
「VS AMBIVALENZ 2nd Season」キャストインタビュー連載:SCARLET担当・山下大輝が考える、完璧主義者でプライド高きSHIMBA&MIKERAの人間らしさ
120点を狙うSHIMBA、100点を確実に取るMIKERA――対照的な歌唱スタイル
──ここからは楽曲のお話をお聞かせください。SHIMBAとMIKERAとして歌う時に、歌の表現ではどんなことを心がけていますか?
山下:SHIMBAは、いわゆる自信や威厳のようなものが感じられるように、パワーを込めた歌い方を意識しています。歌声からも「こいつ自信満々だな」と感じてもらえるような歌い方と言いますか、例えば「Rise To The Top」みたいに多人数で歌っている曲でも「俺がこの中心だぜ!俺を見ろ!」という意識で歌っていて。それこそ「Which One!?」は全員の自己紹介パートがありますけど、それがSHIMBA始まりなんですよね。なので聴いている人を引き付けたいなと思って、最初にライオンみたいな声をアドリブで入れたんですよ。あれ、SEと思っている人もたくさんいると思うんですけど、SHIMBAの声です(笑)。彼なら「俺を見ろ!」という意味で、そういうことをやるだろうなと思って。
──“百獣の寵児”らしい印象的な導入でしたが、あれはアドリブだったんですね!一方でMIKERAはどうでしょうか。
山下:MIKERAは逆に、その楽曲をしっかりと理解したうえで、ブレることなく正確に歌う、ということを意識しています。これもある種のプロ意識ですよね。SHIMBAは、楽曲からはみ出てもいいから自分を主張するし、そこが彼の魅力でもある。MIKERAは、楽曲の中でも「おれってパーフェクトでしょ?」というのを見せる。例えるなら、SHIMBAは、100点満点の120点を目指すかボロボロになるかのどちらかなんですよ。「100点なんかじゃ満足できねえよ!やるなら120点だろ!」っていう。で、MIKERAは絶対に100点を狙い続けるタイプ。僕の中の印象としては、そういう歌い方の違いがありますね。
──面白いですね。そんな2人の歌唱アプローチの違いがよりはっきり伝わるのが、カラーソングバトル曲「Be Ploud」。プライドの高い2人らしい楽曲になりました。
山下:この曲は、お互いのプライドのぶつかり合いだと思っていて。最初にデモを聴いた時は「これはめちゃくちゃSHIMBA寄りの曲だな」と思ったんですよ。曲調としても王道のロックですし、メロディの跳躍の仕方もSHIMBAっぽいなと。ただ、歌詞の振り分けを見てみると、意外とサビのおいしい部分はMIKERAの方が多いんです。フルで聴いてもらうと、意外とMIKERAのところが目立つように仕組まれていて。
──確かにそうですね。
山下:本来ならSHIMBAが「俺の方が絶対合ってるだろ!」って割り込んできそうなところを、あえてMIKERAが歌っている。これは、2人がお互いのいいところを認め合ったからこそできる歌割りなのかなと思ったんですよね。「どうせ俺が勝つし」と思ってMIKERAのことを見ているようで見ていなかったSHIMBAが、やっと相手を認めた。「お前はすごい奴だ。だからお前を超えていく」という思いを込めたからこそ、両方が立つ歌になったのかなと。なので、今後公開されるであろう2人のストーリーに触れた後で聴くと、聴こえ方が変わってくるんじゃないかなと思います。
──まさにこの曲で、本当のライバルになったわけですね。
山下:そうですね。この曲でようやくお互いの目線があった気がします。
──曲調もエモーショナルですよね。特にサビのお互いを高め合っていくような展開が素晴らしくて。
山下:僕もこういう王道のまっすぐなロックは好きなので、聴いた時に「おお、めっちゃいい曲!」って思いました。ただ、AメロBメロが結構我慢しなくちゃいけないパートなんですよ。「まだだ!まだ抑えて!」っていう。そのタメがあるからこそ、サビが気持ちいい。もしカラオケとかに入ったらぜひ歌ってほしいですね。
──レコーディングでの試行錯誤はありましたか?
山下:MIKERAで歌う場合、AメロBメロの音がちょっと低いんです。同じ高さで歌うとSHIMBAと声色が似てしまう難しさがあって。そこは、SHIMBAはブレスにセクシーさや荒っぽさを入れて、MIKERAは逆にちょっと鼻にかけてその低さを表現するようにして、技巧的な感覚の部分で差別化を意識しました。高い音でも低い音でも、どっちが歌ってるかはっきり分かるように、というのはすごく大事にしています。
──ちなみに、歌詞についてはどのように受け止めましたか?
山下:サビの部分はもう本当にぶつかり合いですよね。でも、お互い同じことを思っているということでもあるんです。掛け合いのようでいて、魂の気質が同じ。一方が歌っているけど、もう一方も同じことを思っているんだろうなっていう、ニコイチ感がすごくあるなと思いました。何だかんだいって、似た者同士なんですよね。
──2人ともまっすぐなプライドの持ち主ですよね。
山下:歌詞ももう、ただただひたすら前にっていう感じですから。「命懸けでこの瞬間に賭けてるぜ、俺らは」っていう熱い歌詞ですよね。2人の思いがストレートに乗っている。他のカラーの楽曲は結構、特殊なものが多いじゃないですか。デスボイスで歌っている人もいたりして(笑)。その中でこのド直球の楽曲は、逆に目と耳を惹くんじゃないかなと思います。
揺れ動く気持ちも愛おしい――ファンに伝えたい“まっすぐな1票”の大切さ
──話は変わって、ご自身の担当キャラクター以外で気になるキャラクターはいますか?
山下:木村良平さんが演じているCATEくんですね。本当に何を考えているのかわからなさすぎて(笑)。CATEって前向きな言葉を言ったりしますけど、「この子、本当にこのまま真っ直ぐな子なの?」と思ってしまうんですよね。その裏のマインドはどうなっているのか、バックボーンが知りたい。とにかく謎が多くて不思議なキャラクターだなと思います。
──キャストの方の演技で刺激を受けたことがあれば聞いてみたいです。
山下:その意味では、武内駿輔くんが演じてるLUVNOSUKEですね。見た目は可愛らしいイメージなので、どう演じるのかな?と思っていたら、すごく自然な声の高さで、全然無理をしていない。違和感のない部分での新しいアプローチを聴けた感じがしました。彼はワイルドやクールな役のイメージが強いですけど、あえて変えすぎないことで、キャラクターの幅を今後もっと広げられるようにベースを作ったのかな、と思って。そういうのが見られたのは面白かったですね。
──ありがとうございます。また、本作の「二者択一」というテーマにちなみ、ご自身にとって人生の分岐点になった選択を伺えればと思います。
山下:僕はもともと学生時代、ずっとテニスをやっていたんです。父がテニスのコーチなので、テニスをやっていて当然みたいな環境だったんですよね。選択肢がそれしかなかったと言いますか。それで試合に出るのが当たり前のような生活だったんですが、いつからかテニスに対して心が動いてない自分に気づいて。本当に心が動く瞬間というのは、母が買ってくれたディズニーのアニメのDVDを観たり、カラオケでディズニーの楽曲を歌っている時だったんです。それこそ武内くんも得意な「フレンド・ライク・ミー」(映画『アラジン』の楽曲)をジーニーの声真似をしながら歌って、みんなを驚かせたり。いろんな声を出して皆を笑わせることに喜びを感じていたんです。
そこで「やっぱり僕が心動くのはこっちなのかもしれない」ということに気づいて。高校もテニス部に入って、部活が終わればテニスクラブに行くというテニス漬けの生活を送っていたのですが、同時進行で卒業したら東京に行って声のことを学ぶ作戦を企てて、父親に何も言わずにこっちに出てくる選択をしました。テニスを続けていく道もあったと思うんですけど、それを捨てて声優の道を選んだのは、僕の中で一番大きい分岐点だったと思います。
──その選択があったからこそ、今こうしてSHIMBAとMIKERAの2人を演じられているわけですものね。では最後に、ファンの皆様へメッセージをお願いします。
山下:この「Be Ploud」を聴いてもらった段階では、皆さんのSHIMBAとMIKERAに対する思いもまた揺れ動いている最中だと思います。その揺れ動いている時間すらも大事にして、どちらに投票するも良し、それぞれの思いのおもむくままに、彼ら2人のことを応援してもらえるのが、一番2人は喜んでくれるんじゃないかなと思います。「空気を読む」とかではなく、心からの1票をぜひ2人にあげてください。その方が、2人は絶対に喜びます。よろしくお願いします!
[文・北野創 / 写真・MoA]











































