「VS AMBIVALENZ 2nd Season」キャストインタビュー連載：SCARLET担当・山下大輝が考える、完璧主義者でプライド高きSHIMBA＆MIKERAの人間らしさ

ユーザーの投票によって物語の展開やデビューするキャラクターが決定する、“二者択一”をテーマにしたユーザー参加型アイドルオーディションプロジェクト「VS AMBIVALENZ」（バーサスアンビバレンツ）。デビューを目指すアイドル候補生たちは、2人1組で担当カラーを割り振られ、グランツ（ファン）の支持をより多く集めた者だけがデビューの夢を掴むことができる。さらに豪華声優陣が同じ担当カラーの候補生を1人2役で演じるのが本作の特色。2024年11月に始動した「VS AMBIVALENZ 2nd Season」では、山下大輝、小林親弘、武内駿輔、石橋陽彩、木村良平が「10人の候補生」を演じている。

アニメイトタイムズでは、1つの楽曲を同じ担当カラーの2人が歌うデュエットソング企画「カラーソングバトル」楽曲をまとめたデジタルミニアルバム『COLOR x COLLIDE』の配信リリースに合わせ、2nd Seasonのキャスト陣への連続インタビューを展開。今回はSCARLETの候補生――とにかく真っ直ぐな性格で力強いパフォーマンスが持ち味のSHIMBAと、見た目はネコのようでかわいらしいが気が強くてプライドの高いMIKERA――を演じる山下大輝に、1人2役で歌唱したカラーソングバトル曲「Be Ploud」をはじめ、2人を演じるうえでのこだわりについて話を聞いた。

対照的な2人を通して描かれる“狭い視野”からの成長

──最初に「VS AMBIVALENZ」（以下、「ビバレン」）への参加が決まった時の感想をお聞かせください。

山下大輝さん（以下、山下）：コンテンツのことはお話をいただいたタイミングで知ったのですが、声優が1人2役でキャラクターを演じて、そのキャラ同士がオーディションで競い合うという概要を聞いて、かなり壮絶な内容だなと思ったのと同時に、今までありそうでなかったお話だったのですごく面白そうだなと思いました。ですので、ぜひ！ということでお引き受けさせていただきました。

──1人2役というのは、これまでにもご経験が？

山下：アニメで兼ね役を演じる機会はありましたが、「ビバレン」の場合は言うなれば、どちらも主役みたいなキャラクターになるので、「どちらの魅力も全力で引き出してみせる！」という気持ちで収録に臨んでいます。やっぱりやるからにはどちらのキャラクターのことも好きになってほしいですから。

──その分、エネルギーも2倍必要になって大変そうですね。

山下：まあ、エネルギーは有り余っているので（笑）。僕はキャラクターに向ける想いがあればあるほど頑張れるタイプなんです。だから、大変さというより楽しさも2倍になっている感覚が、僕の中ではありますね。2人ともタイプが全然違うので「どうやろうかな？」と考えるのが本当に楽しくて。

──いいですね。それでは山下さんが担当するSCARLETの2人、SHIMBAとMIKERAについて、それぞれどんなキャラクターだと感じているか、教えていただけますでしょうか。

山下：まずSHIMBAに関しては、最初にキャラクターの資料をいただいた時、「あれ？今までこんなに大きいキャラクターを演じたことあったっけ？」と思いました（笑）。SHIMBAは外見からして大きいですし（※身長は193cmという設定）、性格もとにかく真っ直ぐ。ただ、だからこそ中途半端だったり歪んだものを理解することができない一面があって。真っ直ぐすぎるがゆえに見えない世界を持っているキャラクターだということが、ここまで演じてきたなかでわかってきました。

──第一印象はすこし違っていたわけですか？

山下：最初は「全然隙がないなあ」と思っていたんです。溌溂としていて、誰に対しても平等に接するし、弱点がなさそうなキャラクターだなあと。SHIMBAはすごく自信家で、自分のやることが正しいし、自分が自分であることが、このオーディションにおいて一番の武器だと思っているので、きっと最後までその気持ちがブレることはないんだろうなと感じたんです。でも、自分が中心にいるのが当たり前だと考えているからこそ、見えていないものがある。そこが彼の唯一の欠点というか、欠けた部分で、それも含めて彼の人間らしさを形成するものになっているんですよね。今後のストーリーに関わることなので詳しくは話せないのですが、そこに彼の本質のようなものが見えてくるし、演じる側としても、より深いキャラクター像を構築していけるだろうなと感じています。

──なるほど。MIKERAに関してはいかがでしょうか。

山下：MIKERAはSHIMBAとは真逆で、まだ少年というか幼い部分を持ち合わせているけれども、心根の部分ではすごくプロフェッショナルでプライドに溢れている。きっと幼少期から養成所に通っていたので、早い段階で自分の在り方のようなものを決めているんですよね。この業界で生き残っていくために磨いてきた自分の武器、プロ意識みたいなものがあるからこそ、逆にそれに捉われてがんじがらめになっている部分もある。だからSHIMBAと一緒で、彼もプライドの塊みたいな人なんですよね（笑）。

──かわいらしい見た目とは裏腹に気が強いのは、そういう一面があるからなんでしょうね。

山下：そうそう。多分、自分が客観的にどう見えているかを熟知していて、自分のPRの仕方やブランディングに対してこだわりを持っているがゆえに、他の人からの意見も「いや、僕はそうじゃないんで」って聞かないタイプと言いますか。取捨選択を全部自分で行って、自分で自分を決めつけているから、外部からの意見を受け入れられない。その意味で彼も狭い視野の中で生きているんですよね。そういった壁にぶち当たって、どう成長していくのかが、今後の見どころになっていくと思います。

──SHIMBAとMIKERAの2人に対して、山下さん自身が共感できるポイントはありましたか？

山下：彼らはアイドルを目指しているわけですが、そういう世界でやっていくためには自分自身に自信を持つことも大事だけど、それだけでは生き抜いていくことは難しい、という部分にはすごく共感できますね。

僕たち声優も自分自身のお芝居に自信を持ってやるのはとてもいいことですし、もちろんプライドを持ってお仕事をさせてもらっていますけど、そこに固執していると独りよがりになってしまいがちなんですよね。その裏には、いろんな形で支えてくれる人たちがいて、ひとつの作品を作るにはたくさんの人たちの力が必要だということを常に意識していないと、だんだん自分自身が苦しくなっていくと思うんです。お互いリスペクトを持って臨む方が視野も広くなるし、作品作りも楽しくなる。なので、2人を演じながら「そうそう、こういう視点が大事なんだよな」というのを思っていました。

──ご自身の経験と重なる部分があったわけですね。

山下：はい。僕もデビュー間もないころにメインキャラクターを任せていただいたのですが、その時は「とにかく頑張らないと……！」という気持ちが強かったあまりに、どんどん視野が狭くなってしまって、「もっと周りの声も聞いた方がいいよ」とアドバイスをいただいた経験があって。やっぱり、お芝居というのは掛け合いなので、相手の声を聞いたうえで心がどう動いたのかが大事なんですよ。でも、僕は一生懸命になりすぎて、相手の声を聞くことをおろそかにしていた。そのことに気付かせてもらうまでは、僕も「自分がしっかりやらなくちゃ」という気持ちばかりで苦しかったんですよね。だから、この2人の姿を見ていると、昔の自分のことのように感じる瞬間もありました。

──そんな2人を演じ分ける上で、意識されていることは？

山下：SHIMBAの場合はもう溌剌と。彼は脊髄反射でしゃべるというか、会話において「考える」という間がほぼない人だと思うんですよ。相手に対して失礼かどうか？みたいなフィルターを挟むことなく、「俺はこう思ったから」ということを真っ直ぐに話す。そこに嫌味も何もなく、本当に思ったことを素直にしゃべるだけっていうスタンス。だからしゃべりの主軸が常に自分なんです。それがゆえにちょっと危うさも感じられる。

MIKERAは逆に、「自分が周りからどう見えるか」というのを見たうえで発言するんですよ。「自分はこう思ったけれども、これを言ったことによって周りは自分のことをどう評価するかな」ということを考えたうえで、自分にとって一番ベストと思う回答を発言する。いわゆる「良い子ちゃん」を演じて、自分が腫れ物にならないように立ち回るのが上手いんですよね。ただ、そこに自分の譲れない部分が入ってくると、絶対に曲げない強い意見を言い続ける。あとは結構噛むんですよ。「にゃ」とか言ってしまうので、結局はキメきれないところがあるというか。

──プロ意識は強いけど、どこか隙が出てしまうわけですね。

山下：そこが彼のかわいらしい部分だなと思います。自分の中には、MIKERAというブランドの理想像があって、それを必死に演じようとする。でも、その理想にはすごく背伸びしないと近づけないので、背伸びしきれずこけちゃう、みたいな。そういう一面を見て「無理しないでいいんだよ」と客観的に思ってしまう山下もいます（笑）。