
『キミとアイドルプリキュア♪LIVE2025 You&I=We’re IDOL PRECURE』開催記念リレーインタビュー 南條愛乃さん|「プリルンは身体が小さいので、肺も小さいはず。だから歌うときは息継ぎを無理やり入れて、“子どもが頑張って歌ってる感じ”を表現しました」【連載第7回】
“小さな体”を意識して、呼吸法に工夫を
──プリキュアライブでは、毎年夏に発売されるボーカルアルバムに収録された楽曲もステージで披露されるのが恒例となっています。「『キミとアイドルプリキュア♪』ボーカルアルバム~We are!You & IDOL PRECURE♪~」には、多彩な楽曲がたくさん収録されていますね。
南條:すっごくいろいろな曲が収録されていますよね。
──南條さんが参加されたプリルンとメロロンによる「なかよしJ♡YFUL」、ズキューンとキッスによる「Awakening Harmony」は、かわいいとカッコいいの、ある種両極端な仕上がりで、聴き応えがあります。「なかよしJ♡YFUL」を聴いたときはどのような印象がありましたか?
南條:もう大好きな曲です! 最初にデモをいただいたのが新幹線での移動中だったんです。プリルンとメロロンの曲があると聞いていたので「ついに来た!」と思って、もうすぐ聴きたくて、急いでイヤホンをして再生したら、あまりに楽しくてワクワクが止まらなくなって。「こんなふうに歌いたい」「こういうこともやりたい」ってアイデアが次々に浮かんでくるのに、移動中でメモが取れなくて……まずは夢中で何度も聴きました。アドリブもたくさん入れたいなと思っていて、特に冒頭の〈WaちゃWaちゃ なかよし〜!!〉の裏でプリ、メロ、プリ、メロ♪ってところも、私から「やりませんか?」と提案させてもらいました。
──髙橋ミナミさん(キュアウインク/蒼風なな役)にお話をうかがったときに、南條さんが率先してアドリブを入れて……とおっしゃられていたのですが、そういうことだったんですね!
南條:それはまた別の曲の話なのですが、プリメロ曲は最初にいただいた段階ではメロディラインが中心で、ところどころに「セリフっぽく」という指定がある程度だったんです。でも、あえて曲であって曲でないくらいのほうが、プリルンとメロロンらしい可愛さが出るんじゃないかなと思って。それで「音痴に歌ってもいいですか?」と提案して、思いきり遊んでみました。
実はこの収録のとき2曲録っていて、劇場版の『わんぷり』さんの「わんだふるぷりきゅあ!evolution!!」のカバーを歌ったあと、「なかよしJ♡YFUL」という流れだったんです。どちらも作曲がEFFYさんで現場にいらしていたんですが、カバーを録り終わったあと「音程を無視して歌っても大丈夫ですか!?」と聞いて。そしたら「好きにやって大丈夫です!」と言っていただいたので、遠慮なくアドリブを入れさせてもらいました。例えば、〈どんなときでもいっしょプリ〜♪〉の裏で4つ打ちのリズムに合わせて「プリップリップリッ」って言ったり、そのあとのメロロンのパートの〈ひとりじゃないってかんじるメロ♡〉の裏で「メロメロ」と入れてもらう提案をしたり。メロロンの裏の声は分かりやすく聴こえるかと思います。
──そこもアドリブだったのですね。可愛さが散りばめられすぎていて……アドリブはまだまだあるのでしょうか。
南條:はい(笑)。〈ぽかぽかおてんき おさんぽするプリ!〉とか〈タコさんウインナープリ!?〉とかのくだりも最初はメロディだったんです。でもセリフっぽい感じで入れさせてもらったり。2サビ(2C)の頭の〈プリッ!〉は、最初「ハイ!」となっていて、「プリ、かも……?」って提案させてもらったんです。六ツ見(純代)さんがいらっしゃったので、言ってみたら「確かに1Cのメロちゃんも〈メロッ!〉だしね」って。
──六ツ見さんもいろいろな提案に、きっと喜ばれたのではないでしょうか。
南條:六ツ見さんもにっこりでした(笑)。私自身も本当に楽しかったです。それと〈いつもありがとう つたえたいプリ〜〉ってところは、歌詞は同じですが1番と3番で歌い方を変えたんです。1番は裏声で、プリルン的には「うたみたいに上手に歌いたい」とイメージ、3番は「伝えたい!」気持ちをそのまままっすぐ出すイメージで歌っています。あと、メロロンのポエムの最後に入れてる「プリ〜♪」もアドリブで、最初はなかったんです。入れてみたらありになって。「これも入れたい!」ってアイデアが溢れすぎて、逆に忘れてしまったものもあるくらい(笑)。それでも残ったものは、どうしても入れたかった部分なんだと思います。プロデューサーの井上(洸)さんも「良いですね、全部やりましょう!」と言ってくださって。自分がもはやプリルンファンなので、「自分が聴きたい!」と思う要素を詰め込みました。
──かわいいの大渋滞で……。プリルンが頑張って歌っている姿が思い浮かんで、聴いているとそれこそにっこりしてしまいます。
南條:そこはまさに狙い通りといいますか。プリルンは身体が小さいので、肺も小さいはずだと思ってて。だから自分が普段歌うときの3分の1や2分の1くらいで息継ぎを無理やり入れて、“子どもが頑張って歌ってる感じ”を表現してみました。感想を見ているとき、それに気づいてらっしゃる人がひとりいらっしゃって。「息継ぎが細かくて子どもっぽくていい」と書いてあって「伝わってる!」と嬉しくなりました。私の友人からも「テーブルの上でスプーンをマイク代わりにして歌っているプリルンの姿が浮かぶ」と言ってもらえて嬉しかったです。
──息継ぎまでこだわっていたとは……!
南條:はい(笑)。セリフもこまめに(息継ぎを)取るようにしてるんですけど、セリフの尺が決まっているので「そこは一息でください」ってこともあって。そこは作品を作る上で仕方ないなと。ただ、自由なときは細かく息継ぎをするようにしています。
──すごい……! プリルンから伝わってくる天性のかわいらしさやピュアさは、南條さんの試行錯誤あってのものなんだなと改めて感じさせられます。一方で、妖精であるプリルンの声で歌うというのは難しさもあると思いますがどうなのでしょうか。
南條:テンションもキーも高めなので、最初は「歌えるかな?」という気持ちもあったんですけど、いざ歌い始めたら楽しすぎて。〈ぜんぶ オッケー GO!!〉のところも全然イケるって。「私、こんなに声が伸びるんだ?」と驚いたくらいでした(笑)。
その後「2人の声が合わさった仮の状態の音源があるよ」って仮ミックスの音源を聴かせてもらったときに、音痴に歌った部分がきれいに修正されてしまっていて(笑)。あえて音痴に戻してもらいました。普段は逆なんですけど「これはわざとです!」と(笑)。
──(笑)。まさに“キャラソン”という仕上がりですね。子どもたちが絶対に喜ぶだろうなって。
南條:あ、本当ですか。ここまでキャラソンらしいキャラソンって今日日滅多に出会えないというか。どちらかというと、キャラクターのイメージソングとして格好良く歌うものや、しっとり聴かせるものが多かったので、それももちろん楽しいのですが、キャラ要素100%でむしろお芝居っぽく歌える今回の楽曲は本当に楽しかったですし、子どもたちに一緒に踊ってほしいですね。もうできることなら、ライブ当日はプリルンの着ぐるみを着て歌いたいくらい(笑)。脳内では完全にプリルンとメロロンで歌っているので、人間体としてどう歌うか……。
──人間体(笑)。
南條:でもそういうギャップを感じさせないくらい、この曲の持ち味を聴かせることができたらと思っています。
キッスの声が曲に深みを出してくれている
──「なかよしJ♡YFUL」とは打って変わって、「Awakening Harmony」はシリアスで雰囲気もがらりと変わります。この曲の収録の時に、プリルンの記憶がなくなってしまうことを聞いたそうですね。
南條:実はこの曲を録った時点では、まだズキューンというキャラクターのキャラ絵しかない状態だったので、「どういう仕草をする子なんだろう?」「どんなテンション感なんだろう?」と想像するしかない状態で。この日は今(千秋)さん(シリーズディレクター)もいてくれたので、「どういう経緯でこの曲を歌うことになるんですか?」と質問したところ、「忘れる……!?」と一回ガーンとなって。でもだからと言って、ズキューンのキャラクター性が分かるわけではなかったので、この姿から想像して……。
「メインの3人よりは少しお姉さんで、かっこよさもあるけど可愛らしさも持っている。だから、どちらにも振れるように」と思い、声のラインを探りながら収録に挑みました。
正直“まだ未知数”の状態でした。ただ、キラキランドを救いたいというところは変わらなかったので、込み上げてくる熱い想いを意識していて。特に後半のサビに向けてどんどん感情を高めていき、最後は熱い思いを解放するように歌っています。
──高森奈津美さん(キュアキュンキュン役)からも「子どもたちにとって今まで聴いたことのないタイプの曲になるんじゃないか」とおっしゃっていました。確かにそうだなって。
南條:そうかもしれないですね。確かに「みんな一緒に!」と盛り上がる曲ではなく、シンフォニックでかっこいい楽曲ですよね。
──ふたりのハーモニーも、どこか神々しいというか。
南條:嬉しいです。キッスとの掛け合いや向き合う感じを大切にしてはいたのですが、ただ当時は、実際に2人の声が重なった時にどんなハーモニーになるのかはまだ分からなくて。本当に“今の自分にできる精一杯”を込めるしかなかったですね。
──実際に完成した「Awakening Harmony」を聴かれて、いかがでしたか?
南條:びっくりしました。みーちゃん(キュアキッス/メロロン役・花井美春さん)が、低めで艶があって奥行きを感じさせるような声で歌っていて。ミステリアスだけど怖くなく、優しさもあるという声色で「こういう声も出せるんだ!」と、みーちゃんの声にまず驚きました。めっちゃ素敵だなあって。ズキューン、キッスの声が合わさったときの雰囲気もすごく……なんていうんだろう。キッスが深みを出してくれて、ズキューンは高音の張りを担当するような形になって。ふたりの声が合わさると、本当にひとつの声のように聴こえて、すごく心地よかったです。
ただ、みーちゃんはハモったり主線にいったり難しいパートを担当してくれてるので、「支えてくれてありがとう」というか……。その“支えてくれる感じ”が、まるでキッスとズキューンの関係性そのもののようで、頼もしくてありがたかったです。
一人ひとりの“キミ”の人生に寄り添うような曲も
──アルバムには自己紹介曲である「We are!You & IDOL PRECURE♪」も収録されていますね。
南條:とっても賑やかで楽しい曲です。村瀬さん(東映アニメーションの村瀬亜季プロデューサー)が「アイドルだから自己紹介ソングは絶対やりたい」ということで、形になった曲と聞いています。私自身、自己紹介ソングを歌う機会はあまりなかったので新鮮でした。自分のパートを歌いながらも「他のみんなはどう自己紹介しているんだろう?」と気になって仕方なくて(笑)。聴いていると「早く次を聞きたい!」と思うのに、同時に「今歌っている人もじっくり聞きたい!」という気持ちもあって、すごく混乱していました。
ライブ当日は夢中になって聴いて自分の出番を忘れそうで怖いです(笑)。5人それぞれの個性が出た曲なので、すごく楽しいステージになると思います。
──さらに、プリキュアたち5人による「GARDEN」も。
南條:「GARDEN」は本当に歌詞が素敵で。『キミとアイドルプリキュア』というタイトルにある“キミ”という言葉は、この作品を一緒に楽しんでくれているすべての人を指していると思うのですが……その中には、きっと「誰ひとり置いてきぼりにしない」という気持ちがあるんだろうなって。大事にする特定の“キミ”、大事にされない“キミ”はいなくて、みんな大事で、キラッキラで、大好きな“キミ”。その“キミ”を置いてきぼりにしない感じが「GARDEN」には詰まっているなって。サビに「〈春と夏生まれにも〉〈秋と冬生まれにも〉と歌詞で具体的に呼びかけてくれるのも、自分のことを歌ってもらっているように感じられると思います。不特定多数の「みんなー!」って呼びかけではなくて、まるで自分だけを見てくれているような瞬間がある。
そんなふうに一人ひとりに目を合わせてくれるアイドルなんて、最強じゃないですか。その最強であり理想でもあるようなアイドル像が、この曲には表れているように思います。ひとりじゃないんだ、という温かさを感じられる。その温かさというのは「ほっこり」するというよりも、胸を打つような感動に近い。大人な曲だなって思いますね。小さい頃に「夏生まれの僕も歌ってもらった!」と記憶に残って、大人になったとき「やっぱり『キミプリ』好きだったなぁ〜」とふと聴き直したらものすごくグッとくるんじゃないかなって。何歳のときでも、寄り添う曲になるんじゃないかと思います。









































