
聡実と狂児の関係性は、自分の感情を表に出さない「ドライ感」が魅力的。『カラオケ行こ!』堀江瞬さん×小野大輔さんインタビュー|リミッターを外して挑んだ「紅」の歌唱シーン
和山やま先生の『カラオケ行こ!』と『夢中さ、きみに。』が2作品同時にTVアニメ化! 全話好評配信中!
『カラオケ行こ!』は、合唱部の部長で、最後の合唱コンクールを控えた中学生「岡 聡実」が、組のカラオケ大会でビリになりたくないヤクザ「成田狂児」と出会う物語。狂児の歌の練習を通して、二人の関係性が変化していく、中学生とヤクザの奇妙なドラマを描いた作品です。
アニメイトタイムズでは最終話を迎えた本作の、聡実役・堀江 瞬さんと、狂児役・小野大輔さんのインタビューを公開! 演じるキャラや作品の魅力、そして本作の目玉ともいえる歌唱シーンの収録についてなど、たっぷりとお話を伺いました。
クールを通り越してシュールな作品。一方で、熱い人間ドラマも楽しめる
──『カラオケ行こ!』の原作を読んだり、演じてみて感じた作品の印象と魅力を感じた点をお聞かせください。
小野大輔さん(以下、小野):和山やま先生の他の作品は『女の園の星』などを読んだことがありましたが、『カラオケ行こ!』についてはオーディションを受ける時に読んで、「これも和山先生の作品なんだ!?」と初めて気付きました。唯一無二の絵柄で、キャラクターのすごい熱量を描いているはずなのに、どこかクールでシニカルな感じで。でもクスッと笑える瞬間が必ずあって、スタイリッシュさの中に、人間の熱い部分を描いているところが好きだなと思いました。
──和山さんは、ホラーマンガ家の楳図かずおさんや伊藤潤二さんの影響を受けているそうです。
小野:確かに楳図先生や伊藤先生の絵柄の、ガッと驚くところっぽいテイストの作画をされていますよね。
堀江 瞬さん(以下、堀江):友達に『カラオケ行こ!』と『夢中さ、きみに。』を熱心に勧められて、試しに『カラオケ行こ!』を読んでみたところ、聡実と狂児の関係性に焦点が当てられていて、一つの人間ドラマとして楽しめる作品だなと思いました。
また、和山先生の作品の真顔でシュールなことを言ったり、したりするところも好きで。
小野:確かに、クールを通り越してシュールだね。
堀江:そういう雰囲気が読んでいて、とても楽しくて。役が決まってからは、「この空気感を、僕がお芝居として声をのせる時にどう表現すればいいのかな」とドキドキしていました。
狂児はヤクザなのに哀れみを感じない、カッコいい男。小野さんが好きなB’zの曲とは?
──演じるキャラクターの印象についてお聞かせください。まずは小野さんからお願いします。
小野:狂児は極道なので、人の道を外れた生き方しかできない男で。そういう人たちは普通、もっと切羽詰まっていたり、悲壮感があったりして、同情したくなることもあると思うんです。でも狂児は、見ていても哀れみとかは一切感じなくて、ずっとひょうひょうと、淡々としていて。むしろ人生を楽しんでいたり、自分の境遇を遊んでいるような感覚があって。肩肘を張らず、力が抜けている感じがカッコよくて、男も惚れる男だなと。
でも、こういうキャラを演じるのは難しいですね。僕は極道だった経験もないですし(笑)、僕が生きてきた人生と性格とはまったく真逆な人なので、「どう演じようかな?」と。
あと、彼が唯一カッコよくないところは歌がヘタなところですが、僕は今まで、キャラソンとして主題歌や挿入歌を歌ったことはありますが、その時は当然うまく歌わなければいけません。これまでは作品の邪魔にならずに寄り添うように歌ってきましたが、今回は逆にヘタに歌わなければいけなかったのが、すごく難しかったです。悩んだ時に一つヒントになったのは、彼と似たところを見つけたこと。狂児はX JAPANの「紅」がすごく好きということで、自分のキーに合っていないのに、ずっと歌い続けてきて。僕もB’z(正式なアクセントで)が好きなんですが、キーがまったく出せないんです。
──ボーカルの稲葉浩志さんのキーはすごく高いですからね。
小野:それなのに、高校生の時にカラオケに行った時は無理やり歌っていました。その時のことを思い出して、「狂児もかわいいとこあるじゃん!」って。そこからうまく掴めた気がします。
──ちなみに、B’zでよく歌う十八番の曲は?
小野:「Ultra Soul」とか「愛のままにわがままに 僕は君だけを傷つけない」がすごく好きなんですが、まったく歌えなくて。カラオケだと自分に合うキーに下げられるので、「悔しいな」と思いながら、4つくらい下げています(笑)。でも「いつかのメリークリスマス」だけは原音のキーで歌えるんです。なので、B’zを歌いたくてもキーが出ない人にはこの曲をオススメします(笑)。
聡実は見た目とは裏腹に激情が渦巻く男の子。過去の自分と重ね合わせながら収録
──続いて、堀江さんから聡実の紹介をお願いします。
堀江:聡実はかわいらしい子だなと思います。見た目もティーンの雰囲気がある、等身大の男の子だなという印象です。それとは裏腹に、嫉妬深くて、心の中に激情みたいなものが渦巻いているのがすごく人間らしくて。演じる上でそこが指針になりました。
小野:確かに、そういうところあるもんね。
堀江:バレてましたか?(笑)
小野:堀江くんのお芝居を見ていて、「堀江くんって、そんなに熱さがあるんだ!?」と思ったし、その爆発力がすごいので驚きました。役者としてすごいなと。
堀江:嬉しい。僕は学生時代に陸上部に入っていたんですが、入部したての頃は何も知らずに始めたばかりなのに待遇が良くて、少しだけちやほやされていました。そこから学年が上がるにつれて、もっと速い後輩が出てきて。僕は長距離走をやっていましたが、最初は後輩の前を走っていたのに、いつの間にか、後輩の背中を追いかけるようになっていきました。悔しい気持ちはありつつ、当時はその気持ちに真っすぐに向き合うのはダサイと思って。より自分がみじめになるからちょっと目を逸らして、「でも俺、練習ちょっとサボっていたしな」とか言い訳したりして、自分の心を平常に保とうとしていました。そんな「青春のひずみ」みたいな部分が聡実くんにもあるというのが、過去の自分と重なって、心をリンクさせながら演じられたかなと思います。
──聡実は会話のセリフに加えて、モノローグも多いので、大変そうだなと思いました。
堀江:セリフ数は結構多いんですが、不思議とあまり気にならなかったです。それは、モノローグの部分は本線(の収録)では飛ばして、僕だけ残って、最後にまとめて一気に録るやり方だったため、本線では会話だけに集中できたことが大きかったのかもしれません。なので、「自分、めっちゃしゃべってるわ~」と感じることはほとんどありませんでした。今言われて、「確かにそうだったかも?」と。
小野:いや、セリフ量はすごく多かったよ! もしかして君は記憶喪失なの?(笑) でも「どうやろう?」と考えたり、迷ったりすることなくやっていたからかもしれないね。
堀江:そうなんですよね。
小野:本線は全部、関西弁のままでやる方向性で、モノローグは心情なので標準語にして、後でまとめて録ろうという段取りが最初に決まったんだよね。
堀江:そうでした!
小野:それがきっと功を奏したんだね。
堀江:確かに。会話をしていく中で、ところどころにモノローグを挟んでいたら気持ちが途切れてしまうので、この方法を提案してくれた、音響監督の木村さんに感謝ですね。























































