
“天才は状態である”――春アニメ『左ききのエレン』原作者・かっぴーが明かす、“夢と才能”の向き合い方
チャレンジするのにもハードルがあると思うんです
──漫画を読んで、少し気になったことも聞いていきたいのですが、物語を漫画に落とし込むとき、漫画というより映像が浮かんでいるのではないか思ったのですが、実際はどうなのでしょうか?
かっぴー:仕事でCMの絵コンテなどを描いていたこともあって、もともと映像作品は好きなんです。漫画に関しての興味は人並みで、読んでいる漫画の量も人並みなのですが、映画は人より観ている気がするので、根本にあるのは映画なのかなと思います。
これは珍しいと思うんですけど、高校生くらいのとき、観た映画をメモしていて、撮り方とかを書いていたんです。あそこのシーンは、きっとこうやって撮っているとか。あと、こうやって撮ることによって、どんな効果になるのかについても考えていて、印象的になるとか、緊迫感が生まれるとか、映画の画作りに関してメモをしていたんですよね。そういうことをクセでやっていたので、その影響はあったのかもしれないですね。それを再現する画力がなかったけど、理想があって、それを描こうとはしていたと思います。
──それは読んでいてすごく伝わってきました。こういう画を描きたいんだろうなと。描けないから、そこから逃げて、画作りを変えるということをしていないことが素晴らしかったです。
かっぴー:自分が絵が下手だからわかるんですけど、やっぱり描ける絵を描こうとするんですよね。僕、サインで絵を描くとき、キャラは絶対に左を向いているんですよ(笑)。でも、漫画では理想の画があって、それを描こうと思っているから、苦手な構図だから絵的には事故っているけど、描こうとはしているんです。それが伝わったから今があるのかなと思っています。
──あとはカメラワークですよね。感情が伝わってくる持って行き方をしていると感じました。物語とセリフの面白さが前提ではあるのですが、カメラワークと、そこからのキャラクターの表情による感情の表現がすごく上手いなと思いました。
かっぴー:それも映像からなんでしょうね。
──画力もどんどん上がってきているじゃないですか。それは訓練をしたのですか?
かっぴー:見えないところではしていないですよ(笑)。全部見えるところでやっていて、全部作品にしているんです。だから世に出ているものがすべてです。落書きとかもしないですから、描いたものすべてが世に出ていると言っていいと思います。でも、それは珍しいかもしれないですね。正直、上手くなっているとはあまり思ってないですけど、キャラクターに慣れてきているなという感じはします。
──でも、明らかに変わってきているとは思います。
かっぴー:僕としてはちょっと戻したいんですけどね(笑)。背景をちゃんと描き始めたのですが、背景があると本当に大変で……。キメのところにしか背景がなかったんですけど、ここに背景があるのに、ここにないのはおかしいなと思い始めてしまったりして。だから、当時のあの絵で良かったのに、自分で絵のハードルを上げたことで、同じ内容なのに大変になってきているという(笑)。
──あと、これはどの世界でもあり得ることだと思いますが、たとえば自分の理想に届いていないものは出したくないとか、少し前の自分の絵が恥ずかしいと思う人もいると思うのですが、そのあたりはどうだったのでしょうか?
かっぴー:僕にも客観性はあるので、上手い絵ではないことはわかっているんですけど、自分の絵が嫌いではないんですよね。画力と言われたら拙いけど、自分はこの絵が好きなので、第1部の初期の絵なんか、さすがに酷いけど直視できるというか。このときはこれがいいと思ったんだよね、くらいで、あまり恥ずかしくないんです。
しかも、それが良かったのではないかなと思っているんです。漫画のメッセージにもなってくるんですけど、「本気を出して諦めろ」というのを、何で言いたかったのかと言うと、チャレンジするのにもハードルがあると思うんです。恥ずかしいとか、怖いとか、否定されたらどうしようとか。いろんな理由でやりもせずに諦めている人が本当に多いから、チャレンジしてほしいんですよね。もし、それができない人は、「俺の初期の頃の絵を見ろ! あの絵でチャレンジしている奴がいるんだから、チャレンジしてみたらいいよ」と思います。「まだ人に見せるにはなぁ……」ってみんな言うんです。これは漫画に限らずですけど。でもそうではなく、俺は全部見せてやってきたから、そのほうが面白いと思うんですよね。だから挑戦する人が増えればいいなと思って、この絵をずっと世に出し続けています(笑)。
──僕も、あの初期の絵がすごくいいと思っているんです。すごく伝わってくるので。
かっぴー:当時のあれが届いたということですからね。上手くて伝わらない絵より、下手でも伝わったほうが良いに決まっているので、伝えることが大事だと思います。
──せっかくなので、AIについても伺いたいのですが、AIで絵が描けるようになったことによる、クリエイターへの影響はあると思いますか?
かっぴー:クリエイターが道具として使う分には楽になると思うんです。それとトップ層には影響がないと思うんです。連載を持っていて、ファンも持っている人たちは、いくら模倣されたとしても、本人の絵に価値が生じているから、問題はあるけれど、ダメージにはならない。
でも、そうでないところだと、たとえばコミカライズとかはAIの仕事になってしまう可能性はなくはないと思っています。いろいろ細かい絵を描く仕事というのは減るかもしれないですけど、細かい仕事をしようと思って漫画家になる人はいないと思うし、夢があって、自分の作品をドカンとやりたいと思っている人たちからしたら、最初からAIは競合ではないのかなと思っています。
──それは漫画じゃなくてもそうですよね。
かっぴー:同じですね。本当にちょっとした仕事、替えのきく仕事、君じゃなくてもいいんだけどねと思われている人は危ないと思います。
夢と生きていくすべての人に観てほしい作品です
──『左ききのエレン』では、天才と凡人、もしくは秀才が大きなテーマにもなっていると思いました。才能がある人が、自分に合ったものを見つけたから、集中が持続すると思うんです。その才能を見つけるにはどうしたらいいんでしょうか? これは手当たり次第やってみるのがいいのでしょうか。
かっぴー:見つけ方ですけど、おっしゃる通り、やってみるしかないと思います。多分、やってみている人も少ない気がするんです。たとえば漫画家になりたいなと思っている人がいて、実際に原稿を描き上げて、出版社に持っていった人って、すごく少ないと思うんですよね。僕は、誰しもが何かしらの才能を持っていると思っているし、天才というのを、その人の性質というよりかは、その状態だと思っているんです。「今は良い仕事に恵まれて、天才と呼ばれている状態だよね」ということなんですけど、多くの天才は、自分とは違う存在ではなく、天才という状態になっているだけであると。だから、それを見つけるのがいいし、そうなるためには、やっぱり気になったものを全部チャレンジしてみるのがいいと思います。チャレンジするだけで、ダメだとわかったら可能性をひとつ潰せるわけだから、それでいいんです!
あと欲を言えば、それを若いうちからやっていく。僕は30歳から漫画を描き始めて、今40歳になりましたけど、才能が見つかれば遅くはないので、やってみることだと思います。
──そこで向いてないと思ったとき、どう諦めればいいと思いますか?
かっぴー:どうなんだろう。信じ続けるのも大事だけど、最後は自分で決めるしかないのかな。漫画であれば、たとえば、ひとつの出版社、1人の編集者に見せて「才能ないよ」と言われたとて、それがすべてではない。10人目で「君には何かがある」と拾ってくれることもあるかもしれない。そこで、どこまで頑張るかですよね。それが50人に聞いて、どこにも引っかからなかったら、さすがにどうかなと思うけど、やっぱりそこは自分で決めるしかないのかなぁ。
──「夢に賞味期限をつけろ」という言葉もありましたしね。
かっぴー:年齢は関係ないですけど、いつまでもやっていても……というのはありますからね。
──TVアニメ『左ききのエレン』についても少し伺います。アニメ化されると聞いたときの率直な感想を教えてください。
かっぴー:もちろん嬉しかったですけど。こういう話って、途中でなくなったりもするので、フルで喜んでいいんだろうかと思いながら、本当かな?本当かな?と思っていました。でもさっき、番宣みたいなものの収録をして、本当なんだなと思ったので、今日フルで嬉しかったです(笑)。
──アニメに期待することは、どんなことですか?
かっぴー:読者にとっては、好きで読み続けて良かったなと思ってもらえるというのがひとつと、名前は聞いたことがあるくらいの人や本当に初めての人に観てもらって、知ってもらえることが楽しみですね。メジャーな作品ではないので、自分が趣味で描き始めた本当に小規模な活動が、運が良いことに少しずついろんな展開があり、読む人が増え、10年かけて少しずつ大きくなってきた作品なので、それがもう一段階広がると思うと、すごく楽しみです。
──役者さんのお芝居を見ていかがでしたか?
かっぴー:千葉翔也さんも内山夕実さんも、ものすごいこだわりがある方で、自分の作品として向き合ってくれているんです。頼まれたからやりましたではなく、自分の代表作になるように、誰がいいと言っても、自分の基準で、自分がいいと思うまでこだわる人たちなんですよね。こちらが思う以上のハードルでやってくれているので、すごく楽しみですし、すごく良かったです。
──では最後に、夢を目指している人へメッセージをお願いします。
かっぴー:夢を目指している人も、夢に破れた人も、夢が見つからない人も、人間って夢と関わって生きていかないといけないんですよね。そこで折り合いをつけるのか、一緒に肩を組んでいくのかわからないけど、夢と生きていかなければいけないので、そういうすべての人に観てほしい作品です。ぜひ、怖がらずに観てください。
作品情報
<放送情報>
毎週火曜 深夜24時〜テレ東系列ほかにて好評放送中!
テレ東系列 毎週火曜深夜24時
AT-X 毎週金曜夜9時
リピート放送:毎週火曜朝9時/毎週木曜午後3時
<配信情報>
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その他動画配信サービスでも、毎週日曜 深夜24時30分~順次配信
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<ストーリー>
高校生活も半分が過ぎ、誰もが本格的に進路を考えはじめる頃。デザイナーになるため美大を目指す朝倉光一は、ある日、美術館の壁に殴り描きされたグラフィティに衝撃を受ける。描いたのは、ある出来事をきっかけに才能を封じ込めてきた、左ききの女子高生・山岸エレンだった。
いつしか二人は「描く」ことを通じてお互いを認めあい、光一はデザイナー、エレンは画家への道を歩み始めるが――。
<スタッフ>
原作:かっぴー「左ききのエレン」
監督:鈴木利正
シリーズ構成:岸本卓
アニメーションキャラクター原案:後藤隆幸
キャラクターデザイン・総作画監督:福地祐香、玉井あかね
色彩設計:関本美津子
美術監督:佐藤豪志
美術設定:小幡和寛
撮影監督:有村駿
編集:増永純一
音響監督:明田川仁
音楽:パソコン音楽クラブ
オープニングテーマ:ALI「FUNKIN’ BEAUTIFUL feat. ZORN」
エンディングテーマ:紫 今「New Walk」
アニメーション制作:シグナル・エムディ/Production I.G
製作:アニメ「左ききのエレン」製作委員会
<キャスト>
朝倉光一役:千葉翔也
山岸エレン役:内山夕実
加藤さゆり役:石川由依
岸あかり役:関根明良
神谷雄介役:興津和幸
三橋由利奈役:天海由梨奈
柳一役:遊佐浩二
朱音優子役:結川あさき
流川俊役:新垣樽助
佐久間威風役:松田健一郎
公式HP:https://eren-anime.com/
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