展示方法にもこだわる新作イラスト満載の個展は「創作に浸ることのできる空間」へ──個展『黎創』開催記念・風李たゆ先生×えびも先生【対談インタビュー後編】

風李たゆ先生は『VS AMBIVALENZ』『ParadoxLive』（VISTY）のキャラクターデザインを手掛けられているイラストレーター。そんな風李先生の初個展『黎創』が2025年11月22日（土）～11月26日（水）の期間中、StudioSolaにて開催されます！

個展やイラストレーターという職業について多くの方に知っていただくために、今回は同じくイラストレーターであり『カリスマ』『HIGH CARD』のキャラクターデザインを手掛けられている、えびも先生と風李先生の対談インタビューをお届け！

後編では、個展『黎創』のテーマや新規描き下ろしイラストの解説など、個展に向けた注目ポイントが盛りだくさん！　第一線で活躍するイラストレーターであるお二人ならではの視点から、気になる“創作の世界”をお届けしていきます！

イラストレーター・風李たゆさんの初個展『黎創』が2025年11月22日（土）より渋谷・神南「Studio Sola」にて開催決定！

アイドルオーディションプロジェクト『VSAMBIVALENZ』、HIPHOPメディアミックスプロジェクト『ParadoxLive』チーム「VISTY」など、幅広いコンテンツでキャラクターデザインを手がけ、注目を集めるイラストレーター・風李たゆさん。風李たゆさんの初個展『黎創』が、2025年11月22日（土）より渋谷・神南「StudioSola」にて開催決定。このたび、一部展示作品と開催概要が公開となりました。＜以下、公式発表の内容を引用して掲載しています＞風李たゆ初個展『黎創』本展示では、”夜明け”をコンセプトに、個展のための描き下ろしイラスト11点と過去に公開した既存イラスト2点の作品を展示します。また、風李たゆがキャラクターデザインを務めるアイドルグループ『XlamV』とのコラボ作品も本展で初公開いたします。そして会場では、風李たゆがコーラスとして参加する本展示オリジナル楽曲もお楽しみいただけます。これまでの商業活動で培われた緻密な描写力と独自の色彩感覚を活かしながらも個展ならではの自由な発想で描き下ろされた作品群は、ファンはもちろん、アートとして新たに作品に触れる方にも強く印象を残します。展示空間は、作品の世界観を最大限に引き立てる演出を施し、来場者が一歩足を...

キービジュアルとタイトル「黎創」に込めた願い

──個展『黎創』の企画は、どのように始まったのですか？

風李たゆ先生（以下、風李）：イラストレーターとしてある程度の経験を積んできて、世間的な認知度や自分の立ち位置について振り返っていました。とりわけここ数年は「イラストレーターとして、自分がどの地点にいるのだろう」と、頭のどこかで考えていて。

また最近は、多くのイラストレーターさんが個展を開催されていますよね。個展によって様々な手法で印刷されたイラストを見て、絵の立体表現の広がりを感じています。それを受けて私も「キャリアの中で一度は個展をやりたい」と思っていたんです。

そんな時に思い出したのが『VS AMBIVALENZ（ビバレン）』の総合プロデューサー・毛利泰斗さんの「いつか個展を開催するなら、その時は一緒にやってみませんか」というお言葉でした。正直、声をかけていただいた時は「いつになるかわからないけれど嬉しい」とご好意を受け止めるだけで、まだ自分自身が個展を開催できる域に達していないと、少し臆病に考えていたんです。

そうして考え続けていた去年の春頃に「自分のイラストを画面で見ていただいているだけではなく、もっと間口を広げたい」とけじめがつきました。もっと自分の可能性を知りたいという欲が高まって、「よし！」と。

毛利さんに「あの時おっしゃってましたよね!?　毛利さん、言いましたよね！　ぜひ個展をやらせてください」って言ったんです（笑）。

えびも先生（以下、えびも）：（笑）。

風李：毛利さんも快くお引き受けしてくださって、そこから話し合いを重ねていきました。だから開催を決めるまでに、心の準備期間が1年半ほどかかっています（笑）。個展開催にあたっては、大きなポイントでしたね。

──実際に開催が決定した今は、どのようなご心境でしょうか。

風李：まず作家としては「いいもの作るぞ」と言う意気込みがありますが、『VS AMBIVALENZ』には本当に長く密接に関わらせていただいていて、毛利さんをはじめ信頼している方々と一緒に作らせていただけるという安心感に支えられています。沢山の方のお力のおかげで個展を実現できるので、より気合いが入っています！

そして、一度「やる」と決めたからには、世界や私自身がどんな状況になったとしても、自分が「これが最初で最後でもいい」と思えるぐらいの気持ちと準備を固めて臨みたいと思っています。

▲風李たゆ『こんにちは』

──個展のタイトル「黎創（れいそう）」はどのように生まれたのですか？

風李：個展のテーマを固めていく中で、タイトルはもちろん、どのように作品を統一するかなど、半年ほど悩んでいたと思います。最初は英語のタイトルだったような気もしますし、色々な候補をいくつも考えましたが、どうにもしっくりとこなくて。

そんな中で絵を描いていたある日、ふと「いつも絵を描いている時間は夜中」「完成するのは夜明け」ということに気づいたんです。私は昼よりも夜の方が集中できるので、生活も昼夜逆転気味なのですが、夜中が一番集中して自分の世界観に入り込める。そして気がついたら、夜明けを迎えるというサイクルが自分の創作と常にセットになっていることを改めて認識しました。そこから「夜明け」という言葉が浮かんできたんです。

そして、このイメージと当てはまる言葉を探していた時に、物事の始まりや夜明けを意味する「黎明」という言葉が出てきて。最初は「この言葉、いいな」と思っていたのですが、もう少し自分らしさを足したいなと。

──先生らしさ？

風李：私が大事にしているテーマに「まずは自分が創作を楽しむこと」があります。楽しんだ結果の創作物を皆さんに見ていただいて、ほんの少しでも「モノを作るって面白いな。楽しいな」とか、「自分もやってみたいな」と思ってもらえるような原動力にもなれたらと。その想いを重ねて創作の「創」と黎明の「黎」をくっつけました。

「物事の始まり」や、作品の完成と共に夜が明けて空がグラデーションしていく様を表現できる、この上ないタイトルにできたかなと思います。

──キービジュアルに込めた想いについてお聞かせください。

風李：前編で、近年の創作のテーマが「自分のルーツや内側から生まれるもの」とお話しさせていただいたのですが、本個展も同様のテーマ性を持っています。

そして、この個展は世の中に対して改めて「私はこういう者です」という自己紹介でもあると思っていて。商業イラストレーターとして14年間活動させていただいているのですが、まずこれまでの歩みに一度節目を設け、これまでの軌跡をお見せするという目的があります。

キービジュアルの中には、刀があって「お守り」という意味のモチーフとして描いたのですが、これも「私のルーツを大事にしたい」という想いを込めています。そして一緒に描いたモルフォ蝶は「変化」や「進化」の象徴。つまり、自分のルーツ（過去）や日本の文化を愛して大事にしつつ、イラストレーターとしても一人の人間としてもここから成長し続けたいという気持ちと、「夜中から夜明けへ」というイメージを重ねてキービジュアルを描きました。

▲『黎創』メインビジュアル

風李：一方で、キャラクターとしては「風李たゆのイラストやキャラといえば、こんな雰囲気だよね」と言う主観と客観イメージを総合した、安心していただけるような愛らしさを目指しました。

言わなければ気づかれないかもしれませんが、実は目の中に刀の鍔（つば）を仕込んでいます。

えびも：うわぁ！　本当だ！　観察したら分かるポイントがあるというのは、気づいた瞬間に嬉しくなりますよね。

──タイトルもビジュアルもとても素敵です。

えびも：（ビジュアルを眺めながら）ずっと言いたかったんですけど、左側の髪の流れが気持ち良すぎるんですよね。気持ちい〜！

風李：あははは（笑）。嬉しいです！

日本の和柄には流れる水をモチーフにした柄もありますので、キャラクターの髪の毛にはその流水のイメージを取り入れました。

それと、左に月、右下には明け方の富士山を配置していて、左から右に向かうにつれて夜が明けるという構図になっています。

えびも：めっちゃ良い！（イラスト右に描かれた松を見ながら）この「イラスト！」って感じの絵が入っているのもめっちゃ良いですね。

風李：松竹梅、桜の花びら、雪、紅葉と四季の要素も盛り込みました！

えびも：要素はとても多いはずなのに、完全に調和していますよね。普通、桜や紅葉を描く際に連想する色があると思うのですが、パッと浮かぶイメージに頼らずに描かれていて。