パンドラ全土を旅するような映像体験、ヴァランの恐ろしさと可愛さーー『アバター：ファイヤー・アンド・アッシュ』田村睦心さんインタビュー

ジェームズ・キャメロン監督が贈る世界的ヒットシリーズの最新作、『アバター：ファイヤー・アンド・アッシュ』が、12月19日（金）より公開中です。

舞台は神秘の星、パンドラ。地球滅亡の危機に瀕した人類が侵略を開始する中、アバターとして生きる元海兵隊員のジェイクは、先住民ナヴィの女性ネイティリと築いた家族を守るため、人類と戦う決意をします。しかし、そんな彼らの前に立ちはだかるのは、同じナヴィでありながらパンドラを憎む「アッシュ族」のヴァラン。彼女は人類と手を組み、復讐の炎でパンドラを焼き尽くそうと画策し……。

日本語吹替版には、シリーズを支える豪華声優陣が集結。ジェイク役の東地宏樹さん、ネイティリ役の小松由佳さんをはじめ、宿敵クオリッチ役の菅生隆之さん、子供たちを演じる早見沙織さん（キリ役）、バトリ勝悟さん（ロアク役）らが続投し、壮大な物語を彩ります。

本稿では、新キャラクター・ヴァランを演じる田村睦心さんのインタビューをお届け。役作りの裏話や作品の魅力について、たっぷりと語っていただきました。

3作目は「全部盛り」でお得？ 恐ろしさと愛嬌が同居するヴァラン

ーー完成した本編をご覧になった感想はいかがでしたか？

田村睦心さん（以下、田村）：日本語吹替版の3Dで拝見したのですが、期待以上でした。森、空、海、そして火山……それぞれの場所に自分が入り込んだような没入感があって。3時間を超える長編ですが、短い間にいろいろな場所へ旅行したような気分になれて、すごく楽しかったです。

ーー今回は火がテーマになっていて、まさに壮大な旅をしているような感覚ですよね。

田村：1作目は森、2作目は海がメインでしたが、今回はそのすべてプラス火山も見られるので、「3作目、めっちゃお得じゃん！」って（笑）。

特に空を飛ぶシーンは本当に飛んでいるみたいですよね。だからこそ、高所で襲撃を受けた時の臨場感もすごかったです。

ーー今回演じられた新キャラクター「ヴァラン」について、どのような印象を持ちましたか？

田村：最初は顔立ちがシュッとしていたので大人っぽいイメージで気持ちを作っていったんです。でも、「もうちょっと可愛らしい、少女感や未熟な感じを出してほしい」というディレクションをいただいて。「え、そっちなの!?」と驚きました。

実際に映像を見てみると、確かにちょいちょい可愛いところがあるんです。襲撃をするシーンなどは恐ろしいですけど、根底には「エイワ（パンドラの調和を保つ神のような存在）」に裏切られた辛さや悲しさがあり、素直さや可愛さがあるキャラクターだったので、その方向性を意識して演じました。

ーー悪役としての恐ろしさと、可愛らしさの両立を求められたわけですね。そのバランスを取るのは難しかったのではないでしょうか？

田村：そうですね。彼女は尻尾を掴まれて「泣き笑い」のような表情を見せたり、少し情けなくて間抜けな部分もあったりするのですが、そういう場面で笑っていると逆に怖かったりするじゃないですか。

例えば、ネイティリに捕まって首を狩られそうになるシーンで、「あー待って待って！」と焦るようなお芝居があるんです。そういう情けない部分はしっかり情けなく、でも攻撃する時はヘビのように粘着質に……というメリハリは意識しました。その「怖さ」と「間抜けさ」、そして「可愛さ」が同居している感じが出せていればいいなと思います。

クオリッチとの“怪しい”パートナー感と、憎めないロアクの人間味

ーーご自身が演じたヴァランとクオリッチの関係性についてはどう思われますか？

田村：怪しいですよね、あの2人！最初は「信用ならない」という感じだったのに、ヴァランは強い奴が好きなので、クオリッチの強さに惹かれていくんです。「俺と一緒なら天下取れるよ」と言われた瞬間のヴァランの目つきの変わりようはすごかったです。

利用するだけの関係かと思いきや、意外と仲良く一緒にいて、パートナー感があるというか。クオリッチの横でドヤ顔で歩いているシーンなんかは「可愛いな」って思いました。

ーー作中でも、クオリッチの印象は少しづつ変わりますよね。

田村：そうですね。ジェイクとのやり取りだけを見ると憎らしいんですけど、息子のスパイダーとのやり取りを見ていると、良い人の部分も垣間見えます。2作目までは「うわ、出た！」って感じの敵役でしたが、今回はジェイクにとってもヴァランにとっても、味方にいるとすごく心強い頼れる存在だと感じました。

ーー同じ父親という点では、ジェイクと比較してどう感じますか？

田村：うーん、クオリッチはやっぱり軍人気質で怖いですし、父親としてもあまり……と考えると、奥さん目線ではちょっと嫌ですね（笑）。ジェイクのほうが、厳しくても家族を第一に考えて「俺がいるよ」と言ってくれるので、私はジェイク派かもしれません。

ーー他に、田村さんが共感できるキャラクターや、関係性が気になった人物はいますか？

田村：ジェイクの息子であるロアクには、一番共感できるかもしれません。「余計なことをやっちゃう感じ」があって、見ていて「あいつがまた……」と思いつつも、どこか友達のような親近感を覚えてしまいます（笑）。

ロアクは規則やルールに縛られず、熱い友情のために無茶をしてしまう。いつもジェイクに「そこにいろ」と言われても絶対いないですし。それでも結果的に助けられているという、あの不器用さと素直さが愛されるポイントじゃないでしょうか。

ーーここからは収録についてもお伺いしたいのですが、アフレコで印象に残っていることや難しかったことはありますか？

田村：クオリッチ役の菅生隆之さんが先に収録されていたので、掛け合いができて楽しかったです。日本の吹替え現場には「みんなで一緒に録る」文化があるのですが、こういった世界的大作だと別別に収録になることも多くて。そこはやはり難しさがありましたね。

ーー最後に、ファンの方へメッセージをお願いします。

田村：『アバター』といえば映像美ですが、吹替版なら字幕を追わずにその美しい世界に没頭できるのでおすすめです。日本語特有のニュアンスも込められていますし、ジョーク的な部分も伝わりやすいと思います。

ヴァランの個人的なおすすめシーンは、銃をもらった時のリアクションです。すごく嬉しそうで、銃を持ちながら「ほわー！」って謎の威嚇をするんです（笑）。「もう私のものだ！」という強欲な感じと可愛さが出いると思います。

1作目、2作目と続く絆の物語が3作目でも大爆発しているので、ぜひ劇場で体感してください！

[文／失野]

『アバター：ファイヤー・アンド・アッシュ』作品情報

あらすじ

舞台は、神秘の星パンドラ──地球滅亡の危機に瀕した人類はこの星への侵略を開始。アバターとして潜入した元海兵隊員のジェイクは、パンドラの先住民ナヴィの女性ネイティリと家族を築き、人類と戦う決意をする。しかし、同じナヴィでありながらパンドラを憎むアッシュ族のヴァランは、人類と手を組み復讐を果たそうとしていた。パンドラの知られざる真実が明らかになる時、かつてない衝撃の“炎の決戦”が始まる！

キャスト

ジェイク・サリー：サム・ワーシントン（東地宏樹）
キリ：シガーニー・ウィーバー（早見沙織）
ロアク：ブリテン・ダルトン（バトリ勝悟）
クオリッチ：スティーヴン・ラング（菅生隆之）
ヴァラン：ウーナ・チャップリン（田村睦心）
ネイティリ：ゾーイ・サルダナ（小松由佳）
スパイダー：ジャック・チャンピオン（内田雄馬）
ツィレヤ：ベイリー・バス（内田真礼）
トゥク：トリニティ・ブリス（香月萌衣）
トノワリ：クリフ・カーティス（楠大典）
ロナル：ケイト・ウィンスレット（清水はる香）
ペイラック：デヴィッド・シューリス（山路和弘）

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