
ループ、時間遡行、元の世界への転生——「時間」をテーマに作品を描く天壱先生×カレヤタミエ先生×雨川透子先生 インタビュー
物語の「その後」を描いている2作品
──1月25日(日)には、カレヤタミエ先生の『前世は魔女でした!① 〜現世は最強のお姫様、希望は家族円満です〜(以下、前世魔女)』と天壱先生の『純粋培養すぎる聖女の逆行Ⅰ.闇堕ち聖女×伝説の聖典(以下、ぴゅあ堕ち)』が発売となります。まずはそれぞれの大まかなストーリーを先生ご自身から教えていただいてもいいでしょうか。
カレヤタミエ:『前世魔女』は、かつてラプンツェルを育てた魔女が1度目の転生で家族の愛情を知り、2度目の転生でラプンツェルの娘・アーデルハイドとして赤ちゃんに生まれ変わるところから始まります。転生前の心残りもあって、序盤は愛するママ(ラプンツェル)のためだったら命はいらない、という暴走気味の赤ちゃんだったりします。
話が進むにつれて、前世の娘であるラプンツェルだけでなく、今の人生の中でも大切な存在が少しずつ増えていきます。そうした変化や成長そのものを魅力として感じていただける物語にできたらと思っています。
▲一度目の生で義理の娘だったラプンツェル(右)の娘に転生したアーデルハイド(左)
──アーデルハイドは前世が魔女という“最強の赤ちゃん”です。赤ちゃんらしくない“最強”の面がすごく魅力的で面白く感じました。
カレヤタミエ:本人は結構何でもできますが、望んでいるのはパパとママと平和に暮らすことなんです。「小説家になろう」での連載時、わかりにくかったという声もあったので、そこらへんは担当編集さんと話し合いながら手を入れて書籍版では結構変わっていると思います。ぜひWeb版との違いも楽しんでいただけたらと思います。
──『前世魔女』は、どこから着想を得たのでしょうか。
カレヤタミエ:もともと、私はグリム童話の『ラプンツェル』がすごく好きで、しかも魔女がかわいそうだと思っていたんです。わかりやすく悪者として描かれているパターンもある中で、魔女は本当に悪いことをしたのかと思っていたので、いつかそれをテーマに小説を書いてみたい気持ちがあったんです。
──魔女の視点からみると、魔女にも背景や自分なりの正義があったりするんですよね。
雨川:悪役にもこういう事情や考えがあったという背景を書けるのは、悪役令嬢ものの魅力ですよね。
──では、天壱先生から『ぴゅあ堕ち』についてお願いします。
天壱:『ぴゅあ堕ち』は、聖典を探す旅の途中で大切な仲間を全員失った聖女・エンヴィーが、最強の力で巻き戻る「やり直し×無双ファンタジー」です。
純粋すぎるからこそ闇堕ちしたエンヴィーが主人公なので、純粋すぎて他者への好意も悪意も全部純度100%になってしまうところが魅力です。
▲闇堕ちして最強の力を得た主人公エンヴィー(中央)
──作品を読ませていただきましたが、エンヴィーの仲間に対する愛がすごく強いですよね。
天壱:エンヴィーが大好きな仲間たちに向ける好意は、現代でいう“推し”への純度の高い愛を意識して書きました。恋愛にもなり得るけれど、恋愛じゃないからこその純度を大切にしています。
最初は偏った視点で物事を見ていたエンヴィーが、2周目でどう変わるのか、そこに注目して楽しんでいただけたら幸いです。
──天壱先生の『ぴゅあ堕ち』は聖女が一緒に旅に出た仲間たちを守るために“聖典”の力を使って時を戻しますが、どこから着想を得られたのでしょうか。
天壱:先ほどカレヤタミエ先生が『ラプンツェル』を例に出されたのと似ていますが、童話などは本当にハッピーエンドで終わったのかという疑問に着想を得ています。
みんなから讃えられる英雄や勇者たちも、旅の途中で大事な人を失っていたり、旅が終わった後の人生の方がしんどくなるのかもしれないと思ったのがきっかけでこの作品を書き始めたんです。
雨川:偶然にも、今回発売されるお二人の新作はいずれも「物語のその後」を描いている点が共通しているのが面白いですね。
ヒロイン像と創作の出発点
──『ぴゅあ堕ち』のエンヴィー、『前世魔女』のアーデルハイド、『ルプなな』のリーシェは3人とも強くたくましく美しく生きる女性で魅力的なヒロイン(主人公)という共通点もあります。
天壱:カレヤタミエ先生の『前世魔女』のアディ(アーデルハイドの愛称)も語らせていただくと、アディは過去の自分を省みたからこその強さや優しさが魅力的ですよね。
ちょっと歪さのある魔女が2度目の生で人への理解を深めて愛情を知り、3度目の生で人の心を持つことができる。その過程で生まれた家族への深い愛こそが、アディの魅力だと思います。
あと、単純にすごい魔法で解決するようなチートで終わるのではなく、自分で考えて答えを導き出して、それがたとえ自分が苦しむ手段だとしても大事な人のために動こうとするアディは最強ですよ。人間的な魅力が溢れる主人公だからこそ、読者さんも応援したくなるんだと思います。
▲今度は家族を幸せにするため、自分なりの活路を見出すアディ(右)
カレヤタミエ:ありがとうございます……! 『ルプなな』のリーシェは生きようとする力が強いですよね。たぶん、私だったら2、3回目くらいのループで人生を諦めてしまうと思いますが、何が何でも負けないと走り出すところに魅力があると思います。
それは、天壱先生の『ぴゅあ堕ち』のエンヴィーも同じ魅力があると思っていて、私自身も信じたこの道を進むというタイプのヒロインが大好きなんです。
▲信じた道を進んだ結果、以前とは違うルートを進み始めたエンヴィー(右)とアクセル(左)
天壱:『ルプなな』のリーシェは“人生がいくつもあったら”という誰もが一度は憧れることを、そのまま叶えてくれる主人公だと思います。それを実現させている時点で、読者さんからすると読んでいて気持ちの良い女性だと感じるのではないでしょうか。
私は強い主人公を考えようとすると物理に走ってしまうので(笑)。リーシェは知識と心、そしてこれまでの経験を自分のものにしてきた腕前という三拍子がそろった女性なので、そのヒロインを生み出した雨川先生を尊敬しています。
雨川:ありがとうございます! 恐れ多すぎて今すごく汗をかいています(笑)。
──皆さんのヒロインは強さや可愛らしさを兼ね備えていますが、執筆する際に何か意識されていることはあるのでしょうか?
カレヤタミエ:私は物語の展開を事前に綿密に決めるよりも、その時の登場人物の感情や動きに身を任せて書いています。更新する中で、キャラクターたちが自然と物語を進めてくれる感覚がありますね。
雨川:すごい! 物語に引っ張られるような形で書かれているんですね。
天壱:私の場合は、ヒロインがどのような価値観を持っているのか、どのような考えをしているのかを意識しています。表では理想的な人物を演じていても内面では動揺していたり、仕事だと理解しつつも自分の価値観とのズレに戸惑っていたり、そういう人間らしさみたいなものですね。
──雨川先生はいかがですか?
雨川:キャラクターの動かし方に関しては、キャラクターが生まれた瞬間から、ずっと頭の中でキャラクターが自由に動いている感じです。弱点や欠点もありますが、基本的にはそのキャラクターの推進力に任せています。
あとは、愛すべき突っ込み所を作るよう意識して書いていることが多いかもしれません。思わず笑いながら突っ込みたくなるような、愛すべき欠点、のようなイメージです。
天壱:いわゆる愛嬌ですね。
雨川:カッコよさと愛嬌は両立できるはず!と思っています(笑)。
──皆さんそれぞれ違う“強さ”があるヒロイン像ですよね。個人的には、特にリーシェが知識と経験で悪者を倒すシーンに爽快感を感じました。
雨川:私はとにかく、強くて美しい男性キャラを書くのが好きなので、まずは作品世界で1番強くて格好良い男性を作ります。そんなヒーローと渡り合えるヒロイン像を作ると、強いヒロイン像になりがちですね。
天壱:ヒロインがベースになったわけではなく、理想的な強いヒーローを先に作って、その人物に見合う女性像を考えるからこそ、リーシェのような強さとたくましさを備えたヒロインが生まれているんですね。着想はヒーローが先と聞いて納得です!
雨川:お二人はヒロインから作られるんですか?
カレヤタミエ:私はヒロインからですね。
天壱:私の場合は、物語の設定から作っています。旅を終えた勇者は本当に救われたのか、真っすぐすぎる勇者ほど闇堕ちするだろうな、といったことを考えたりしながら物語を作り上げていく感じです。
カレヤタミエ:先に舞台を作って、そこにキャラクターを当てはめていく感じですか?
天壱:そうですね。「こういう物語を書きたい!」という想いから始めることが多いので、そこから物語に合うヒロインとヒーローを作ることがほとんどかもしれません。だから、後から「ヒーローはこのキャラクター性で大丈夫かな?」と思うこともあったりします(笑)。
雨川:ヒーロー、ヒロイン、設定とちょうど3人ともバラバラになりましたね。他の方がどういう順番で物語を作られているのか伺う機会がないので、とても面白いです!
▲ヒロインを取り巻く人間模様も魅力な『前世は魔女でした! 〜現世は最強のお姫様、希望は家族円満です〜』
▲「聖典を探す英雄達の旅路」のその後を描く『純粋培養すぎる聖女の逆行』
▲強くて美しいヒーローも魅力な『ループ7回目の悪役令嬢は、元敵国で自由気ままな花嫁生活を満喫する』
カッコいいは更新されるもの、だからこそ難しい
──作品を執筆される中で、特にこだわっていることがあれば教えてください。
雨川:私は、なるべく人の言うことを聞かず、自分の練り込んだ要素のみで物語を構成することです。
雨川:だから、編集さんからの具体的な提案に対しては、ちょっと天邪鬼に『それ以上の面白いアイデアを絶対に考える!』と意気込んでしまいますね。自分からアドバイスを求めた時は、もちろん取り入れさせていただきますが!
カレヤタミエ:逆に私は特にこだわりは無いかもしれません。編集さんから「こういうのを書いてください」と言われたら、それを書こうとすると思います。
天壱:柔軟ですね!
雨川:すごい!
カレヤタミエ:そんなこと編集さんから言われないんですけどね(笑)。
天壱:私は先ほどもお話しさせていただいた通り、登場人物の価値観についてはすごく意識しています。作者である自分の価値観ではなく、登場人物が持っている価値観や常識に基づいた言動でないと、どうしても違和感が生まれてしまうんですよね。
例えば、いつも優しい人が悪い発言をすると、その瞬間は面白くても、物語全体では読者さんに違和感を与えてしまう怖さがあります。キャラクターが急に成長しすぎないように、また逆に急激に後退してしまわないよう意識していますね。一度輝いて格好良いイメージになったキャラも、もともとの価値観や経験に基づいた格好悪さや欠点を忘れないようにしています。
(C)カレヤタミエ/オーバーラップ イラスト:しょうじ
(C)雨川透子/オーバーラップ イラスト:八美☆わん

























































