『東島丹三郎は仮面ライダーになりたい』連載インタビュー第10回：島村一葉役・鈴村健一さん 後編｜昭和ライダーが「物事を面白く捉える方法は幾らでもある」と教えてくれた

2025年10月4日（土）より放送中の『東島丹三郎は仮面ライダーになりたい』。

「仮面ライダーになりたかったから」 40歳になっても本気で「仮面ライダー」になろうとしていた男・東島丹三郎。その夢を諦めかけた時、世間を騒がす「偽ショッカー」強盗事件に巻き込まれてしまい……。『エアマスター』『ハチワンダイバー』の柴田ヨクサル先生の漫画を原作とする「仮面ライダー」を愛しすぎるオトナたちによる“本気の仮面ライダーごっこ”がここに開幕します！

アニメイトタイムズでは、各話放送後にキャスト陣へのインタビューをお届け！　第10回は、島村一葉を演じる鈴村健一さんに物語を振り返っていただきました。

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島村三葉はライダーマンを極めたい

ーー一葉の弟である島村三葉の印象をお聞かせください。

鈴村：最初は「ちょっとかわいそうな弟」という立ち位置なのかなと思っていました。「僕もV3やりたい」と言ったら、「お前はダメだ！」と言われてしまう。一葉に押さえつけられているというか。

鈴村：ただ、第9話で描かれた一葉と三葉のぶつかり合いを見ていると、だんだん「そうじゃないぞ」というのが分かってくるんですよね。そこが三葉の面白いところです。

一葉に決められた道を歩んでいるように見えて、意外と自立していますし、ライダーマンであることを肯定する過程の中で、「ライダーマンを極める」という方向へ進んでいく。そういう意味では、一葉よりもポジティブで、通常の感性も持ち合わせているバランスの取れた人なのではないかなと。一葉以上に格好良い人かもしれません（笑）。

ーー「ライダーマンが一番熱い」という言葉も印象的でした。

鈴村：いいですよね。僕もライダーマンが好きなんです。『仮面ライダーV3』においても登場回数はそこまで多くないのに、作品を語るうえではライダーマンは絶対に外せない存在。それこそ大人になって見返した時、「めちゃくちゃいいな」と思えるのがライダーマンというキャラクターなんです。実は、非常に“仮面ライダーっぽい”キャラクターでもありますし。

ーーと言いますと？

鈴村：V3って、1号・2号に改造されているので、石ノ森ヒーローのフォーマットには当てはまらないんですよ。

石ノ森章太郎先生の描くヒーローって、基本的に「自分を生んだ敵組織に立ち向かう反逆者」というテーマがあるんです。『サイボーグ009』や『人造人間キカイダー』もそうですし、基本的には創造主や同胞と戦う「同族殺し」的な要素がある。

仮面ライダー1号・2号もその系譜にありますが、V3は違います。対してライダーマンは、まさに「同族殺し」。彼はデストロン首領に育てられていて、デストロンという組織を信じていました。V3に諭されて共に戦うようになってからも、「俺にはできないかもしれない」と悩むような描写があります。そういった背景が熱いポイントなんです。

ーーその熱さを理解したのが三葉という訳ですね。

鈴村：そういう意味では、直情的な一葉よりも、三葉は本質を理解している気がしますね。三葉は合気道を使って、兄を超えようとする訳ですが、あれもまた熱い。

兄に負けた＝「ライダーマンであること」を認めざるを得なかった悔しさは忘れていないんです。それを受け入れたうえで、「ライダーマンとしてV3を超える」という目標を持てた。その姿勢が、三葉のすごく格好良いところだと思います。

ーー一葉も、そんな三葉を受け止めようとしているように見えます。

鈴村：そうですね。ただ、それが本当に三葉のことを思って言っているのかは分かりません。「俺はずっとV3だからな！」と主張しているようにも聞こえます（笑）。でも、それが“らしい”というか……。兄弟も友達も、彼にとっては同列に扱っているのだと思います。「V3」という視点でしか物事を見ていないですから（笑）。

ーー（笑）。三葉の側からすれば、「振り向いてほしい」みたいな気持ちも多少はあるのかなと思うのですが……。

鈴村：本当に奇妙な兄弟関係ですよね。一葉自身、他の感情がない訳じゃないですけど、V3愛が強すぎて……それしかないように見えます。

岡田ユリコが目指す“タックル超え”

ーー第10話は岡田ユリコが目指す、電波人間タックルとしての矜持が爆発する回となりました。鈴村さんから見た彼女の印象はいかがですか？

鈴村：丹三郎以上に孤高の存在ですよね。ずっと一人でタックルをやってきた訳ですから、やっぱり“ヤバい”のは間違いないと思います（笑）。

そのうえで、ちゃんと社会人をやっているところがすごいなと。丹三郎は夢に全振りですけど、ユリコは職業として先生をやっていて、それ以外のところではタックルもやっている。一言で言えば、“推し活”なんだと思います。

ーー推し活ですか。

鈴村：「自分もなりたいタイプの推し活」なんです。例えば鉄道系が好きな方で言えば、本当に鉄道会社に就職してしまうレベルの人たち。「運転手になりたい鉄」みたいな（笑）。

ーーたしかに、その例えはしっくりきますね（笑）。

鈴村：ただ、仮面ライダーが好きで、作品を作りたい、スーツアクターになりたいという方向ではなく、「仮面ライダーになりたい」って言ってる人はちょっとすごいですよね（笑）。その中でもユリコは、行き過ぎた推し活という点において、特に突出している気がします。男性が「ごっこ遊びを卒業できない」のは多少分かるんですけど、女性でここまで突き抜けているのはすごいです。

ーー昭和ライダーの中でも特殊な立ち位置にいる「電波人間タックル」を選んでいるのもいいなと。

鈴村：目の付けどころが良いですよね。ただ、タックルって『仮面ライダーストロンガー』の中ではあまり強くないんですよ。

ーーたしかに、あまり戦いに勝っているイメージはないです。

鈴村：ストロンガーに助けてもらうことが多く、怪人をバッタバッタと倒すようなシーンはほとんどないですよね。最後の最後に「ウルトラサイクロン」でドクターケイトを倒しますけど、それくらいです。岡田ユリコはあれが悔しくて、「本当に強いタックルを作りたい」と思ったんじゃないでしょうか。

丹三郎や一葉は、1号やV3“そのもの”になりたいんですよね。でも、ユリコだけは「タックル超え」をしたい。あのタックルよりもすごいタックルで在りたいんだと思います。

この現代社会において、その後のタックル像を自分で描こうとしている。その志の高さは、実は他のキャラよりも圧倒的に強いんじゃないでしょうか。そこがユリコのすごいところで、もしかしたら一番格好良いキャラクターかもしれません。

ーータックルの代名詞である「電波投げ」もユリコならではの技にアレンジされています。

鈴村：そうなんですよね。『仮面ライダーストロンガー』での「電波投げ」は、当時演じられていた役者さん（岡田京子さん）が殺陣が得意ではなかったようで、敵が勝手にすっ転ぶような演出になっていました。つまり、アクションシーンを簡略化するために生まれた技として有名なんです。

でも、ユリコの場合は、ガチで投げようとしています。その点では、既に“タックル越え”を果たしているという見方もできますね。