
『キミとアイドルプリキュア♪LIVE2025 You&I=We’re IDOL PRECURE』開催記念リレーインタビュー 熊田茜音さん|「3人で歌うことで生まれる輝き方を、これからも見つけていきたい」【連載第2回】
「熊田茜音として歌っていい」時にはふたりの声をつなぐ役割も
──「『キミとアイドルプリキュア♪』ボーカルアルバム~We are!You & IDOL PRECURE♪~」に収録された、プリキュアシンガー3人による「いざ!アイドル」はどんな印象でしたか?
熊田:ライブを想像しやすい曲です。みんなで盛り上がれるだろうなって、サーキットで披露したときに確信しました。あの時はまだ試聴動画でしか出てなかったんですけど、お客さんの反応がすごくて「やっぱりこの曲はライブで映えるな」と思いました。もう乗って欲しいところも完璧で、曲に助けられているなと思います。コール&レスポンスも完璧に決まって、お客さんが自然に乗ってくれるんです。最初は「歌い分けがすごい!」と圧倒されたんですが、今では「ここでこの声が重なる」「ここで3人一緒になる」って、歌っていて気持ちよくなってきました。
──レコーディング時はどんな気持ちで挑まれたのでしょうか。
熊田:私が最後に録ったんです。だから2人の歌を先に聴くことができて。合わせなきゃいけないというプレッシャーはあまりなくて、「熊田茜音として歌っていい」と言っていただけました。そうした中で「石井さんと吉武さんの声をつなぐような感じで歌える?」というディレクションが入ることもあって。私の場合、声質が少し低いので、かっこよく歌いすぎると少し浮いてしまいます。だから2人の力を借りて、エッセンスを足すような気持ちで臨みました。
──「いざ!アイドル」は2人で歌う場面も多いですよね。
熊田:そうなんですよね。そういう意味では、「Light Up!」からの「いざ!アイドル」で良かったなって。「こうくるなら私はこうする!」っていうのが分かるというか。そこも歌っていて楽しいところでした。
──熊田さんの〈幻じゃない〉という優しい歌声が印象に残りました。プリキュアシンガーとして歩み始めた実感が映し出されているようにも感じていて。
熊田:わあ、嬉しい! あそこはすごくこだわった部分でして。強く歌うだけじゃないアプローチをしたかったんです。プリキュアシンガーになれて本当に嬉しいですし、これまで形のない「夢」に救われてきた自分だからこそ、歌える表現があるんじゃないかなって。
それと3人の歌割りを見た時、「ここを私が歌わせてもらえるんだ!」って感動しました。〈好きこそがススメのシルシ〉とか、それぞれにぴったりのフレーズが割り当てられていて。3人でも「この歌詞はちーちゃんっぽい」「あみちゃんっぽい」「熊ちゃんっぽいよね」って話すくらい共通認識があります。
──「いざ!アイドル」は〈最高のライブ 最高の時間 最高のオーディエンス ステージから贈ります〉と、本当にライブが似合う曲ですよね。
熊田:ほんとに!想像しただけでエモすぎます(笑)。〈最高のライブ〉という言葉がこの曲にぴったりだなと思っていて、ライブハウスサーキットで景色が広がったときに「あ、これだ!」って感じました。とても楽しい曲です。
「Wonder Flowers プリキュア」の歌詞が「刺さりすぎてしまった」
──今回のボーカルアルバムでは、「Wonder Flowers プリキュア ~Akane Kumada Ver.~」も歌われています。昨年度の「『わんだふるぷりきゅあ!』ボーカルアルバム ~We are わんだふる!!!!~」で吉武さんから始まったこの楽曲を、石井さんから引き継ぐことになったお気持ちは?
熊田:この曲についてめちゃめちゃ話したかったんです。歌った後、もしインタビューがあったらお話ししようと思ってメモするくらい気持ちがあふれていました。
そもそも「ゼロイチを作る」のではなく、「すでにあるものを受け継いで新しく表現する」という体験も初めてで。これまでのレコーディングはプロデューサーの方にジャッジしていただいて、それに応えるという形で進めてきたのですが……この曲の場合は、歴代のプリキュアシンガーの方々から託されてきた想いや歴史がある。プレッシャーはありましたが、それ以上に「自分はこう歌いたい」という気持ちが強く出てきたんです。プロデューサーの井上さん(井上 洸 氏/プリキュア音楽プロデューサー)からも「この曲に関しては、熊ちゃんの好きなように歌ってください。やりたいことをやってください」と言われていました。
ただ、歌う前に「歌詞が刺さりすぎて、泣いちゃうかもしれません」と伝えていて。泣いてしまうと鼻声になってしまうので、「そうなったら1回、止めてもらったもいいですか?」と。実際に途中でトイレに立ったりもしました(笑)。でも「この部分はこう表現したい」と細かく伝えたら、全部受け止めてくれて、「もっと深掘りしてみよう」と逆に広げてもらえたんです。これまでのプリキュアシンガーとしての活動の中で「こうしたい」とリクエストすること自体なかったので、めちゃくちゃ緊張してしまったのですが、「ここはどう思ってるの?」などとさらに深堀りしてくれて。録り終わったあと、お礼を言ってその場を去り、近くのファミレスに入ったのですが……「大丈夫だったのか!?」と頭を抱えてしまいました(苦笑)。
──(笑)一区切りついて感情がごちゃごちゃに。
熊田:そうなんです。終わってひとりになった瞬間に「歌わせてもらえた達成感」「表現を受け入れてもらえた喜び」、そして「言いすぎてしまったんじゃないか」という罪悪感が一気に押し寄せてきて。それで震えながら、井上さんに「ありがとうございました」とメッセージを送ったら、「向き合ってくれてありがとう」と返してくださって……もう涙が止まらなくなってしまいました。
──その言葉が大きな転機になったのではないでしょうか。
熊田:そうですね。私は人にどう伝わるかをすごく気にしてしまうタイプなんですが、「向き合ってくれてありがとう」と言っていただけたことで「あ、私はちゃんと向き合えてたんだ」って思えたんです。そこから「もっとできる」「もっと向き合いたい」と前向きに思えるようになりました。
──正しく向き合っているのだから遠慮もしなくて良いんだというか。
熊田:あ、本当にそうです! そう言ってもらえるなら、私はもっと向き合っていく!と決意を新たにしました。それがライブハウスサーキットの前の出来事で。だからこそライブハウスサーキットは自分の中の遠慮が取れた状態で臨めたところもあります。ライブハウスサーキットの最初のMCで言った〈キミ〉という言葉には、いろいろな想いを込めていて。「〈キミ〉を作ってくれたものが在るから〈キミ〉がいる。〈キミ〉が大事にしている音楽や歴史、ひと。今のこのライブの時間だけは全部抱きしめたいんだ!」って思いで伝えていました。「Wonder Flowers プリキュア」があったからこそ、言えた言葉だったと思います。
──さきほど「Wonder Flowers プリキュア」の歌詞が刺さりすぎてしまった、というお話がありましたが具体的なフレーズがあったんですか?
熊田:私、青木(久美子)さんの歌詞が大好きで。だからいっぱいあるんですけども……特に〈本当の強さって勝ち誇らない 傷ついた痛み知っているから〉というフレーズには救われました。あの頃、私自身も打ちのめされていたことがあって……でも全部が無駄じゃないし、その傷があったからこそ、今この曲を歌えるんだって思えたんです。あとは〈star seed〉という言葉が星の種という意味なのか、「スターシード」の意味なのか、青木さんに伺ったらスターシードという言葉だと教えていただいて。スターシードには生まれもった性質というか……そういう意味があるんです。その言葉の持つ意味に親近感を覚えていたので「ああ、この曲を歌う自分と重なる」と嬉しかったです。
──歌い終えてどんな気持ちでしたか?
熊田:不器用ながらも、自分なりの花を咲かせられたと思います。みんな違う咲かせ方があるから面白いですし、これからもそうやって続いていく曲なんだなって。歌詞に〈SOSのサイン見逃さない〉ってありますけど、それは自分に対してもそうありたいし、もし次に後輩ができる立場になったりしたら、その人に対してもそうでありたい。『プリキュア』は「こうしなきゃいけない」っていう決まりがあるわけじゃなくて、自分が生きてきたものと交わる中で受け継いでいくものだと思うんです。だから私は“プリキュア魂”をしっかり引き継いで、次に渡せるようにしたいですね。
──工藤真由さんがよくおっしゃられている“プリキュア魂”、本当に良い言葉ですよね。
熊田:本当に素敵な言葉です! ライブハウスサーキットのときに生で聞いて震えました。
──今回のボーカルアルバムで、特に気になる曲はありましたか?
熊田:「We are!You & IDOL PRECURE♪」ですね。実は「いざ!アイドル」のレコーディングを終えて(ブースから)戻ってきたら「もう1回入ってください」と言われて。「録り直しかな」と思ったら、この「We are!You & IDOL PRECURE♪」の声を入れてください、と。
──えっ!? 合いの手のところですか?
熊田:そうなんです。私たちの声が入っていて。当時は曲の存在も知らなかったのでちょっと困惑していたのですが、知らないからこそ、「本能で歌った」ところがあって(笑)。だからライブで初めて聴く人も「怖がらなくていいよ」と思えるような、不思議な安心感がある曲だと思います。だから完成したボーカルアルバムをいただいたときにも最初に聴きました。いったいどんな曲だったんだろう?って(笑)。そしたらすっごく楽しい曲で。参加できて嬉しかったです。







































