
最終回を迎えた今、制作陣がこれまでの旅路を振り返る──アニメ『グノーシア』リレーインタビュー第24回 監督 市川量也さん(domerica)×シリーズ構成・脚本 花田十輝さん×プロデューサー 木村吉隆さん(アニプレックス)
2025年10月11日より放送がスタートしたTVアニメ『グノーシア』が先日、ついに最終回を迎えました。
舞台は宇宙を漂う一隻の宇宙船、星間航行船D.Q.O.。人間に擬態した未知の存在「グノーシア」を排除するため、乗員たちは毎日1人ずつ、話し合いと投票によって“疑わしき者”をコールドスリープさせていきます。
しかし、主人公・ユーリは、どんな選択をしても“1日目”に戻ってしまう──そんなタイムリープの渦中にいました。
極限状況の中で交わされる会話を通じて、少しずつ明かされていく乗員たちの本音や秘密。信じるべき相手は誰なのか。何が正しい選択なのか。繰り返されるループの先に待つものとは──。
人狼ゲームをベースにしながらも、SF要素やキャラクタードラマを掛け合わせた独自の体験型ゲームとして熱狂的な支持を集めてきた『グノーシア』。最終回を迎えた今、制作陣は何を思うのか。
第24回は、監督の市川量也さん(ドメリカ)とシリーズ構成・脚本の花田十輝さん、そしてプロデューサーの木村吉隆さん(アニプレックス)に、本作のはじまりや制作における裏話などを語っていただきました。
最終回を迎えた今、アニメ『グノーシア』を改めて振り返る
──最終話の放送も迎え、SNSでは大きな反響が続いています。視聴者の反応をご覧になっていかがですか。
プロデューサー:木村吉隆(アニプレックス):10月から放送を続けてきて、どんどんファンの方が増えていった実感があります。ゲームをプレイ済みの方もいれば、未プレイだけどアニメを見ている方、途中からゲームを始めた方、アニメを完走するまでゲームは温存しているという方もいらっしゃったり。本当にありがたいことだと思っています。
監督:市川量也(domerica):第18話のオンエアタイミングで、第1話のときと同じく27分全編通しでお届けするという告知を出したとき、SNSの反響が大きかったですよね。今作はファンアートを描いてくださる方がとても多くて、熱量の高さを感じました。
原作を知っている方も、原作にはない展開を楽しんでくださっていて、毎週リアルタイムで熱を共有しているような感覚がありました。視聴者の皆さんと一緒に作品を作っているような感じで、それが何より楽しかったです。
シリーズ構成・脚本:花田十輝:僕が印象に残っているのは、先輩のレジェンドと呼ばれるライターさんが見てくださっていて。その方の感想が「さっぱり何がなんだかわからないけど、とにかく毎週面白い」というものだったんです。
原作をプレイ済の方と未プレイの方とで反応が大きく違うところがあったりして、そういうところは見ていて「なるほどね」と思うことがたくさんありました。そういう意味でも面白い作品だったように思います。
──そもそものお話として、木村さんが花田さんにオファーされた経緯からお聞かせいただけますか。
木村:『グノーシア』に触れたときに、最初に思いだしたのが『STEINS;GATE』だったんです。自分はリアルタイムでアニメ『STEINS;GATE』を見ていた世代で、花田さんはそのシリーズ構成・脚本を手がけられていました。花田さんはそういったタイムリープものや、『宇宙よりも遠い場所』といったオリジナルアニメも手がけられていて。
プレイヤーごとにランダム要素のある『グノーシア』を1本のTVアニメとして成立させつつ、余白の部分をアニメオリジナルでふくらませていただける作家さんと思って、オファーをさせていただきました。プロデューサーとしてはもちろんのこと、1人のアニメファンとして「花田さんが手がける『グノーシア』は見てみたい!」とも思っていました。
──花田さんは、最初に原作に触れられた際にどのような印象を持たれましたか。
花田:人狼ゲームを1人用のゲームに落としこむ際に、宇宙船の中というシチュエーションをもってくるアイデアがすごいなと思いました。1人用の人狼ゲームということは、何回も人狼をやらないとゲームとして面白くならないわけです。
「それならループものにしてしまおう」という発想が尖っている。インディーゲームならではの、良い意味での鋭さを強く感じました。ちょうど同時期にアニメ『天穂のサクナヒメ』のシリーズ構成もお話をいただいていたのですが、インディーゲーム原作はどれも鋭くて、やりがいがあるなという印象でした。
──トゥルーエンドに向かう全体の設計は、当初から決まっていたのでしょうか。
木村:そうですね。方針としては割と最初の段階で固まっていました。
花田:ノーマルエンドで終わったままではさすがに可哀想でしょうと(笑)。
木村:話数の細かいところは最初に決まっていたわけではないのですが、花田さんが最初期にシリーズ構成を切ってくださったんです。3ブロックに分けてくださって。そのときからノーマルエンドを経て、トゥルーエンドに向かう設計が盛りこまれていました。
花田:普通のアニメだと「全〇〇話でやってください」というオーダーが最初にあるんですが、今回は「何話必要ですか?」と先に聞かれたんです。これは本気だなと(笑)。
最終的に良い作品になるかどうかはクリエイターの熱量はもちろん大切なのですが、プロデューサーの熱量も同じくらい大切で、そういう意味ではこの作品は「難しそうだけど、やってみよう」と思わせるに十分な熱量が最初から木村さんにありましたね。
市川:今回は、木村さんの作品への熱量があったからこそ実現した部分も大きいと思うんです。話数もそうですし、花田さんにお願いすることも含めて。他のアニメにはない作り方をしたところも多かったですし、熱が各所に伝わったということだと思いますよ。
──「大体3ブロックくらいに分けた」とのことですが、具体的にはどのような構成を想定されたのでしょうか。
木村:第1話から第7話がキャラクター紹介と人狼のチュートリアル。第8話から第15話がキャラクターの掘り下げ。第16話以降が最終章のタイムリープもの、という3部構成です。エンディング曲を変えたタイミングもそこに合わせていて。
第8話のククルシカ騒動に合わせて梅田サイファーさんの楽曲に変えたのは、物語の主語が変わるからです。第16話でバグのパートに入って、凛として時雨さんに戻したのも、同じ理由ですね。
花田:実は僕、エンディングが変わるタイミングについては聞いていなかったんです。第16話で戻ったときに「そうかそうか、これで戻せば確かに意味合い的につながるよね」と初めてわかって、納得しました。
──原作には膨大なイベントがありますが、各話にどのように振り分けていかれたのでしょうか。
花田:基本的には、まず「この話数ではこのキャラクターを中心に描く」ということをざっくり決めて、そのキャラクターのイベントをざっと集めてくる。使えるエピソードがそのキャラが中心になる話にいれて、残ったものもなるべく入れこめるように配置しました。
いつも木村さんに「あと何が残っていますか?」と聞いていました。最終的には第20話のオープニングが流れるところで「あと、消化出来てないイベントがあったらここに入れて下さい」とお願いした感じです。
個人的にはレムナン関係のイベントで消化出来てないものが多少出てしまったのは残念だったのですが、主人公を再度女性にしないとなかなか難しいことと、レムナン自身の過去が最終回の謎解きに大きく関わっているという点で、仮に話数増やしてもやっぱり入れるタイミングはなかったかもなあ、というのが正直な所です。
木村:できるだけ原作のイベントは活かそうというスタンスでした。テレビアニメとしてチューニングする中で採用できなかったエピソードもありますが、何らかの形で入れていきたいという意識はありました。
たとえば第20話のラキオの「泥棒だ」というセリフについては、原作では違うシチュエーションで使われているのですが、印象的なフレーズだったので、花田さんが別の形で活かしてくださった。そういうところも面白いアプローチだなあ、と思っています。
──花田さんはSFから学園ものまで幅広く手がけられていますが、設定が複雑な作品ではアプローチも変わってくるものでしょうか。『グノーシア』はその中でどういった立ち位置の作品でしたか。
花田:こういう設定の多い作品で一番大事なのは「わからなくならないようにするにはどうしたらいいか」をまず考えることです。視聴者は見ていてどこが気になるだろうと一生懸命考えて「まずはこれが気になるよね。次はこれで」と、必要な情報を1つずつ落としていく。
ひとつコツがあるとすれば、視聴者がわからないと感じるポイントは、主人公にも「わからない」と言わせること。そうすると視聴者も「わからなくてもいいんだ!」と思えるんですよ。まだ明かせない部分では、ちゃんと主人公に「まだ分からないけど、きっと何かある!」と言わせる。それだけで視聴者は「主人公がこう言ってるということは、いつかどこで明かされるんだな」と安心して先を見続けられる。
──ずっとユーリがわかった顔で会議を無双していたら、視聴者としては逆に「わからないよ!」と不安になりますよね(笑)。
花田:この作品で特に悩んだのは、『グノーシア』をループものとして見るお客さんと、人狼ものとして見るお客さん、どちらが多いんだろうということでした。
結論としては半々だったのですが、特に前半のエピソードは両方の要素を少しずついれて、バランスをとることを意識していました。「この回は全然ループの話をしていないけどいいのか」、「この回は会議をしていないけどいいのか」と、毎回迷いながら書いていました。






































