
『CITY THE ANIMATION』石立太一監督に訊く、“楽しい”と“可愛い”の作り方。“優しい”フィクションが持つパワーとは?【インタビュー】
自分自身で、ビートを刻め
──アニメならではのアプローチで描かれたキャラクター・エピソードとして、光岳伸晃(CV:福山潤)や「劇団テカリダケ」のシーンが挙げられると思います。
石立:(ニヤリと笑って)目のつけどころが素晴らしいですね。
──(笑)。光岳のセリフがラップ調になっていて、身体が思わず揺れるようなビートが流れていました。
石立:原作では、講談のような語り口で描かれていたと思っていて、僕自身もそういう風に受け取っていたんです。
実際に講談っぽくしようとしたのですが、音響監督の鶴岡陽太さんが突然「ラップじゃない?」って(笑)。何か違うことをしたいと言い出したんです。
──なるほど。
石立:続けて鶴岡さんが「要は、演出がリズムを持ってるかって話だよね」と。普通なら「何を言っているんだ?」ですよ(笑)。でも、感覚的に「そういうことか!」と理解できました。つまり、演出次第でいかようにもなるというか。
──「“Don't think, feel”(考えるな、感じろ)」?
石立:そういうことです。「一度Vコンテ(ビデオコンテ)を作ってみよう」という話になり、演出担当のスタッフが自分自身のビートを刻むことになりました。
──大変心地よいビートをありがとうございます。
石立:個人的にも、クリエイティブの面白さを改めて感じたシーンでした。そう言えば、あのシーンの感想をあらゐさんに聞いていなかったですね。今度どう思ったのかを聞いておきます(笑)。
フィクションは、現実を拡張する
──もし監督自身が〈CITY〉の中で暮らすとしたら、誰とどんなことをしたいですか?
石立:疲れそうなので、南雲たちの中には居たくないかな(笑)。東堂商店で店番をしたいですね。いつもみみねこが座っている座布団に僕も座りたいです。
──サブの店番ですね。
石立:お客さんも滅多にこなさそうですし、平和そうなので、そのポジションに居座りたいと思います。
──南雲たちや東堂商店をはじめ、『CITY』では特定のキャラクターやコミュニティに収まらず、街全体の大きな日常を描いています。本作ならではのスケールや規模感について、監督自身はどう捉えていますか?
石立:タイトルが『CITY』なので、自然とそういう規模感になりますよね。更に言えば、日本のようで、日本ではないような不思議な場所になっている。その規模感によって、優しさや敬意みたいなものを描いている作品だと思うんです。
作中に「いい人(CV:水内清光)」というキャラクターがいるんですけど、あの人のエピソードが象徴的じゃないでしょうか。彼のような風変わりな人に対しても、誰に対してもリスペクトを持つ。ツッコミはよく入りますけど、誰も否定しない世界観なんですよ。
まつり(真壁まつり CV:七瀬彩夏)とえっちゃん(雨飾えり CV:田所あずさ)のエピソードで「優しさ革命」というお話がありました。そこでは「誰かに優しくされたら、誰かに優しくしたくなる」と言っています。それが繋がっていくと、最後には「戦争がなくなる!」と。
住人たちの優しさによる平和、その法則が保たれている街である。「そういうことがぼんやりと描けていたら」なんて思いますね。もちろん、それを素直に観られない方もいるとは思うんです。
──いわゆる綺麗事みたいに捉えてしまう方もいますよね。
石立:でもね、そういう世界線が視聴者の日常と少しでも結びつくような……少しでもそういう想像をしていただけたら。フィクションの強みって、私たちの現実を拡張してくれることだと思うんです。
常に意識しながら制作したわけではないんですけど、作り終わった今はそういう感覚が湧いています。あらゐさん自身がそういう目的を持っていたかは分からないですし、ただの結果論かもしれませんけど……(笑)。
──この作品から優しさや希望を受け取った方も大勢いらっしゃると思います! 改めて素晴らしい作品を作っていただき、ありがとうございました。
石立:いえいえ。皆さんにとっての大切な作品になると嬉しいです。原作もそうなんですけど、アニメーションとしての『CITY』も登場人物が沢山いて、キャラクターたちを少しづつ噛み締めていけばいくほど、魅力を感じられます。「楽しい」を作るスタッフ陣も「楽しい」を感じながら、いろいろなアプローチを考えました。
興味が持続するようであれば、ぜひ最後まで観ていただきたいです。ラスト2話も『CITY』らしいまとめ方になっていますし、幸福感を感じていただけると思います。
[インタビュー/タイラ]
『CITY THE ANIMATION』作品情報
キャスト
南雲美鳥:小松未可子
にーくら:豊崎愛生
泉わこ:石川由依
真壁鶴菱:川原慶久
真壁立涌:入野自由
真壁まつり:七瀬彩夏
雨飾えり:田所あずさ
泉りこ:和久井優
安達太良博士&安達太良の父:子安武人
安達太良の母:浅野まゆみ
安達太良達太:KENN
安達太良良太:猪股慧士
安達太良かもめ:林鼓子
安達太良うみ:福嶋晴菜
安達太良そら:天麻ゆうき
鬼カマボコ:宮崎遊
轟:鈴木崚汰
オババ:山本和臣
いい人:水内清光
タナベ菫桜子美:後藤邑子
穂高:土門仁
光岳伸晃:福山潤
帯那林道:金子誠
黒金大和:髙坂篤志
ナレーション:大塚芳忠
スタッフ
原作:あらゐけいいち『CITY』(講談社「モーニング」所載)
監督:石立太一
キャラクターデザイン・総作画監督:徳山珠美
美術監督:山崎詩央里
色彩設計:宮田佳奈
撮影監督:植田弘貴
3D監督:加瀬達規
音響監督:鶴岡陽太
音楽:ピラニアンズ
音楽制作:ポニーキャニオン
アニメーション制作:京都アニメーション
製作:CITY THE ANIMATION 製作委員会
主題歌
OP:「Hello」Furui Riho
ED:「LUCKY」TOMOO














































