
『こえかぶ 朗読で楽しむ歌舞伎〜梅と松と桜〜篇』稽古レポート&梅王丸役の野島健児さん、松王丸役の浪川大輔さん、桜丸役の仲村宗悟さんの座談会インタビューの模様をお届け!
声優が歌舞伎の名作を朗読したり、アニメの名作の登場人物が歌舞伎を演じるというパラレルワールドにアレンジした朗読などで好評の企画『こえかぶ』の新公演『こえかぶ 朗読で楽しむ歌舞伎〜梅と松と桜〜篇』が8月9日から11日まで東京・三越劇場にて公演が行われます。
今回の公演では『仮名手本忠臣蔵』『義経千本桜』と並ぶ歌舞伎の三大名作の一つ、『菅原伝授手習鑑』をベースに、菅原道真が失脚した事件に翻弄される三兄弟のドラマが描かれます。
3人の声優が7役から9役を演じ、出演声優も日替わりの本公演。本稿では稽古場レポートに加え、8月9日に出演する梅王丸役ほかを演じる野島健児さん、松王丸役ほかの浪川大輔さん、桜丸役ほかの仲村宗悟さんによる稽古後座談会の模様をお届けします。
稽古レポート
野島さん、浪川さん、仲村さんにとって初めての稽古となったこの日。稽古場は演者が後ろに立つ紫の格子の柄が施された演台に加え、シーン名が筆文字で書かれためくりが設置され、正面には脚本・演出の岡本貴也さんと演出助手の方や音響プランナーの方が座ります。
更に長い木の棒で板を叩いて効果音を出し、物音や演者の演技を強調する附け打ち(つけうち)の方も正座をしてスタンバイするなか、稽古がスタート。
冷房が止まり、本番さながらBGMも流れ出します。シーンごとに止めて、演出からディレクションやセリフ変更などが入りつつ、真剣な表情でディレクションを聴きつつも質問を次々と投げかける演者陣。演じながらも、注意点があればペンを走らせ、また演じていきます。
稽古開始から2時間後に休憩が入りましたが、野島さんは練習、仲村さんはメモ、浪川さんは必要な栄養補給と、各自余念がありません。ただ、雑談中には時折笑顔も。
つかの間の休憩を経て、附け打ちの方が鳴らす音と共に稽古は再開。物語は終盤に入り、演者のお芝居は更に熱を帯び、風雲急を告げるBGMが稽古場により緊張感をもたらします。
そんななか、仲村さんの長ゼリフで浪川さんが仲村さんにイントネーションを教えたり、ツッコミが入ったりと場が和やかになる場面も。
終盤の迫真のお芝居に引き込まれ、稽古段階でありながらも、胸を熱くさせる物語の切なさに涙腺が緩みそうになります。野島さんの歌舞伎定番の締めの口上「これぎり~」の声で稽古は終了。ホッとした表情になりながらも「これは大変だ~」と口にする皆さん。
稽古の後には公演当日に着る衣裳合わせ。それぞれ見事に和服を着こなす姿を見ると、この衣裳であの熱演を見ることができる本番に対し、より期待が高まりました。
稽古後の野島健児さん、浪川大輔さん、仲村宗悟さんが語った歌舞伎への印象
──歌舞伎を劇場やTVなどで鑑賞されたことはありますか?
松王丸役 浪川大輔さん(以下、浪川):1~2度あります。
桜丸役 仲村宗悟さん(以下、仲村):僕は今回『こえかぶ』に関わらせていただくということで、歌舞伎座の六月大歌舞伎を野島さんとは別日ですが同じ演目を拝見させていただきました。
梅王丸役 野島健児さん(以下、野島):まず美しさに驚きました。来ている着物から舞台装置まで、何から何まですごくきらびやかで美しくて。そして思ったのは「この美しさは声では表現できないぞ。どうすればいいのだろう?」と。
仲村:僕もそう思いました。演じていらっしゃる歌舞伎俳優の皆さんは毎日稽古を重ねている方たちなので、もはや体に染みついていて、日々の生活の一部になっているんだろうなと思わせる動きや所作で。
『こえかぶ』は声で歌舞伎を演じる朗読劇ということで、僕らのフィールドに合わせていただいているので、うまく表現できたらなと思っています。
──浪川さんは『ルパン三世』を題材にした「新作歌舞伎 流白浪燦星」(片岡愛之助さんがルパン三世を演じ、2023年初演、2025年10月再演https://www.shochiku.co.jp/play/schedules/detail/202509lupin/)をご覧になられたそうですね。
浪川:「ルパン歌舞伎」と別の演目も拝見させていただきましたが、セリフも義太夫節独特の風流があって。最初は「ちゃんとセリフを聴きとれるかな。難しそうだな」と思いましたが、音声ガイドの説明を聴きながらということもあり、徐々に慣れていくとお話も非常にわかりやすくて。
野島:僕も初めて観たから不安だったけど「良かった! ガイドが付いている!」って。
仲村:歌舞伎は昔の言葉を使っているので、一見難しそうに感じるかもしれませんが、音声ガイドや簡単な解説書があるので、僕もわかりやすいなと思いました。
あと僕らが6月に観たのは襲名記念公演(「八代目尾上菊五郎襲名披露 六代目尾上菊之助襲名披露」)ということで、引幕をティファニーが寄贈していたのもビックリしました。
野島:一つひとつが豪華だったよね。
──『こえかぶ』という企画についてはどう思われましたか?
浪川:ではお兄ちゃんから。
野島:お兄ちゃんじゃないよ!(笑) 僕は今年の1月に『こえかぶ』の特別企画として『PSYCHO-PASS サイコパス』で朗読劇(『PSYCHO-PASS サイコパス 京都南座歌舞伎ノ舘×こえかぶ 朗読で楽しむ歌舞伎』)をさせていただきました。
その時は歌舞伎の会場だったので、花道があったし、めちゃくちゃ動き回って。イメージとしては台本を持っていいお芝居みたいな。朗読の枠を大きく超えた朗読劇だったので、またそういう形なのかなと思っていましたが、今回は歌舞伎の劇場ではなく、内容も朗読に特化していて。だからこそ、歌舞伎を表現する難しさがあるのかなと思いました。
歌舞伎の世界観の中で、朗読という表現方法に落とし込む難しさはきっとあると思いますが、今日稽古をしてみて、「なるほど! こうやって物語を伝えるのには朗読が適しているな。朗読だからこそ描けるものがちゃんとあるんだ!」と感じられたので、僕にとっては前回と違って、まったく新しい『こえかぶ』の世界を見つけたような気がしています。
浪川:まずロゴがかわいいなと思いました。あと4文字だと響きもいいなと(笑)。皆さんは歌舞伎も朗読もご存じだと思いますが、これらを実際に観たことない人も多いと思います。
そんな職人的なもの2つをかけ合わせたら『こえかぶ』はより職人っぽくなるのかなとイメージされた方もいるかもしれませんが、エンタメ性もあるし、親しみやすいものになっているので、歌舞伎や朗読に触れたことがない人も、どちらにも触れたことがある人も楽しんでいただける、とてもいい企画だなと思って、参加させていただきました。
でも今日稽古をしてみたらすごく大変なことに気付いて。最初にお兄ちゃんに教わればよかった(笑)。
野島:(笑)。
浪川:参加できて嬉しいですし、今回、僕らがやらせていただくお話はいろいろな感情、心の動きや仕掛けがあるので、しっかりと伝えたいなと気合が入りました。
仲村:僕もいい入口になると思いました。お話も現代っぽい表現に変えてくださっていて、たぶん今回来場してくださるのは声優やアニメ、ゲームが好きな方が多いと思うので、一度も(歌舞伎を)観たことがない方もいると思います。
歌舞伎は伝統芸能ということで、敷居が高く感じている人に「ハードルは高くないから安心して観においで」と入口になる企画だなと思っています。




















































