
『CITY THE ANIMATION』石立太一監督に訊く、“楽しい”と“可愛い”の作り方。“優しい”フィクションが持つパワーとは?【インタビュー】
街で起こるささやかな出来事、個性豊かな住人たちのやり取り、そして仄かに感じる“優しさ”の連鎖。“らしさ”全開で、#11まで駆け抜けてきた『CITY THE ANIMATION』。
創作の原点にあったのは、あらゐけいいち先生の絵が持つ“可愛さ”と、街全体に漂う“楽しさ”だと語るのは、本作の監督・石立太一氏です。
今回のインタビューでは、アニメ化の経緯や制作秘話、さらに作品を作り終えた監督が捉えた〈CITY〉という街の姿について、思い切り“楽しく”語っていただきました。
そこから見えてきたのは、本作にとどまらない、アニメ=フィクションの「力」。〈CITY〉に潜む、誰もが楽しく・可愛く・優しくなれるヒントを一緒に探してみましょう!
即ち、“Don't think, feel”(考えるな、感じろ)
──放送開始以降のファンからの反響は、監督にも届いていますか?
石立太一監督(以下、石立):ある程度は把握しています。しっかり確認しているわけではないんですが、思った通りの感想ではありましたね。
──と言いますと?
石立:「わからない!」という方と「こういうの好き」と言ってくださる方がパキッと分かれている印象です。そのどちらに対しても「ですよね」って(笑)。
──「ですよね」(笑)。
石立:観ていて、「何をどうしたいんだよ!」って思いませんか?(笑)ブルース・リーじゃないですけど、“Don't think, feel”(考えるな、感じろ)的な作品ですから。
──昨今では珍しいタイプのアニメだと思うのですが、どのように企画を進めていったのでしょうか?
石立:京都アニメーションでは、14年前に同じくあらゐけいいちさん原作の『日常』を制作させていただきました。その際、あらゐさんの創作に対する熱量を直に感じて、「ご一緒できて本当に良かったな」と思っていたんです。
気づけば長い年月が経ちましたが、あれからずっと「また一緒に何か作りたい」という想いはありました。そんな中で、『CITY』という作品に出会って。いち読者としても楽しんでいたので、「いつか映像化できたら楽しいだろうな」と。視聴者の皆さんにも、その楽しさを受け取っていただけるようなアニメになったら良いなと思っていました。
──アニメ化が決まった際、あらゐ先生とはお話されましたか?
石立:アニメの企画が動き出してから、10数年ぶりにお会いしたんですよ。そこで『CITY』という作品について、「“楽しい”を冠(かんむり)に描きました」とおっしゃっていたんです。また、アニメーションや漫画に限らず、創作全体として「可愛い」が重要だと。
──「楽しい」と「可愛い」。
石立:そうです。『日常』は小さいお子さんも喜んで観てくださったらしく、ウケた理由を考える中で出てきたのが「あらゐさんの絵って可愛いですよね」ということでした。
そこで「楽しい」と「可愛い」は作品の大事な部分に据えておきたい。テーマという程ではないですけど、アニメを制作するうえで意識するべき要素として掲げていくことにしました。
──たしかに。『CITY』の住人は、一見怪しげなおじさんでも非常に可愛らしいです。
石立:個人的にも「果たして、おじさんまで可愛くなるのか」というのは不安だったんですけど、声がついたらめっちゃ可愛かったですね。
──その2つの要素を大切にするうえでは、画作りや色彩などのルックも重要なポイントになってくるかと思います。
石立:あらゐさんの描く絵って、すごく可愛いじゃないですか。あの絵柄は、藤子不二雄先生とか、日本の古き良き漫画文化の表現にインスパイアされているんじゃないかと思っています。普遍性があると言いますか。日本で生まれ育つと、幼少期からそういう絵や文化を刷り込まれているはずなんです。
──誰もが一度は目にしたことがあるものですよね。
石立:そういう親しみがあってほっこりするような表現。これはアニメーションでも活かしたいと思っていました。僕だけでなく、美術監督もキャラクターデザインも、スタッフ全員でそのためのアイデアを持ち合わせて作っていったんです。














































