
「『MEMちょ』に選んでいただいたことは、私の声優人生の中でとても大きな出来事だったと思うんです」──TVアニメ『【推しの子】第3期』MEMちょ役・大久保瑠美さん【連載インタビュー第1回】
「『MEMちょは良い子です』って書いてあったんです」
──放送された第3期第1話ですが、MEMちょによるナレーションからの幕開けとなりました。
大久保:第3期は原作漫画9巻からの内容となりますが、漫画もMEMちょのナレーションからのスタートです。なので「このシーンから始まるだろうな」という予想はしていました。
また、アクアとMEMちょの対話のシーンも第3期の序盤に来るかなと思っていたので、前もって準備をしていたのですが、実際に演じてみると「アニメ制作陣はこんなビジョンを考えていたんだな」と感じるところもあって。
アニメ『【推しの子】』は、作品の深堀りをアニメでもしていくんです。もちろん原作のチカラを感じつつ、アニメ制作陣が「アニメでしかできないことをしよう」という気持ちが強い。
例えば第二十五話で、かなのことを話しに行ったMEMちょに対して、アクアが「話があるならまた今度」と躱そうとしますが、それに返すMEMちょの「今度っていつさ」というセリフは「もっと煽ってください」という要望をもらいました。「アクアが行かざるを得なくなるような言い方にしたい」「もっと煽っちゃってください」と。
続くシーンの「逆なのかもしれない」も、「今のアクアを見た、単純な感想でいい」とお話しいただきました。当初はもっと、MEMちょがアクアのことを考察した先にある「逆なのかもしれない」をお芝居として出していたのですが、そうではなくて。ただ「違ったんだ」「私はこう思ってたけれどそうじゃなかったんだ」「だからそんなに辛そうなんだ」「ごめんね」というニュアンスで……リアルですよね。言ってしまえば、私は原作を読んで先を知っているからこそ「考察のお芝居」をしてしまったのですが、MEMちょはそうではない。作り手側の考え方と、役者のお芝居の受け答えで第二十五話を作ることができたなと思います。
──その一瞬を生きているキャラクターを表現する、のような感覚なのかなと。
大久保:MEMちょも、アクアのことを理解していないから「なんでかなちゃんに冷たくするの?」と、話をしに行ってしまうんですよね。「突然避けるようなことをすれば有馬が傷つく」ということをアクアが気付かないわけがない、というところまではわかっていなくて。それは、MEMちょの気持ちが今、かなちゃんに寄っているからだと思うんです。
(黒川)あかね(CV:石見舞菜香)とアクアが付き合い始めたことを受けて、あかねにはアクアがいる、でも今のかなちゃんの隣には誰がいるの?と。だからどっちが、誰が大事?という話ではなくて、あかねもかなちゃんも、アクアのことも大事だけど、今はかなちゃんに寄り添いたくなってしまう。だから、アクアの気持ちに気がついたときには「ごめんね」という言葉が素直に出てくるんだと思います。
──あのやり取りの中で謝罪に行き着くMEMちょの精神性も並ではないなと思っていました。
大久保:シチュエーションを私自身に当てはめたとき「なんで私の友だちを傷つけたの!」と言いに行った場所で「ごめんね」という言葉が出てくるかと思うと……。
大人って意外と謝れないと思うんです。アクアとMEMちょは友だち同士でもあるので、大人同士の会話とは違うのかもしれませんが、良くも悪くも大人になるにつれて謝罪は重くなっていくし言い出しづらくなっていきます。それでも「ごめんね」と言えるのはMEMちょの人間の良さですよね。
……とあるお話の台本のト書き(セリフではない、演出や状況を示す文章・言葉)で「MEMちょは良い子です」って書いてあったんです。登場キャラクターはみんな良い子なのですが、これはスタッフさんからついつい漏れた感想なんじゃないかなって(笑)。ちょっと「フフッ」ってなりました。
──制作スタッフからの愛情を感じます。そんな現場で行われたアフレコはいかがでしたか?
大久保:もちろん良い意味で、1期、2期と比べて3期の現場はおしゃべりが少なかったかもしれません。1期は作品の走り出しということもあって、みんな少し浮足立っているといいますか、打ち合わせも多かった印象がありました。
──例えば、どのような打ち合わせを?
大久保:キャラクター決めにおいて、ルビーとMEMちょが並ぶシーンでは「元気で明るい」という印象が被ってしまうから「MEMちょをもっと幼くしてほしい」と言われたことがありました。「大久保さんが思う究極の可愛いがほしい」という要望だったので、実年齢を考慮した年齢感は守りつつ「可愛い」を作っていったんです。
その会話があったから……ちょっと自分で言うのは恥ずかしいのですが、今回の第二十五話でアクアと対話するシーンを見返したときに「私の声、可愛いかも」と思ったり(笑)。これまで自分の声を「可愛い」と考えたことがなかったのですが、きっとMEMちょが引き出してくれた声なのかなと思っていて。
素直なディスカッションができる現場だったので、第3期になった今はみんな安心しているといいますか。みんながどんなお芝居を持ってきてくれるのか、ある程度想像ができて、例え想像と違ったとしても対応ができる。信頼関係が構築されている現場だからこそ、1期のころより落ち着いていた気がします。
──積み上げてきたものがあるからこそ。
大久保:そうですね。また第3期ではおじさま方がいつもいらっしゃいました。五反田監督(CV:加瀬康之)や鏑木P(CV:てらそままさき)をはじめ、壱護さん(CV:江川央生)もようやく再登場ですから、みなさん明るくおしゃべりされていました。
──アフレコ現場では、大塚さんの隣に加瀬さんがよく座られていた、というエピソードを聞きました。
大久保:そうですね。ただ毎回ではなかったのですが、私も加瀬さんのお隣に座らせていただいていました。というのも加瀬さんと同じゲームをやっていて、加瀬さんから「編成どうすればいいと思う?」と相談を受けていて(笑)。
別の現場でお会いしたときも「『【推しの子】』に出ているんですけど、なかなか五反田監督とシーンが合わなくて……」とお話ししたら「MEMちょ! 会えてよかった!」と気さくに接していただいて。五反田監督にピッタリの方だなぁと思います。

































