
桑原 聖さん&中島ヨシキさんがアルバムの魅力や6年を迎えるグループについて語り尽くす! ロックバンドプロジェクト「Sir Vanity」2ndアルバム「cinéma」インタビュー
作詞・作曲へのこだわり。楽曲に散りばめられた意味に注目!
──桑原さんは作曲、中島さんは「プレタポルテ」「明日ハレるかな」「Dawn」「MUSIC」の全4曲の作詞をされていますが、この4曲について制作エピソードを教えてください。
桑原:「Dawn」は「Ray」を出した後、初めてのCDで1曲目を飾っています。「透明なわたし」は、年明け早々に「なまさば」(Sir Vanityの公式YouTubeラジオ)でメロディー選手権をやったんですよ。
視聴者にメロディーを選んでもらうコンペをして……それとは別に「初出しの曲で、Sir Vanityっぽい曲を書こう」と制作したのが「Dawn」でした。
中島:リード曲っぽい感じですね。
──タイトルには「夜明け」という意味があり、歌詞にある〈夜明け前 朝になる〉というフレーズとリンクしていると思うのですが、作詞する際に意識されたことを教えてください。
中島:自分の中で「難しい言葉をいっぱい使おう」というコンセプトがありました。意味がまっすぐ伝わらなくても良いから、ちょっとオシャレな感じに、と制作しています。「このアルバムにはこういう曲が必要だから」という作詞の意図はなく、色々な辞書を引いて言葉を検索して「この言葉かっこいいな」と知るところから作詞を始めましたね。
例えば、1行目にある「黒緋」は色の名前です。朝日や日没の陽って、普通の太陽より黒っぽかったり白っぽかったりするんですよ。黒緋は濃いめの色だと思うのですが、そんな意味から逆算して歌詞を書いていった記憶があります。
「絶佳」は「目を見張るほどの絶景」「美しい景色」の意味という意味があって、そういうかっこいい言葉を入れようと思いました。
──「帳」という言葉もありますよね。
中島:そうですね。帳も「夜の帳」と言ったり「夜明け」という意味があったりと意味としても通っていて、すごくコンセプチュアルな歌詞になったと思います。
桑原:ちなみに仮タイトルは「くだらねえ世界に灯をつけよう」でしたね。
中島:「灯をつける」というところからもイメージを湧かせていて〈流れる星を 導にしたら〉もロウソクの灯りから来たイメージですね。
──こちらの楽曲はメロディー先行だったのでしょうか?
中島:メロディーが既にあって、そこに言葉をはめていきました。
桑原:僕は、歌詞先行での制作があまり得意ではなくて。そっちの方が得意という人もいらっしゃるんですけどね。
──「Dawn」は、どのようにして音を作りましたか?
桑原:自分がつけたタイトルの通りで「暗闇の中に、もっと明かりが欲しい」というテーマで書いていました。気持ちを強く込めたというよりは、手癖でかっこいいものを作りたいという感覚で作っています。
中島:ピアノロックというか、Sir Vanityらしい音源だと思っています。
制作順にいうと次は「MUSIC」なのですが、この曲は2025年8月のライブの最後にやった曲です。
桑原:3月のファンミで「やりたいことは?」という質問があって。そのときに「ライブで新曲をやってみたい」という話があったので、実績解除しようかなと(笑)。
スタッフさんを交えてのライブリハーサルが、開催1週間前の2回ほどしかなかったのですが、1回目の時には存在していない曲だったので、誰も新曲の「MUSIC」をライブで披露するとは思っていなかったと思います(笑)。
中島:新曲をやる予定だったけれど、まだ曲が存在していないのでリハではできません、という状態でした(笑)。
前回のライブから半年経っていないくらいでの開催だったので、新曲がなかったんですよね。すると、3月のライブとあまり変わり映えしないような気がしてしまって、やれるなら新曲があった方が良いと思って、強めにリクエストさせていただきました。
「MUSIC」の曲ができた時点で開催まで1週間しかなかったので、そこから歌詞を書いて練習しなければいけない。次のリハーサルの日程までに歌詞を書いて、梅原君には歌ってもらわないといけないので、仮歌を録って共有して、梅ちゃんに覚えてもらう流れでした。
──そんなに短い期間で制作されていたとは……。
中島:この曲は「5年目のSir Vanityの音楽」というでっかいテーマが歌詞に込められています。
僕たちは基本的にアンコールをやりたがらないバンドで、予定調和のアンコールというものに全員が違和感を覚えている節があるんです。アンコールの練習をして、アンコール待ちの照明をつけて、お客さんも様式美として「アンコール!アンコール!」と言って、明かりがついて、メンバーがライブグッズのTシャツを着て戻ってきて「アンコールありがとう」と言う。いや「ありがとう」じゃないだろ、強要してるやん、と……。
そういうショーであることは認識していて、否定するわけではないけれど。自分たちがやる時にアンコールが巻き起きなかったら「そういうライブだったんだな」と思って反省するし、あるならそれに応えたいなという気持ちもあるから、あえてアンコール曲を用意しないんです。
桑原:疲れたら出たくないし、限界なら「出し尽くしたので勘弁してください」と挨拶だけして終わります(笑)。
中島:ライブが終わったら、客電をつけて「もうないですよ」というライブを毎回やっています。そういう強気な部分もありつつ結局、音楽やライブは見てくれる・聴いてくれる人に依存するところがあると思うんですよね。リスナーがいないと自己満足だけになってしまう。
基本的には音楽は自己満足だと思うんですけど、せっかくリリースする以上は、聴いてくれる人がいて、曲が良いと言ってくださる人が多ければ多いほどいいと思っているから、今のSir Vanityはどういう音楽ができて、こういうライブがやりたいんだというのを、不純物が混じらないように歌詞に込めました。
──第一声の〈聞こえていますか?〉が印象的だなと思っていたのですが、その後の〈アンコールじゃない 歌をうたおう〉という歌詞の意図が今のお話を聞いて分かりました。
中島:まさにそういうことですね。「俺たちの声が聞こえているのか」というのもそうですし、「みんなの声は出せるのか」というコールアンドレスポンスになっています。
一番最後はアウトロのシンガロングなので、初見のお客さんにもライブで歌ってもらおうと思っています(笑)。
桑原:(笑)。
中島:お客さんが知る由もない、影も形もなかった曲を急にライブで初披露した形になりました。「こういう部分があるから雰囲気で歌ってくれ!」というフリは、これからライブを重ねる中で定番になったらいいなと思って作りました。
基本的には「自分たちはこういう音楽がやりたい、こういうことをやっている、でも自分たちの音楽が何なのかをまだ模索している」という歌詞でありつつ、ステージとフロアがひとつになれるような曲として、今のSir Vanityの「MUSIC(音楽)」という大きなテーマで書いています。
桑原:梅ちゃんも「良い曲だなぁ」って。リハで歌い終わった後に言ってくれたのが印象的でした。
中島:曲を作った我々からしたら嬉しいですよね。
桑原:この曲は、なんとなくラフでメロディーを頭の中で思い浮かべて、こういうのをやりたいと思っていたものを残しておいて、それを8月に開いて引っ張り出してきて形にした流れだったんです。
その上で、すごく自分の理想に近いというかほぼ理想系の歌詞をあげてくれたなと思っています。明確に「ここだけ日本語にしたい」というような要望を出したりもしていて。
この曲は「音を止めないで まだ」というデモタイトルで作っていました。僕らの中でライブの最後にやる曲がなんとなく決まってきてしまっている感じもあったので変えたいと思っていたし「前向きな終わりにしたい」「Sir Vanityらしさを出そう」と思っていて。そのためにワンコーラスを1人に歌わせて、最後に変形のサビを2人で歌うという、自分の中では今までやったことのない曲構成で作ってみようと思いました。自分としても、このバンドの一番の魅力はツインボーカルのユニゾンのサビだと思っていますが、それを最後まで出し渋っていましたから(笑)。
中島:エモい!(笑)
桑原:それがこの曲でやりたかったことでした。そして最後にみんなのシンガロングが入るという構成が、今の自分が思い描く音楽の完成系かなと。24曲目にして、今だからできる曲でしたね。
あとは、ライブが近かったこともあり、演奏面でも難しいことはやらないという方針で作ったので、すごくストレートな曲になったと思います。










































