この記事をかいた人

- 藤崎萌恵
- 大阪府在住のライター。数年前にBLと出会い、心に潤いを取り戻しました。

本作で特に注目したいのは鈴木と杉木はもちろん、それぞれのダンスパートナーであるアキと房子の存在も。彼女たちのことをより大好きになったのは筆者だけではないはず。
鈴木とアキのあいだには家族に近い絆があり、過去に2人は付き合っていたこともありましたが、今は同志として共に同じ場所を目指しています。映画のアキはどこか姉のような母のような格好良さを見せ、鈴木の恋を温かく見守る姿も。
ダンスをしていると触れたところから杉木の感情が伝わってくる──そう語る鈴木を見ながら、アキが「恋してる人みたい」と微笑む場面。すると鈴木の携帯に杉木から電話が入り、なぜだか鈴木はアキに「見て」と着信音の鳴るその携帯を見せびらかします。これはもう、アキの言葉と微笑みが視聴者の声を代弁してくれているかのようでした。
この時、杉木はUKベストダンス選手権に出場しており、おすまし顔で鈴木に電話をかけたのは大事な本番前。「早く帰ってこいよ」と鈴木に言われて嬉しそうな顔を見せており、その傍らでそっと見守る房子がとても房子らしい。その後、きっと杉木先生は言われた通りすぐにイギリスから帰ってきたんですよね。
恋する信也たちがあまりに愛おしくてニヤニヤが止まらないのですが、原作でも鈴木と杉木の“可愛い”が随所に散りばめられており、映画での魅せ方にもキャラクターたちへの愛情が詰まっています。
多彩なダンスシーンが描かれる本作では、国内トップクラスのプロダンサー陣から、約半年から1年にわたる徹底指導を受けて撮影に臨んだといいます。大友監督は、ダンサーが踊るダンスではなく、“俳優が踊るアクターズダンスの最高峰”を目指すことを掲げて、竹内さんと町田さんへの絶対的な信頼を語っていました。
全身全霊でギリギリの境地まで突き詰めた先の美しさは格別。ボールルームのダンサーがラテンを習得する難しさも体現し、その逆もまた同じく。実際に10種のダンスを踊るシーンは、言葉が出なくなるほど胸に迫るものがあります。並々ならぬ覚悟をもって努力を積み重ねた人の姿は、いつだって人々の心を打ち、前を向く力を与えてくれるのです。
そして、絢爛豪華な美術、心理描写にも寄り添う音楽と光の演出、抜群のカメラワークで魅せる映像美にも圧倒されるばかり。ダンスシーンは特に芸術性が高く、エロティシズムと上品さの融合が、2人の信也の造形美を一層際立たせています。
濃密なストーリーを描く原作と真正面から向き合い、競技ダンスと愛を掘り下げながら、その真髄を映し出していく本作。困惑と葛藤と苦悩を経た鈴木と杉木が辿り着く境地は歓喜に満ちていました。映画はここでいったん幕を下ろしましたが、10ダンスの頂点を目指す彼らのダンス人生はまだ続いていきます。
| 作品名 | 映画 10DANCE |
|---|---|
| 放送形態 | 配信 |
| スケジュール | 2025年12月18日(木) Netflixにて |
| キャスト | 鈴木信也:竹内涼真 杉木信也:町田啓太 田嶋アキ:土居志央梨 矢上房子:石井杏奈 ダンス業界誌の編集者:浜田信也 ダンス業界誌の編集者:前田旺志郎 |
| スタッフ | 原作:井上佐藤「10DANCE」(講談社「ヤングマガジン」連載) 監督:大友啓史 脚本:吉田智子 大友啓史 音楽:横山克 撮影:佐々木達之介 美術:佐久嶋依里 加藤たく郎 人物デザイン監修・衣裳デザイン:柘植伊佐夫 照明:鈴木岳 編集:菊池智美 サウンドデザイン:石井和之 録音:川俣武史 VFXスーパーバイザー:白石哲也 キャスティング:杉山麻衣 社交ダンス監修:下田藍 エグゼクティブ・プロデューサー:佐藤善宏 プロデューサー:宮内貴子 石塚紘太 ラインプロデューサー:小泉朋 制作会社:エピスコープ株式会社 製作:Netflix |
| 公開開始年&季節 | 2025実写化映画 |
