映画
ゲームクリエイター・金子一馬が振り返る創作のルーツ【特別インタビュー】

ツイン・ピークス、ボニーM、バイオレンスジャック、トリッシュ・ゴフ……ゲームクリエイター・金子一馬さんに大好きな『仮面ライダー』の話を聞きにいったら、いつの間にか金子さんの創作のルーツを振り返ることになった1時間【特別インタビュー】

金子さんに影響を与えたファッション、音楽、映画

──金子さんのデザインを拝見していると特撮以外にもハイブランド的なファッションの要素も取り入れているように感じますが、ファッションからの影響もありますか?

金子:色気づいた頃からファッションにも興味を持ちました。荒木飛呂彦さんという漫画家さんがいらっしゃいますよね。僕が携わった『ペルソナ』では「ペルソナ」という守護霊みたいなものを使役して戦うんですが、それが荒木先生の『ジョジョの奇妙な冒険』のスタンドと概念が似ていると一部で言われたことがあるんです。

僕と荒木先生のデザインの感じも似ているところがありますけれど、2人ともリアルな感じの描き方が好きというだけでお互いにパクったりはしていなくて。

共通しているのはファッションのコレクションが好きという点なんです。お互いに洋服もデザイナーの作品も好きだから、それらが創作物に影響として出てしまうことが一致していたんです。

例えば『ジョジョの奇妙な冒険』の第5部にトリッシュ(トリッシュ・ウナ)というキャラクターが出てきますよね。『ペルソナ』にもトリッシュという名前のキャラクターが出ているんですが、それは何故というとトリッシュ・ゴフというモデルさんが関係しているんです。以前に荒木さんと対談をした際に「トリッシュ・ゴフって美人だよね」という話で盛り上がって、お互いのキャラクターの元ネタが一緒だったということもありました。

しかも荒木さんは洋楽がお好きじゃないですか。僕も洋楽が大好きなんです。洋楽のミュージックビデオなどを見ていると、面白いデザインの服とかも出てくるので、お互いそういった趣味嗜好が混ざり合って何かを創造しているのかなと思います。

──荒木先生の洋楽好きは有名ですが、金子さんはどんなジャンルを聴かれるんですか?

金子:すごく影響を受けたのは、多感な時期に聴いたボニーMやアラベスクとかですね。

──ディスコミュージックですか⁉

金子:ボニーMやアラベスクを聴いて衝撃を受けたのがきっかけで洋楽一辺倒になった感じです。ただ、友達はそういった洋楽を全く知らないってことが多いじゃないですか。学校で『ザ・ベストテン』の話になると、洋楽を知っている人なら「西城秀樹さんの『ヤングマン』はヴィレッジ・ピープルのカバーなんだよ」とか思うところを、それは言わずに話を合わせていましたね。

──金子さんの口からボニーMの名前が出るのは意外でした。「怪僧ラスプーチン」とか「サニー」とか良い曲が多いグループですよね。

金子:正にその「怪僧ラスプーチン」やモチーフになった「ラスプーチン」が好きで『デビルサマナー葛葉ライドウ』シリーズにラスプーチンを出したことに繋がっていくんです。若い頃は歌舞伎町のディスコにも行ったりしていたので、机に向かう勉強よりも、そういった方面の勉強の影響はありますね。

 

大好きな『ツイン・ピークス』へのオマージュ

──私は映画が好きだったので、歌舞伎町と言えば映画館の記憶が強いのですが、金子さんにとってはディスコだったんですね。

金子:映画も大好きですよ。しょっちゅう歌舞伎町でオールナイト上映をやっていたし、当時は今みたいに入れ替え制ではないから1回入ったらずっと見ていられたんです。混んでいたら立ち見だけでなく、床に座って見たりと凄い時代でしたよ。

僕はディスコにも行ったりしていたので、当時は『グリース』という映画を見に行っていました。劇中で『グリーズド・ライトニング』とか流れるじゃないですか。振り付けがあるんですけど、観客もみんなで歌いながら同じ振付をやっているんですよ。もちろん座りながらですが。

今で言うと『マインクラフト』の映画も海外ではそんな風に盛り上がっているらしいじゃないですか。応援上映みたいなもので、そういったことをやりたくて映画館に行く感じでした。


編集部注:『グリース』は1978年に公開されたジョン・トラボルタ主演のミュージカル映画。サウンドトラックは同年にアメリカで2番目に売れたアルバムであり、1979年に行われた第51回アカデミー賞には歌曲賞でノミネートされるなど楽曲人気も高い。


──金子さん好きな映画ジャンルも『グリース』のような作品ですか?

金子:SFとかも大好きですよ。どちらかと言うとタルコフスキー(アンドレイ・タルコフスキー)みたいな変わった映画が好きです。あとはデヴィッド・リンチも大好きなので『神魔狩りのツクヨミ』をプレイしていただくとわかると思いますが、残月などが出てくるボス戦前の赤いカーテンの部屋(休憩所の斬月の部屋)は『ツイン・ピークス』の赤い部屋のオマージュなんです。

しかもあの部屋の絨毯は『シャイニング』のオーバールック・ホテルのイメージです。子どもが三輪車で走るのをカメラが追いかけるシーンがあるじゃないですか。あの有名な絨毯の模様っぽくしてほしくてデザイナーに依頼したり、自分の大好きなものをゲームにも取り入れようとしています。

だから逆に驚いたのは、僕が他のメンバーに『ツイン・ピークス』を見せたら、そこで初めて休憩所の残月の部屋の元ネタが『ツイン・ピークス』だと気付いたんです。今の若い人たちは昔の作品をあまり見ていないんだなと感じましたね。

 

金子さんが神や悪魔に興味を持ったきっかけとは?

──たしかに自分の周囲でも新旧どちらの映画も見る人は少なくて、アニメ映画だけは見るという人が増えている印象はあります。

金子:でも昔のアニメは見ないでしょ。『伝説巨神イデオン(以下、イデオン)』とか『無敵超人ザンボット3(以下、ザンボット3)』みたいな名作を知らないというのは悲しいですよね。こっちは『ザンボット3』なんて最後を知っているから、もう主題歌を聴いただけで悲しくなってしまうのに。

──『ザンボット3』と言うと「人間爆弾」とかハードな設定と演出が多かった作品ですよね。

金子:戦う理由も、敵は銀河の安全を守るコンピューターで、宇宙にとって問題がある種族がいたら自動的に排除するために動いているんです。そのために地球へやって来て人類を抹殺しようとする設定なので、敵からしたら地球人が悪なんですよね。

そういった戦う理由や設定が徐々にわかってくるというお話でした。頑張ってもなかなか報われないって悲しいじゃないですか。例えば手塚治虫先生の『W3(ワンダー・スリー)』なども同じような雰囲気なので、ああいった作品はとても好きですね。

──ディスコミュージックや映画から『ザンボット3』まで、幅広いジャンルに興味がある金子さんが、神や悪魔に興味を持つようになったきっかけは何があったんですか?

金子:怪獣とか妖怪が好きだった延長ですね。子供の頃にジャガーバックスという出版社から「世界の妖怪図鑑」や「日本の妖怪図鑑」みたいな本が出ていて、それを怪獣の延長として捉えながら熱心に読んでいました。最初は「ガネーシャという神様がいるんだ」くらいに思いながら読んでいたのが、段々と世界の神や悪魔にも興味を持つようになって、聖書や神話の本を読み始めるうちにどんどん詳しくなっていきました。

まだ当時は『ムー』という雑誌はありませんでしたが「ピーリー・レイースの地図には南極大陸が描いてあるんだよ」といったオカルトや都市伝説みたいな話など、とにかく面白いものが好きだったのがきっかけですね。


編集部注:「ビーリー・レイースの地図」はオスマン帝国の海軍軍人ピーリー・レイースが作成した地図の1つ。当時の最新の地理知識を使った地図と言われているが、南極大陸らしきものが描かれていることからオカルトやオーパーツの文脈でも有名。


 

『日本書紀』を知っていると更に楽しめる『神魔狩りのツクヨミ』

──『神魔狩りのツクヨミ』では「十六夜」や「ツクヨミ(月詠)」など、これまで以上に和の神話的な要素が強いのには何か理由がありますか?

金子:作中に「金鵄(きんし)」というモチーフが出てくるんですが、これは『日本書紀』に登場した神武天皇による日本建国を導いた金色の鵄(とび)のことなんです。過去に僕が作った作品では『古事記』の流れのものもあったんですけれど、今作に関しては『日本書紀』ですね。詳しい方はそれがポイントになっているのがわかるかなと思います。

それ以外にも目玉と鳥居を組み合わせて秘密結社っぽくしていますが、日本で結社や国家を守護する裏の組織と言えば「八咫烏(やたがらす)」の都市伝説がありますよね。その八咫烏も「古事記」や「日本書紀」に出てくるカラスであり、導きの神だったりします。

永井豪先生の『バイオレンスジャック』という漫画も好きなんですけど、バイオレンスジャックを導くのが金色の鳥なんですよね。八咫烏って神話だと道案内をした鳥なんですが、今思い返すと『バイオレンスジャック』の金の鳥も八咫烏のイメージなのかなと思ったりもします。まあ、『バイオレンスジャック』は後半に進むと八咫烏とは全く違うものだということがわかるんですけど(笑)。

同じく永井豪先生の『デビルマン』の最後も、先ほどの終末論にも関連していて『ヨハネの黙示録』などの最後とよく似ているんですよね。永井先生もそういったものをご覧になっていたのか、お互いの創作物に似ているところがあるのは面白いですね。

──永井豪先生で神話だと『魔王ダンテ』もありましたよね。

金子:正に『魔王ダンテ』は先ほどの『ザンボット3』の話ではありませんが、一般的な神と悪魔の立場が逆転していて、主人公たちにとっては敵が「神」であり侵略者なんです。あの逆転の発想は凄く好きです。

──漫画だと永井豪先生の作品が好きなんですか?

金子:子供の時に色々な漫画を読んでいた中で、永井豪先生の作品には非常にショックを受けましたね。『デビルマン』に関しては先にアニメの方を見ていたんですけど、いとこのお姉さんが原作を勧めてきたので読んでみたら、テレビとはまるで違う衝撃の展開が待っているではないですか。「嘘でしょ?」と衝撃を受けて。小学三年生くらいだったと思いますが、それ以降は漫画の読み方も変わっていきました。

──永井豪先生やその少し後の世代だと、荻野真先生の『孔雀王』や夢枕獏先生の『魔獣狩り』シリーズのようなSFと神話が入り混じった名作が多い印象です。金子さんも含めて世代的な何かがあるのでしょうか?

金子:平井和正先生の『幻魔大戦』や『ウルフガイ』シリーズとか、現実世界と魔界などの異世界がうまく合わさったような作品はたくさんありましたよね。自分も現実世界に少し生きづらさみたいなものを感じていて非日常に少し憧れていたので、そういったことを考える方が多かったのかもしれません。

僕はジョージ・A・ロメロ監督の映画『ゾンビ』が大好きなんですけど、現実ではあまり許されないことも相手がゾンビだったら大丈夫じゃないですか。そういった世界観にしたくて『真・女神転生』などを作ったんです。

『デジタル・デビル物語 女神転生II』というゲームも、シェルターから物語が始まるのは同じジョージ・A・ロメロ監督の映画『死霊のえじき』からインスピレーションを受けています。

──私も『ゾンビ』は大好きで何度も見返していますが、ダリオ・アルジェント版もロメロ版とは別の魅力があってどちらも良いんですよね。

金子:アルジェント版と言うとゴブリンの音楽ですよね。そうすると『サスペリア』などもお好きですか?

──あとは『フェノミナ』とかも好きです。

金子:『フェノミナ』は良いですよね、ジェニファー・コネリーが蛆のプールに落とされるところとか。(ラジオの出演時間が迫っていたため)映画だけで1時間は話せますが、また別な機会に話したいですね。

──このインタビューだけでも『神魔狩りのツクヨミ』は様々な引き出しのある作品だと感じましたが、最後にアニメイトタイムズの読者にメッセージをお願いします。

金子:アニメや漫画、特撮などが好きな読者さんが読んでいると思いますが、今回の『神魔狩りのツクヨミ』は過去の様々な作品の影響を受けているゲームなので、そういったところを見つける楽しみもあるかなと思います。是非そのようにして楽しんでいただけたら嬉しいです。

『神魔狩りのツクヨミ』 作品情報

◆ゲーム名:神魔狩りのツクヨミ(じんまがりのつくよみ)
◆ジャンル:カード創造ローグライク
◆対応端末:iOS、Android、PC(Steam)
◆対応言語:日本語、英語、中国語(繁体字・簡体字)
◆価格:アイテム課金制(基本プレイ無料)
◆ストアページ
>>App Store
>>GooglePlay
>>Steam(PC)
>>公式サイト
 
[企画・記事・写真/岩崎航太]

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