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アニメ『違国日記』構成・脚本:喜安浩平【連載インタビュー第3回】

「その違いについても楽しんでいただけたら、この作品の世界が重層的に楽しめるのではないかと思います」──アニメ『違国日記』構成・脚本:喜安浩平さんインタビュー【連載第3回】

「日記は、思ったよりいいなって」

──本作のキーワードのひとつである「日記」にちなみ、喜安さんの日記にまつわる思い出をお聞かせください。

喜安:若いころは日記なんて全然つけられなかったし、学校の宿題で課されるような夏休みの日記は捏造していたタイプでした。そのころから物書きの素養はあったのかもしれません(笑)。読書感想文まで捏造してましたからね。

──読書感想文の、どのあたりを捏造するのですか……?

喜安:存在しない本の感想文を書くんですよ。読書感想文ってまず読むのが面倒くさいですからね。読まないまま書こうと思ったのですが、実在の本を想像で書いてしまうとバレるなと思ったから、世の中にない本を勝手に自分で想像して、それの感想文を書いたことがありました。小学生のころです。既存の児童文学をちょっといじったような。

それくらい、本当に書くことに執着がない人間だったのですが、この歳になって、ずっと日記をつけてるんですよ。もう本当に調子の悪い日は、起きた出来事をただ2、3行書き残すだけなのですが、それでも日記っていいなと思っていて。まさしく「灯台になる」んです。

──槙生の言う通りだったのですね。

喜安:書いてしばらくして、例えば何の気なしに一年前の日記を見たときに、ご機嫌なことを書いている自分がいると、なんだかちょっと安心するんですよね。「良いときがあったんだな」「別に、ずっと悪いわけじゃないんだな」って。「今日は〇〇の誕生日だった」のようなたった一言から、この日はその人の誕生日を祝ったんだとわかる。その日の自分は、ちょっと良いことをしていたのかもしれないと思えるんです。

そうしてログが残っていくのは良いことだなと思います。その日面倒くさくても書くし、3日ぐらいサボって書けていなかったら3日分を懸命に絞り出して、ストックしていた記憶をちょっとずつ書き残したりして、続けています。

でもそれって強制されてやるものではなくて、やはり自分の中の何かが出てくるときに書くものだと思います。だからいつでも書けるように手帳だけ持って出ていって、書いたり書かなかったりを繰り返しながら、だんだんと溜まっていくといいなと思っています。

日記は、思ったよりいいなって。それが今の私の感想です。

──日記をつけ始めたきっかけなどはあったのでしょうか。

喜安:仕事柄、どうしてもパソコンに向かっている時間が長くて、そのこと自体に疲れている自分がいるなと感じていたんです。たまにはパソコンではなく手書きがしたいなと思っていて。

最初は……たまたまSNSで見かけた星座占いの、ラッキーフードかなにかをメモしたことが始まりだったと思います。そこからアイデア帳のような扱いにもなりつつ、パソコンを打っていて出てきた、普段自分が絶対に手書きしない漢字を拡大して記述してみたり。盥みたいな。

そんなことをやっていくうちに「もう今日あったことを書けばいいや」と思って書き出したんです。だから最初から「日記を書こう」ではなかったんですよ。ちょっと特殊なケースかもしれませんが……。

──学生のころなどは煩わしさを感じていましたが、手書きも良いものだなと、最近感じます。

喜安:いいですよね。そうなってくると、例えばペンにもこだわりたくなってきます。自分に合うものを選ぶのも楽しかったり(笑)。

だから「書かなきゃ」と思うよりは、周辺の道具なども含めて楽しいようにやっていると、意外と続くかもなと思います。

……自分自身、ダイエットアプリなどにリマインドされるのがどうしても、無性に腹が立つタイプなんです(笑)。「わかってんだよ!」って思っちゃうから。だから毎日ではないですが、今日食べたものを書いている日もありますね。「俺、3日連続でハッピーターン食いきってるわ」みたいな日もあって、ダイエット効果がありました。

──日記を書くという行為はアウトプットですが、書くものによってインプットにもなっているのですね。

喜安:そうかもしれません。あとはもう、アウトプットに関してはカッコつけても仕方ないですからね。汚い言い方ですが、手帳はある種のお手洗いみたいなものですよ。自分に入ってきたものをそこに書き出してスッキリする。日記もその延長のような感覚です。

──日常の一部として気楽に書いてみろ、と。

喜安:そういう意味でも槙生さんの言っていることがすごくよくわかるんです。「書きたくないことは書かなくていい」と思うし、それが悪口だろうが何だろうが、書きたいなら何を書いたっていいと思う。

「この日あったことについて、こう思った」みたいに書かなきゃと思うことをやめれば、日記は書けるような気がします。

──ありがとうございます。それでは最後に、喜安さんが感じるTVアニメ『違国日記』の魅力を改めてお聞かせください。

喜安:監督をはじめ現場のスタッフのみなさまが『違国日記』という原作が持っている繊細さや温かさ、でもうっかり触れると指先が切れてしまうような鋭さ……そういったものを愛おしいと思って取り組んでいます。原作の持つ想いそのものを、動くアニメーションに起こせていると思っていますし、プロフェッショナルなスタッフたちが「アニメにする意義」を考えて動かしてくださっていると思います。

原作と通じるところと、あえて原作に手を加えたところ。もしご興味があったらその違いについても楽しんでいただけたら、この作品の世界が重層的に楽しめるのではないかと思います。

また個人的に、ですが、この後のお話で演出的に結構大変なんじゃないかなと思っている書き方をしたシーンが何個かあるので、僕も一人の視聴者として楽しみに待ちたいと思います(笑)。

【インタビュー:西澤駿太郎 編集:太田友基】

アニメ『違国日記』インタビューバックナンバー

|01

第1回:高代槙生役・沢城みゆきさん

|02

第2回:田汲 朝役・森 風子

|03

第3回:構成・脚本:喜安浩平

『違国日記』作品情報

違国日記

あらすじ

人見知りの小説家・高代槙生は、姉夫婦の葬式で両親を亡くした姪の田汲朝を、勢いで引き取ることになる。
思いがけずはじまった同居生活によって、それまで静かだった槙生の日常は一変。他人と暮らすことに不慣れな性格のため、15歳の朝との生活に不安を感じていた。
一方、両親を亡くし居場所を見失った朝は、はじめて感じる孤独の中で、母とはまるで違う“大人らしくない”槙生の生き方に触れていく。

人づきあいが苦手で孤独を好む槙生と、人懐っこく素直な性格の朝。
性格も価値観もまるで違うふたりは、戸惑いながらも、ぎこちない共同生活を始めていく。

共に、孤独を生きていく二人の、手探りで始まる年の差同居譚。

キャスト

高代槙生:沢城みゆき
田汲朝:森風子
笠町信吾:諏訪部順一
楢えみり:諸星すみれ
醍醐奈々:松井恵理子
塔野和成:近藤隆
実里:大原さやか

(C)ヤマシタトモコ・祥伝社/アニメ「違国日記」製作委員会
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