
『青春ブタ野郎はサンタクロースの夢を見ない』石川界人さん×山根綺さんインタビュー|ランドセルガール編から登場していた赤城は、自分の信じる正しさに基づいて行動しているキャラクター!?
赤城と咲太の掛け合いは腹の探り合い
──山根さんから見て咲太の印象はいかがでしたか?
山根:心に波はあると思うのですが、基本的には大きく動じることがないというか。この人だったらなんとかしてくれるんじゃないかなっていう、そういう希望を見出してしまいそうな安心や信頼、期待みたいなものを感じますね。
郁実はずっと過去の自分に囚われて苦しかったと思うのですが、咲太君と再会したことで、この人なら助けてくれるかもしれないって思えたような気がしています。
石川:僕としては、赤城はきっと咲太が自分と違う正しさを持っている人だと認められたんじゃないかと思います。赤城は色々な要因から、正しい自分でありたいと考えて今回のような出来事を引き起こしてしまった訳ですが、そんな間違いを犯してしまう自分すらも正しいと思えるっていうのが咲太の正しさなんじゃないかって思うんです。赤城は咲太を頼るというよりも、咲太が信じている正しさの先を見てみたいのかもしれませんね。
山根:その通りだと思います。郁実自身は気付いていないかもしれませんが、咲太君と再会して影響を受けていく内に、また新しい自分を始められると思えたのではないかなと受け取っています。
──そんな咲太と郁実はそこまで繋がりがなかった中学時代の同級生で、大学生になって再会したというややこしい関係性かと思います。掛け合いではどんなことを意識して演じられましたか?
山根:原作にも書いてあったのですが、郁実と咲太君は会話をしているようでしていないんです。お互いに言葉を積み上げながら腹の内を探り合っていたので、かけすぎない、受け取りすぎないを常に意識していました。
あのベンチで喋っているシーンは、心と心のやり取りとして会話をするのではなく、相手から文章をもらってそれに対して淡々と返したというか。郁実と咲太君の間に、何か見えない壁が1枚あるような雰囲気で会話していたなと思っています。
石川:あまり意識することはなかったですね。咲太は誰に対しても割とフラットでありつつ、相手のパーソナルな部分が見えてこないとそれに対するペルソナが出てこないところがあります。なので、序盤のジャブ的なところ、腹の内を見せない赤城に対してはどう接すればいいのかわからないみたいな距離感だったのかなって個人的には思っています。
ただ、だからといって咲太は性格的に手を差し伸べない訳にはいかない。何故なら、彼は優しい人になりたいという理想を持っているので、今問題を抱えている赤城に対して自分に何ができるのかを、パーソナルな部分を分析することで掴もうとします。本当に山根さんがおっしゃった通り、探るっていうコミュニケーションが一番正しかったのかなって。
──中々パーソナルな部分が見えてこないというか、見せてくれないので、視聴者の中にも郁実が何を考えているのかずっと引っ掛かっていた人は多そうです。
石川:咲太も最後の最後まで掴むきっかけを得られないかもしれません。ここまで赤城は自分のパーソナルな部分をさらけ出すことがなかったし、学校でのシーンも本音のように聞こえるけど本当に大事な情報は隠している。どこまでが嘘でどこからが本当なのかも含めて、第7話の展開に期待してもらえたらなと思います。
──また、収録時に咲太に関しては何か《大学生編》ではディレクションがありましたか?
石川:それが、キャラクターの内面的なものはほとんど無くて。読み間違えや口パクがあっていないとか、掛け合うキャラクターとの距離感に気を付けてみたいなテクニカル部分の細かいディレクションはあるんですけれども。
やっぱりシリーズを長くやってきたからもあると思いますし、主人公は咲太でも物語を動かすのはあくまでもヒロインたち。おそらく、状況的によほど間違っていなければってことなんだと思っています。だから、僕自身はきちんと台本を読み、ヒロインたちの悩みや現状を知る方に注力していたように思います。
──先に麻衣役の瀬戸さんにお話を伺う機会があったのですが、麻衣もほとんどそういった指示はなかったのだとか。やはり、おふたりは長くキャラクターに寄り添って来たからこそな部分がありそうです。
山根:おふたりは本当に何のディレクションもなかったですし、掛け合いもすごくやりやすくて、さすが青ブタを長年支えられてきた方々だなと思いました。私がお芝居の中で郁実の見ている世界と同じものを見られたのも、きっと咲太君と麻衣さんのおかげです。
石川:こちらとしても、そう思ってもらえていたのならありがたいです……!!
──咲太としてヒロインたちと掛け合う時は、どのようなことに注意されていますか?
石川:咲太は割と誰に対してもフラットなところがあるのはお話した通りですが、例えば古賀に対する扱いは結構ぞんざいだったりしますし、《大学生編》からは大分変わっていますけれど、花楓/かえでに対しては凄く優しい兄であることを大切にしていました。
麻衣さんは一番甘えられる存在ではあるので、そういった形で信頼関係を示したり。後は、豊浜に対しては古賀よりもぞんざいで、なんならめんどくせぇなっていうのを前面に出して喋っていたりする。
それぞれのヒロインたちに必要だったことが、そのまま咲太のパーソナルに反映されていると思っているんですよね。古賀なら絶対に裏切らない親友だったし、麻衣さんは愛してくれる存在、豊浜は何を言っても離れない仲間。咲太にはそれぞれにあわせたパーソナルがあるのだけど、それは無意識にやっていることなので、たまたまそうなっているんだろうなと。
《大学生編》に関しては咲太も大学生になり、《高校生編》からここに至るまで月日が経過しています。そんな中で触れるコミュニティであるとか、親への感謝であるとか、精神的な成長をする様々な機会があったと見受けられるので、今後も表立って変わることはないかなと僕としては思っていますね。
──そして、咲太と赤城の共通の知り合いとして上里沙希が再登場しています。《大学生編》の彼女の印象はいかがでしょうか?
石川:なんだかおじさんみたいな目線になってしまうのですが、TVシリーズ第1期の初登場時からもう7年も経っているので僕もそれだけ歳を重ねましたし、大人になったよなっていう感想になってしまいます。
嫌いな人と接さなければならない時は誰しも必ず来るもので、高校生くらいまでなら何か起きたとしても、小さな社会でのことだからそこまで大きな問題にはなりづらい。でも、大学生にもなると関わるコミュニティも増えますし、社会的な責任も重くなる。そういう雰囲気が上里のあの振舞いからも見えましたね。
──《高校生編》での咲太と上里のやり取りは本当に大好きでした。
石川:アレは本当にね。今となってはなんであんな自然に、さらっとあんな台詞を吐けたのだろうと思いますよ。
一同:(笑)。
──山根さんは上里についていかがですか?
山根:郁実と咲太君を繋いでくれるというか、郁実がどういう人なのかっていうヒントを意図せず咲太くんに与えていた存在でしたよね。郁実も沙希に心を開いていない訳ではないと思うのですが、郁実側から見えている世界が結構狭いのかなって思うんです。
この人は何をどう感じているかとか、周りの人の状況をあんまり見ないようにしているところがあるようにも思いましたし。沙希も信頼する友達だとは思うのですが、この時点ではまだ腹の内や心情を全てさらけ出せる存在ではなかったのかもしれません。
──郁実と上里のこの先の物語が気になってしまいますね。
山根:見てみたいですね! アナザーエピソードがあればぜひ!
石川:コミカライズとかでやりそうですよね。コミカライズはヒロイン視点で描かれることが多いので。
山根:それはちょっと期待したいと思います!



























































