マンガ・ラノベ
『弱虫ペダル』渡辺航 単行本100巻刊行記念インタビュー【前編】

「マンガ作品にとって『わからない』は一番アウトなんです」──誰もがアツくなる自転車競技マンガの金字塔『弱虫ペダル』コミック100巻刊行記念! 渡辺 航先生ロングインタビュー【前編】

「ティーブレイクしてたんだよ!!」誕生秘話──「どうひっくり返せるのか考えました」

──あとふたつ、お気に入りのシーンを挙げるとしたらどこでしょう。

渡辺:随分絞りますね(笑)。そうすると、12巻の巻島と東堂のクライマー対決です。ちょうど100話あたりで決着が着く予定でしたが「100話に主人公が登場しなくても大丈夫かな?」と心配だったんです。

でも巻島と東堂が本気の闘いをしているので、これを縮小するのは違うなと。「そろそろ100話なんだよな……」と思いながら描きつつ「ヤバい! 100話に主人公が出てこないわ」と(笑)。結局、3年生のハイタッチで終わりました。

──作品としてはメモリアルな瞬間ではあったものの、ですね。

渡辺:もちろん「これはダメでしょ!」と僕も思いましたよ(笑)。でも二人の戦いをしっかり描かないわけにはいきませんから。でも100話が掲載された後、読者の方から「よかったです」という声をたくさんいただいたので、二人の闘いを描き切ってよかったと思いました。

あとひとつは……15巻の新開さんが御堂筋にバキュンポーズを決めたシーンもそうですし、18巻の御堂筋のお母さんのエピソードもそう。39巻で手嶋が勝利目前だったのに、真波の自転車のチェーンの修理が終わるのまで待っていて「ティーブレイクしてたんだよ」と言ったシーンもお気に入りです。

32巻の杉元と鏑木の激しいバトル、そして終わった後の杉元の涙もそうですね。ゴールした時に杉元が「勝ったよね」と確認したらみんなが難しい表情をしている後ろで、鏑木が「よっしゃ!」と喜びをあらわにしていて。その時に自分が敗れたのを知って、毅然とした表情で「しかたないね。これがルールだから」と言いながらクールダウンしに行って、誰もいないところで号泣する……。このシーンは描いている僕も、何とも言えない気持ちになりました。

2年生なのに1年生とレースすること自体、特別対応だったのに、そこまでしても残れなくて。人前で涙を見せないのは最後のプライドでした。僕もそうだし、読者の方もそうだと思いますが、世の中には表彰台に上がったことがなかったり、レギュラーになれなかった人が多いと思います。レギュラーに選ばれなかった悔しさを表現できたので、好きなシーンです。

──やっぱり好きなシーンは絞り切れませんね。

渡辺:ここで真波と手嶋の対決について、もう少し話していいですか?

真波を手嶋がどう倒すのかという話で、坂道くんが、勝負が終わった後に倒れる手嶋さんを受け止めて助けるのですが、あのシーンは最初なかったんです。

最初の構想では、手嶋さんが頑張っているところに坂道くんが追いついてきて「変わります!」と言って、坂道VS真波の闘いが始まるはずでした。なので後ろから坂道が追いかけてくる展開でしたが、手嶋がすごく頑張っていたから、ここで坂道とスイッチするのは違うなと。手嶋さんに闘ってほしいという気持ちになったんです。そして考えたのが手嶋さんが真波にどう肉薄するか……ギリギリの勝負にならないとおもしろくないですから、真波の圧倒的な強さと手嶋が圧倒的に弱いという状態をどうひっくり返せるのか考えました。

真波が常に「手嶋さんも頑張るじゃないですか?」という感じで、手嶋をずっと安く値踏みしながら闘っていましたが、ここまで使ってこなかったメカトラ(メカニック・トラブル)のエピソードを描き合わせることができるなと思い浮かびました。

渡辺:実際のロードレース「ツール・ド・フランス」でも、トップ同士のギリギリの戦いの時にメカトラがあったのに、前を走っている人は気付かなかったのかという論争もよくある話です。メカトラがあった時、前を走っている人が待ってあげるのが正しいけど、気付かなかったら行ってもいいという不文律があります。手嶋は全力だったから気付かなかったのでそのまま行けるけれど、観客の「振り返るなよ」の言葉に反応してしまい、真波のメカトラを知ってしまう……。手嶋は足を止めて、真波がレースに復帰するのを待ちます。だいぶ遅れてやってきた真波から「何やっていたんですか?」と尋ねられた手嶋が「天気がよかったからティーブレイクしてたんだよ」と返す。

このエピソードが『週刊少年チャンピオン』に掲載された後、秋本(治)先生(『こちら葛飾区亀有公園前派出所』など執筆)に集英社のパーティへ招いていただいて、帰りのタクシーでご一緒させていただきました。そこで「手嶋の『ティーブレイクしてたんだよ』ってよかったね」と言っていただいて。心の中で「読んでくれているんですか!?」という驚きと喜びがありました。秋本先生の娘さんが『弱虫ペダル』が好きで読んでくださっているそうで、その影響もあるかもしれませんが、秋本先生からほめていただいた瞬間、動揺しながら「ありがとうございます!」とお礼をしたのを覚えています。

勝負が決した後、真波からの「何であの時、止まってくれたんですか?」という質問に「俺は自転車が好きだからな」と言って手嶋は倒れるけれど、坂道のヘルメットが道路の向こうから見えてきて、坂道が受け止めて「一緒に走りましょう」と助ける。「坂道を走らせておいてよかったな」と思いながら描きました(笑)。

──手嶋と真波の名勝負にはそんな秘話もあったのですね。

渡辺:もちろん最初に流れや結論を考えますが、キャラクターが裏切って、もっと良いシーンになってくれました。

キャラが裏切るという意味では、その前の鏑木と銅橋のスプリント対決も最初は鏑木が勝つと思っていました。そう思いながら描いていたら箱根学園の人たちが「銅橋さん!」と熱い声援を送っているんです。それほど部員に愛されて、努力もしているヤツが勝たなくてどうする?と思って、銅橋が勝ちました(笑)。

逆に鏑木はあの勝負に負けて、総北の補給係の人たちに「見てたぞ」と言ってもらえる。彼の覚醒のチャンスになったと思って、いいエピソードが描けたなという手応えを感じました。

渡辺:あとはですね……まだまだ止まらないな(笑)。

94巻、3回目のインターハイの1日目──(後編へ続く)

【インタビュー:永井和幸】

『弱虫ペダル』100巻記念フェアinアニメイト

開催期間:2026年5月8日(金)~2026年5月31日(日)
開催場所:全国アニメイト(通販を含む)

フェア内容

期間中『弱虫ペダル』関連のグッズをご購入・ご予約内金1,100円(税込)以上、書籍をご購入1点毎にイラストカード(全1種)を1枚プレゼント!

特典内容

イラストカード(全1種)

■詳細はこちら

(C)渡辺航(秋田書店)2008
おすすめタグ
あわせて読みたい

弱虫ペダルの関連画像集

おすすめ特集

今期アニメ曜日別一覧
2026年春アニメ一覧 4月放送開始
2026年冬アニメ一覧 1月放送開始
2026年夏アニメ一覧 7月放送開始
2026年秋アニメ一覧 10月放送開始
2026春アニメ何観る
2026春アニメ最速放送日
2026春アニメも声優で観る!
アニメ化決定一覧
放送・放送予定ドラマ作品一覧
平成アニメランキング