思いますし。でもそれは自分ひとりの台詞なら良くても、相手がいる台詞だと出方によってはあまり遊びを入れる余地がなかったりするんですよね。だけどそれをしっかり作ってくれるお芝居だったので、なんなら私の遊び心もくすぐられました。喜多村さんが黒ちゃんで良かったなって思いますし、掛け合いができて本当に光栄でした。
――カッコいいんだけど、ふとした時にダメ男みたいな一面を出す感じが本当に絶妙でしたね。
大久保:パチンコ行って競馬新聞読んでとなかなかのダメ人間っぷりですが、原作はもっとダメなところがあったり、アニメにはない話があったりするんです。どちらも同じ『にんころ』ではあるのですが、アニメはアニメで多分この見せ方が面白いと思ってハンバーガー先生や、宮本幸裕監督ほかスタッフさんたちが制作に打ち込んでいるんだろうなって。
でもその基盤になっている原作にも、そこにしかないお話があるので、アニメを見たから、原作を読んだから、片方だけで良いのではなくて、両方をチェックすることでこの作品はより面白いって思えると思います。個人的にはどっちもチェックしてほしいですね。
















































