
吉乃さん×ユリイ・カノンさんが共に紡ぐ“愛と執着”の歌――秋アニメ『私を喰べたい、ひとでなし』OPテーマ「贄-nie-」制作秘話とメジャーデビュー2年目の覚悟に迫る!
「私の人生の主役は私」――ファンに背中を押されて掴んだ自信
──吉乃さんは今年の10月4日にメジャーデビュー1周年を迎えました。振り返ってどんな1年でしたか?
吉乃:秒で過ぎ去った1年でした(笑)。ここまでタイアップを色々やらせていただけるとは思っていなかったですし、「街中で曲が流れてたよ」と言ってもらえる機会も増えて、すごく嬉しいです。これまで5年間歌い手として活動してきたので、今はその頃からのファンの方の分母が多いと思うんですけど、ここからはタイアップから知ってくれた方もどんどんライブに遊びに来ていただけるぐらい、みんなの胸を打つような音楽を歌えたらと思っていて。もっともっといろんな人の日常に食い込んでいけたらなと思います。
──そんななか、8月29日にはオリジナル曲中心のライブ「1st LIVE "逆転劇"」を開催。ステージをより広く使ったり、ダンスを披露したりと、新しいチャレンジも多かったみたいですね。
吉乃:オリジナル楽曲をライブで歌わせていただくのは初めての機会だったので、とても緊張しました。しかも想定外のトラブルが多くて、イヤモニの調子が悪かったり、オケが途中で止まっちゃったり、いざ本番で衣装を着てパフォーマンスしてみたら、髪の毛が衣装に絡まって顔を上げられなくなる、みたいなこともありました。
──ええっ! 大変だったんですね。
吉乃:「贄-nie-」を初披露した時も、最初の膝をつく振り付けのところで、背中のポケットに入れてたイヤモニがスポーンって飛び出てしまって、右手で拾って、しばらく右手にイヤモニを持ったまま歌ったので、やりたかった振り付けができなかったり。これまでのライブではトラブルが何もなかった分、すごく勉強になりました。もちろん悔しくはあったけど、でも全然ダメというわけではなかったし、動揺して「もうダメだ……」みたいにならなかったのは、やっぱり観客の皆さんがいたからだと思うんです。みんながライブの始まる直前に「よ・し・の!」って手拍子しながらコールをしてくれたり、オリジナル曲でも大きな声でコール&レスポンスをしてくれて。いつもそうですけど、観客の皆さんにすごく支えてもらったライブだったし、トラブルが続いても挫けずに最後まで楽しくできたのは、ファンの方のおかげだなってすごく思っています。
──ちなみに“逆転劇”というライブタイトルは、ある種、自分自身の人生を変える覚悟を込めたものだと思うのですが、その心意気みたいなものはライブを通して表現できたと思いますか?
吉乃:正直、“逆転劇”というタイトル自体、自分でも壮大だなと思うので、せめて“どんでん返し”くらいにしておけば良かったかな、といまだに思っているんですけど(笑)。でも私は、ずっと自分が「吉乃」という存在に成り切るきっかけを待っていたといいますか。
──というのは?
吉乃:Zeppでライブをやらせていただいたり、タイアップをやらせていただいたり、ファンの方の熱心な応援を見る中で、どこかで自分の認識を変えなくてはいけない、ちゃんと覚悟を持って活動しなくてはいけない、と思っていたんです。今回の ユリイさんだけでなく、いろんな作曲者さんに楽曲を書き下ろしていただける環境は本当にすごいことだし、そういうことをちゃんと受け入れた上で感謝して生きていかないといけない。となった時に、自分のことをいつまでも自分が卑下してはいけないなと思って。でも、それを辞めること自体が、自分の中ではすごく大きな決断というか、ありえないことだったんですよ。今でこそステージだけでなく、日常生活でも堂々と振る舞うようにしていますけど、この活動を始める前の頃、数年前までの私は、暗かったし、卑屈だったし、人と目を合わせて喋ることができなかったんです。
──今はちゃんと目を合わせてお話してくださってますけどね。
吉乃:本当に高校時代とか、人と目をみて喋った記憶がないんですよね。いつも斜めとかに視線を落としていて、生きていく上で自信を失う経験が色々あったなかで、活動を始めたあたりから少しずつ人間としての自信みたいなものを取り戻していって。それで「今だったら大丈夫かな」と思って付けたのが“逆転劇”というライブタイトルでした。自分的にはそれぐらい覚悟のいることだったんです。
──人生を変えるほどの転機だったと。
吉乃:ライブのMCでも少しお話したんですけど、私は自分の人生を一つの劇みたいに捉えている節があって。私の人生の主役は私、みんなの人生の主役はみんな。観客の皆さん一人一人にも、私にも、これまでの道のりがある中で、それが少しでも違っていたら、交わらない未来だって全然あったわけじゃないですか。そういういろんな物語が交錯した中で、今みんなでこのライブ会場にいれるんだよ、という意味も込めたのが“逆転劇”。それを経て何が変わったかを答えるのは難しいですけど、自分の中の自分の認識みたいなものは明らかに変わりました。
──ということは、今は「吉乃」という存在に成り切った感覚があるわけですか?
吉乃:そうですね。私が勝手に「私は吉乃だ」と思えばよかっただけかもしれないけど、そのきっかけだったり、最後の背中を押す作業を、皆さんにやってもらった感じで。なので前とは全然違うかなって思います。
──“逆転劇”のその先、デビュー2年目以降の活躍も楽しみにしています。
吉乃:ありがとうございます!今はいろんなアニメ作品を観ている方が多いので、例えば「『来世は他人がいい』のエンディングを歌ってた人か」みたいな感じで、吉乃の声や存在を覚えてもらう時期だと思っていて。私の場合、タイアップ作品によって曲調も歌い方もガラッと変わるので、若干覚えにくさはあると思うんですけど(笑)、いつか、曲を聴いただけで「あ、吉乃だ」って分かるぐらい、たくさんの人に私のボーカルを覚えてもらえたらすごく嬉しいです。
[文・北野創]
「贄-nie-」楽曲情報
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