
百合子は“一応”常識人? 黒ちゃんとのラブラブ生活の中、よぎる一抹の不安ーー『忍者と殺し屋のふたりぐらし』百合子役・大久保瑠美さんインタビュー
私がタイトルを考えるなら「可愛さとグロさのふたり暮らし」
――印象に残っているシーンもお教えください。
大久保:第1話を初めて見た時は、オープニングとエンディングが可愛いなと思いました。オープニングに若干血痕の表現があるので匂わせられてはいるのですが、そんなバイオレンスなことが起きるとは思えないぐらい可愛かったなと。
あとは視聴者の方はみんな感じていると思いますが、とても可愛らしいカラーリングと作品の中にあるシャフト感ですね。私もそうなのですが、アニメ好きにとってはシャフトさんの作品からでしか得られない栄養があるので、それを盛り込んだ上でアニメオリジナルの刺客がやってきたりするのも印象に残りました。
原作のハンバーガー先生が脚本にしっかり関わっていらっしゃるみたいなので、その上で原作と違うところが多くなったのだと思いますが、最初は戸惑ったくらいです。だけど先生が入ってくださっているのなら、もっとこうした方が面白くなると考えてのことなので、今では漫画では表現できないアニメならではの良さとして入れているのかなと思っています。
みちるがブワッと上から降ってくるシーンがあるんですがアクションシーンが面白いしカッコいいし。「あれ、先輩!?」と言いながら横を向いているときに、ほっぺがぷにぷにと動くのですが、あそこもすごく細かくて好きでした。
第4話だと、黒ちゃんの元恋人のアヤカが襲撃してくるシーンでしょうか。だから百合子を亡きものにしようとしてくるのですが、あそこがひと段落したところで後ろで小さく「元カノ? 元カノなの!?」とアドリブで呟いていて。あれはアドリブで何か入れてほしいと言われて、百合子の恋愛気質なところを出すべく私が考えて入れたものなのですが、採用されていたのは嬉しかったですね!
――元カノを気にするのは、やはりそういう気質を感じますね。
大久保:だけど、アドリブだから黒ちゃんの返事はないんです。そこがふたりの関係性が見え隠れしているところなんですよ。黒ちゃんは昔の彼女のことを気にも留めていないけれど、百合子の方は気になってしょうがない。そこの対比が見えるのでちょっと面白いかなと思ったんです。結構薄く入っているアドリブなので、アヤカの襲撃シーンの後はしっかりチェックしてほしいなと思います。
――アヤカ以外にも忍者の里の追手たちについて、印象に残っているキャラクターはいますか?
大久保:どの子もキャラクターデザインが滅茶苦茶可愛いですよね。本当にみんなあっさり死んでしまいますが、演じるキャストもM・A・Oちゃん、羊宮妃那ちゃん、石見舞菜香ちゃんととにかく豪華です。この後も豪華な面々が続いていきます!
――また、先ほどシャフト感という話がありましたが、もう第1話の冒頭からシャフトさんだとわかるような映像に仕上がっていましたよね。
大久保:原作のさとこが里を抜けるシーンは、回想で一致団結して「おー!」みたいなシーンがあるのですが、実はそんなにハッキリとは描かれていません。私も第1話冒頭を初めて見た時は、見る作品を間違えたのかと一瞬思いましたが、それが凄く良かったですよね。
ああいう作り方からも、監督やシャフトのみなさんの才能というか、アニメーションに対するこだわりみたいなものを感じました。百合子は第3話の後半からの登場になりましたが、そんな第3話ではさとこがアルバイトするシーンが想像していた100倍はグロくて。
『にんころ』はそんな可愛さとグロさがずっと共存しているので、もし私がタイトルを考えるなら『可愛さとグロさのふたり暮らし』にします(笑)。それくらい手を抜かないというか、きっちり表現するんだなというのが面白かったです。
――確かに、誰かの遺体はいつものこのはとのお仕事なら葉っぱに変えてしまうものなので、あそこのアルバイトのシーンで中々えげつない描かれ方をしているのは印象に残りますね。さとこのように、じっと見つめられているような気がしてきそうです。
大久保:アニメはこのまま来たのかと驚きました。あとは個人的に、百合子が一貫してこのはを「殺し屋ちゃん」と読んでいるところがちょっと面白いなと。少なくともアニメではずっとそうなっているのですが、多分ちょっと遊んでいるんです。私の印象ではあるのですが、このはのことをほんのちょっとからかっているのって、百合子くらいなんですよね。
台詞についても言い回しを気にしていたところが結構あって、このはから「あなたのことはどうでもいい」みたいに言われた後に、「えっ、私はじゃあどうなってもいいってこと?」「こわーい」とおちょくってみたり、第3話でも「殺し屋ジョーク?」といったことを本気で言っていましたから。
このはに対しては嫌味にはならないけれど、おちょくるのを忘れないというか。そこに大人の余裕が入ってくる方がいいなと考えてこのあたりの台詞は言っていました。そういう細かいところで、ちょっと大人の余裕を醸し出しているところを見てもらえたらなと。
――メインの4人の中だと一番大人びているというか、ちゃんとした仕事をしてヒモ状態の黒を養って一番しっかりしているというのは間違いなさそうですしね。
大久保:そうなんです。本当にいい女ではあるんです。「それって私には死んでほしいってこと? こわーい!」って言うところも、自分の中では本気で引いている感じではなく、これからも仲良くできる関係値を保つラインで留めています。
このあたりはオーディション原稿にもあった覚えがあるので、最初から常にそのラインを意識しながら演じていました。だから、この役に決まった時は正解だったのだと自信を持てました。
――百合子役はオーディションで決まったんですね。
大久保:この作品は黒ちゃんと吉田さんと百合子の3人は、完全指名のみのオーディションでした。オーディションの形式には結構色々なパターンがありまして、誰でも受けて良いものもあれば、他のキャラクターも受けて良いけれどある人は特定の役を必ず受けてくださいと指定されるタイプもあって。
百合子は完全指名で受けてくださいと依頼がきたので、それが自分としても嬉しかったです。穏やかな大人の女性はこれまでも演じることがありましたが、私にこの役が合うのではないかと誰かが思ってくれて、指名を出してくれるというのは本当にありがたいことです。それがピタリとハマって選ばれたのも嬉しかったですし、アフレコはもう終わっているのですが現場も本当に楽しくて……。
――そんなアフレコ現場の雰囲気もお聞かせ願えればと。
大久保:収録は少人数で進みました。どんなに多くても10人行くか行かないかくらいで、本当に少ない時は2人〜4人くらいの時も多かったです。追手の忍者たちはすぐ死んでしまうので、Aパートでもういなくなっちゃう人も多かった。
でもメインキャストは凄く仲が良かったので、一緒にバーベキューに行ったりアフレコ終わりに何度かご飯に行ったりしています。芸歴が長い先輩の花澤さんと喜多村さんがいて、その下の世代の私と芹澤優ちゃんがいて、フレッシュな若手の三川華月ちゃんがいるみたいな感じで、そのバランスも結構よかったですね。
華月ちゃんは本当にさとこそのままというか、放つオーラが癒しというか、ほんわかしていて可愛い。思わず面倒を見たくなる愛嬌があって、とても話しやすい子だなという印象でした。花澤さんは周りを凄く気にしてくれていて、「ご飯行く?」って自分から誘ってくださったり。そういう交流がある現場ってあんまりなかったりするんです。
やっぱりみんな忙しいから、次の予定があることの方が圧倒的に多くて、打ち上げがあったら行くみたいなパターンが多いんですよ。けれど『にんころ』の現場はアフレコ終わりのご飯やスケジュールの合うメンバーでお花見に行ってバーベキューをしたり、その後にもう一回音響打ち上げというスタッフさんを交えてのお食事会があったりと、交流が多かったので楽しかったです。
――そこまで雰囲気が良いとアフレコ現場でも何か印象に残ることがありそうですが……!?
大久保:おそらくXとかに上がっているのですが、華月ちゃんが謎の服を着て収録に来てくれたことですね。第1話の時は忍者の服だったそうなのですが、それを聞いて凄く興味が湧いちゃったんです。
後、アフレコ現場には椅子の後ろに物を置けるスペースがあるのですが、そこに華月ちゃんが手裏剣とクナイを置いていることに私は途中まで気付けませんでした……! 花澤さんに言われて見てみたらその日はなくて、「今日はないの?」って尋ねたら「ごめんなさい、次は必ず持っていきます!」と言ってくれたり。
他には、第2話に登場した“ユニコーン”と書いてある謎のトレーナーを作ってきてたこともありましたね。バーベキューの日にもきていました。
普段はアフレコ現場のエピソードを聞かれても、仕事場ですからそんなに事件があることはないと答えるのですが、『にんころ』の現場は事件しかなくて面白かったですね。「多分アフレコ現場で面白いことありましたか?」と尋ねたら、全員これを答えるんじゃないかなと思うくらいです。
華月ちゃんは、そういう話のきっかけになってくれる素敵な子だなって思っています。彼女が主役で中心になっていたことが、より仲良くなれた理由なんじゃないかなと思います。
















































