
『黒執事 -緑の魔女編-』声優・駒田航がドイツ語指導・監修としての関わりを語る|「役者でありながら、日本語だけでなく、英語とドイツ語の意味を理解し話せるからこそ、演出の方向性も伝えられるのだと思います」
何度リテイクを出しても雰囲気が悪くならない楽しい現場
──セバスチャンは、いろんな言語を操れると思うのですが、小野大輔さんのドイツ語はどうでしたか?
駒田:そもそもセバスチャンって、ドイツでもよく見る名前で、ヨーロッパ系の名前だと思うんです。そして、彼はこれまでもいろんな言語を話していて、どんな国の標準語もマスターしているだろうという前提があったので、一番ドイツ語っぽく聞かせなきゃいけないなと思いました。ただ、心配とは裏腹に小野さんの声自体が、震える、ディープな声をされていて、ドイツ語向きの音ではあったんです。すごく軽やかで気品のある音声ですけど、ピシッとハマったときの芯のある太い響きのニュアンスがとてもきれいだったので、いつも絶賛していました。
──セバスチャンは、どこか気品を感じました。ドイツ語はもっと強弱がある印象だったんですけど、それでも優雅だったのは、さすが執事だなと。
駒田:もちろん、さらさら〜っといかないように、アクセントを強くしてほしいところなどはお伝えしていました。逆に、ヴォルフラム役の小林親弘さんやヒルデ・ディックハウト役の渡辺明乃さんは、強めに張り上げる、怒鳴る系のドイツ語をやってもらっていて、それがドイツ語らしいドイツ語の張りになっていたと思います。逆にジークリンデ・サリヴァン役の釘宮理恵さんのかわいい声というのが、ドイツ語としては、一番難しかったです。
──ヴォルフラムとヒルデは軍人でしたからね。サリヴァンが、第1話で「この森の領主だ」と言うところは、ドイツ語でしゃべったあと、同じセリフが日本語になるというシーンでした。声質は変わらなくても、ドイツ語と日本語の違いは出ていたと思います。
駒田:ドイツ語シーンのジャッジは、僕に委ねられていたところがあって、釘宮さんだけではないんですけど、申し訳ないくらい「もう1回行きましょう」とリテイクをさせていただいたんです。本当に再現しにくい言葉に関しては、僕が言ったことをそのまま言う、オウム返し作戦で乗り切った場面もありました。皆さん耳が良いので、オウム返しをしてもらうと、断然言いやすそうで、スムーズにドイツ語の感じになっていくんです。
もちろん、お芝居としては、流れで録ったほうがやりやすいと思うので、オウム返しは最終手段だったんですけど。ただ、何度リテイクをお願いしても、「何でだよ」みたいな雰囲気には全然ならず、「ありがとう、もう1回行こう!」みたいな感じで先輩方が盛り上げてくださったので、本当に良い現場だなと思いました。
特に小林さんはすごく熱心に「もう1回、もう1回言ってもらっていい?」と聞いてくださいました。当日は一生懸命みんなで語学の勉強をしている学校みたいでした。本当に皆さん、勤勉だし、再現しようという意欲が強くて、流石先輩、素敵な方々だなぁと密かに感動していました。
──ちなみに、梶裕貴さんが演じているフィニアンも、ドイツの軍事施設にいたという過去が明らかになったので、ドイツ語はしゃべれる設定でしたよね。
駒田:梶さんが演じるフィニも声が高いので、ドイツ語感は薄まってしまいかねないんです。でも、すごく練習をしてきてくださったので、OKも早かったです。
──シエルはドイツ語を勉強しているという状況でしたが、坂本真綾さんはいかがでしたか?
駒田:シエルは頭が良いし、キャラとしても何でもできてしまうから、このくらいはいけちゃうかもなというところですり合わせていきました。で、その塩梅もお上手なんです。この単語で、悔しいというニュアンスが入っているので、悔しさを入れてくださいと伝えると、ご自分のニュアンスで入れてくださるので、素晴らしかったです。最終的にお芝居にニュアンスを入れるのは、僕ではなく演じているご本人なので、それがすごくお見事でした。
──アニメ『黒執事 -緑の魔女編-』をご覧になって、いかがでしたか?
駒田:もともとファンタジー作品が好きなので、途中で、こういう裏切り行為がある、などのどんでん返し含めて、原作で感じていた面白さが、アニメでもちゃんと再現されている!と思いました。外国の方に評価される理由って、この絶妙なファンタジー感と、日本のアニメのクール感なんでしょうね。
あと、セバスチャン含めて、キャラクターがみんな濃くないですか? セバスチャンを超える燕尾服のキャラはなかなかいないと思っています(笑)。長い歴史があるこういった作品に、いろんな役で参加させていただけて光栄でした。
──本当に、いろんな役で出られていましたよね(笑)。
駒田:はい。結果的にいろんな話数で様々な役で関われました。でもこの現場、日本語部分のアフレコがすごく早く終わるんですよ。これが長くやっている座組なんだなぁと感激していました。通常のアフレコがすぐ終わって、残りの時間でドイツ語をクリアするぞ!みたいな感じでした。
──役だけでなく、監修という立場で作品を終えた感想をお願いします。
駒田:とても楽しかったです。作品として良くなればいいなという気持ちがあったので、『黒執事 -緑の魔女編-』で、ドイツが舞台だったために、外国語のシーンで芝居がやりにくいだとか、全体の演者さんの勢いが落ちてしまったらイヤだなと思っていたんです。また世界中にいる視聴者の皆さんにも違和感なく楽しんでもらいたいと強く思いました。だからガイドもすごく作り込んみましたし、ガイドを録っている段階でも、翻訳をしてくれた親友といっぱい連絡を取っていたんです。なので、ちゃんと2人で打ち上げをしました(笑)。
──ちなみに駒田さんは、よくドイツに行かれたりするのですか?
駒田:それが日本に帰国してから、全然ドイツに行けてないんですよ。行くなら時間をたっぷり使いたいと思っているし、そろそろ本当に行きたいなという気持ちがあります。翻訳をしてくれた親友もそうですけど、オランダにも親友がいるので、友達に会いに、今すぐにでも行きたいです。
[文・塚越淳一]
作品情報
あらすじ
名門貴族ファントムハイヴ家の執事セバスチャン・ミカエリスは
13歳の主人シエル・ファントムハイヴとともに
“女王の番犬”として裏社会の汚れ仕事を請け負っていた。
女王の命により、ドイツで起こる不可解な死亡事件の調査へ赴くセバスチャンとシエル。
足を踏み入れただけで呪い殺されるという”人狼(ヴェアヴォルフ)の森”について真相を探る二人に
おぞましい呪いが降り注ぐ――。
キャスト
(C)Yana Toboso/SQUARE ENIX,Project Black Butler


















































