
最終回を迎えた今、制作陣がこれまでの旅路を振り返る──アニメ『グノーシア』リレーインタビュー第24回 監督 市川量也さん(domerica)×シリーズ構成・脚本 花田十輝さん×プロデューサー 木村吉隆さん(アニプレックス)
「人狼ゲーム」を作品に落とし込む難しさ
──人狼ゲームとしてのロジック面についてもお伺いしたいのですが、整合性はどのように詰めていかれたのでしょうか。
花田:基本的に、最初のほうのループは原作のチュートリアルの流れを追いかけつつ、どういった要素を後から入れていくかを考えるのがメインでした。「この回は人狼パートをシンプルにして、ドラマの部分を厚くしよう」とか、「もう少し人狼の駆け引きを加えてもいいんじゃないか」とか、そのバランスは毎回調整していましたね。
人狼の玄人からしたら「こんなの簡単でしょう」となるかもしれないけれど、ユーリくんのレベルだったらこういうミスもするよね、こんな初歩的なミスもきっとあるよね、というところで折り合いをつけていました。
木村:人狼ゲームとして正しいことと、物語として面白いことは、別の部分なんですよね。だから人狼監修の松崎さんにも入っていただいて、人狼のロジックとして間違っていないかを確認しつつ、物語の面白さを花田さんに追求していただくという、二重のフローで制作を進めることになりました。
市川:話が面白いのは花田さんの脚本で間違いないのですが、作っていて一番緊張したのは人狼パートに間違いがないかどうかですね。投票先、投票数など……映像が完成したところで1回寝かせて、時間を空けてから、もう一度見直す時間を設けるようにしていました。
花田:一番難しかったのは「人狼ゲームというものをどのくらいの人が知っているのか?」というラインの設定でした。
たとえば麻雀だったら「知っている人が見ればいいよね」で済ませられますが、人狼ゲームは「知っている人向け」と言いきれるほどみんなが詳しいわけではなく、かといってまったく人狼を知らない人にゼロからすべてを説明するのは困難です。このくらいであれば見てもらえるだろう、というラインをずっと探っていましたね。
エンジニア権限も人狼的には占い師になりますが、原作をプレイしていなければ「エンジニアって何?」となるので、とにかく序盤はその話ばかりしていた気がします。
木村:あと、コールドスリープ室でグノーシアが残っているか否かを即時判定するランプの設定については、なぜアニメで追加したのかは視聴者の方も気にされていました。そこは結構話し合いましたよね。
花田:最初に僕が「人狼ゲームって、人狼をすべて吊ったときにゲームマスターはすぐに勝敗を言うの? それとも翌朝になってから言うの?」と聞いたんです。そうしたら「どちらのパターンもあります」と言われて。それだと困るなと思ったんです。
『グノーシア』の場合、人間側が勝利の時は最後のグノーシアがコールドスリープされた直後にユーリはループする。ということは、そのタイミングでループしなかったらグノーシアがまだ残っている、とユーリは分かってしまうんです。
するとその後、空間転移までの時間にユーリはグノーシアが残っている前提で明日の会議に向けて行動出来てしまう。それはよくないよね、となってランプをつけて判定を同タイミングで全員が共有するという演出が生まれました。
木村:ランプの設定がなくなると、基本的には翌朝まで待って「みんな無事でした」という展開になるのですが、そうすると「頼む、当たってくれ……!」という手に汗握る瞬間を作りにくくなります。疑わしいものを凍らせたその瞬間に、当たっているか間違っているかをハラハラしながらその場で見届けるという演出は、アニメ的には非常に効いたものになったように思います。
花田:原作の描写としては、グノーシアをすべて排除した直後にイベントが発生することが多いんですよ。だからコールドスリープをした時点で「勝ち」を確定させたかった。翌朝までひっぱってからイベントという段取りは、どうしてもアニメ的には不自然になりますから。
木村:第4話~第6話あたりは人狼のチュートリアルが中心なので、視聴者の方がついてきてくださるだろうかというのは気になっていました。シナリオとして抜群に面白いのはわかっていたんですが、基本的には人狼を繰り返す構成なので、そこがとっつきにくく感じてしまわないかなと。
第7話で乗員が揃ってからはがらっと雰囲気も変わるのですが、そこにたどりつくまでの情報量が多かったので、ドキドキするポイントではありましたね。
市川:ざっくり「面白いことが起きているようだぞ」というのが視聴者の方に伝わるように、というのは心がけました。それは音楽の力もありますよね。勝っているときは勝っている音楽がかかるし、負けているときは負けている音楽がかかる。
木村:そこは音楽の深澤(秀行)さんと音響監督の納谷(僚介)さんのおかげですね。すべての議論はロジックで作っているので、そこに破綻はないのですが、さらっと見ると「?」となる方もいらっしゃると思いました。それでも展開が伝わるように、音楽で状況をサポートしようというのは現場の意識としてありましたね。
花田さんが考える“ユーリ”というキャラクター
──ユーリを「応援したいと思える子にする」という方針が以前のプロデューサー対談でも語られていましたが、具体的には花田さんはどのようなことを考えられていたのでしょうか。
花田:序盤のユーリはずっとやられっぱなしなんですよ。みんなに騙される。だから、騙されても心が折れないような子でないといけない。それでもめげずに「誰かのために頑張っている」という部分が担保としてないとダメだろうなというのが、ひとつ。
後は特に序盤、どうしても複数の女性の中から投票先を選ばなきゃいけないシチュエーションが続くので、邪な考えで選んでいるように見えてしまってはいけない。そこから固まっていったのが、ちょっと幼さがある一生懸命な男の子、という方向性でした。
仮にイケメン男性キャラにしてSQに迫られた時、チラッとでも胸を見て投票先決めたら応援する気なくなっちゃうじゃないですか。だから僅かでもそういう可能性を想起させるキャラクター造形は絶対にダメ。と結構強く主張した記憶があります。
木村:キャスティングについても、そういった男の子を演じる上で、男性声優の方がいいのか女性声優の方がいいのかという話はありました。
市川:安済(知佳)さんに演じていただいて大正解だったと思います。男性すぎず、女性すぎず、性別にとらわれないバランスがうまくいっているように思いますね。
──女性としてのユーリの登場は、そもそもどういう意図や背景があったのでしょう?
木村:ことりさんから男性、女性、汎のキャラクター原案をいただいたので、せっかくなら3パターンとも活かしたいよね、というのが入口でした。
性別が変わるという設定は、物語としては剛腕なところもあるかと思うのですが、銀の鍵がループさせているという設定や、ユーリがバグであるという設定から、うまく作品の中に落としこむことができたのではないかなと思っています。第20話には汎のユーリもちらっと登場していますね。
──第14話のAC主義者が加わる回では、15人全員が登場して会議をするという構成が話題になりました。
木村:この前後編がはじめて、前編でロジックのミスがあると、後編でとりかえしがつかなくなるという話数なんですよ。第14話を納品してから、第15話を納品するまでにはすこし時間があるのですが、その間ずっと「第14話、なんか変なこと言ってないよな。大丈夫だよな」とドキドキしていました。第15話の放送を終えて、矛盾がなかったとわかったときは、心底ほっとしましたね。
市川:第14話と第15話は、本当の意味でワンシチュエーションの会話劇で、しかも人狼のロジックがわかっていることが前提のエピソードになります。観ている方にとっても情報量が多く、かなりハードな回だったなと。
木村:全員登場の人狼回で、さらに身内切りという要素が入ってきますからね。ここまではずっと「グノーシアがグノーシアを追いつめることはない」という前提で進めてきたので、それをひっくりかえす驚きはあったかなと思います。
しばらくロマンスのエピソードが続いて「会議はどうした!」という反応も結構あったので、そういうときは「もうちょっと待って……!このあとあるから……!」という気持ちでした(笑)。
花田:脚本を書く立場としても、15人が1つの会議室にいる回というのは本当に大変で。書きながら「これで本当に映像化できるのだろうか?」と思っていました(笑)。
市川:映像化という意味では、画作りだけではなく、音楽も大きかったと思います。第16話でユーリがバグと明かされるシーンでは、深澤さんにフィルムスコアリングをお願いしています。
通常は40曲くらいある劇伴の中から映像に合うものをあてていくのですが、あのシーンだけでは映像に合わせて、音楽を新しく作っていただきました。空間が壊れていくような演出がうまく表現できているかなと。
木村:あのシーンのために演奏者の皆さまをお呼びして、生演奏でレコーディングしていただきました。音響監督の納谷さんが「ここはもう空間として壊れているから、通常の劇伴は当てられない」とおっしゃって、じゃあ作ったほうがいいだろうという話になったんです。






































