
「この波に乗り遅れないように、振り落とされないように楽しんでいただけたら嬉しいです」──TVアニメ「霧尾ファンクラブ」田代星羅役・和泉風花さん【連載インタビュー第8回】
「やっているけれど、やり過ぎていないお芝居」
──改めて「霧尾ファンクラブ」のアフレコ全体を振り返って、どのような現場でしたか?
和泉:同年代の方が多かったので、良い意味で変なプレッシャーや緊張を感じることなくお芝居に集中することができました。特に藍美先輩役の稗田寧々ちゃんはアフレコが始まる前から「ほとんど全員と友だち」みたいな座組だったようで、みんなリラックスした状態で現場に来て、ヤバいお芝居をしていました(笑)。
アフレコは本当にサクッと終わるんです。やっぱり爆発力のある作品なので、瞬発力から出たお芝居が一番良かったんだと思います。亀山(俊樹 音響監督)さんもそう思ってくださっていたのか、リテイクを多く重ねるというよりは会話の中で生まれたものを活かしたアフレコだったのかなと。ふわっと集まって、バンと録って、サクッと終わって、すごく楽しかったです。
──ときにはテストテイクがそのまま採用されることもあったとか。
和泉:私はテストテイクを使っていただく率がめちゃくちゃ高かったのですが、それが良いことなのか悪いことなのか……(笑)。テストってみんなと気兼ねなく掛け合うことができるし、雑念も無い状態なので、楽しくなってどんどんテンションが上がっていっちゃうんですよね。それが良かったのかな。すごく生感のある現場でした。
──それこそ星羅は掛け合いが少なかったことで、セリフの被りなどがないからテストを使いやすかったのかもしれませんね。
和泉:そうですね! ずっと一人で喋っているだけでしたから(笑)。
ギャグシーンのテストテイクでは思わず笑ってしまうこともあったし、霧尾くんが今でも望くんにメッセージを送っているシーンなどは、後ろで聞いていて泣いてしまいました。本当にみなさん作品を楽しみながらアフレコをしていた印象があります。
──特に印象に残っているアフレコ風景などはありますか?
和泉:良い意味で「ありえない」と思ったのは、第11話の波先輩の独白です。若山さんのお芝居が……本当にどうやっているかわからないくらい、本心が出ている感じがしたんです。すごく素敵なお芝居でした。どんなプランで、どんなアプローチでお芝居を組み立てたら声にあんな気持ちを乗せられるんだろうって。
また、望くんが亡くなってしまったあとの病院のシーンでは、霧尾くんの何も飾っていない、人目をはばからずに泣いている様子が描かれました。声優としてではなく、本当に霧尾くんの体から大きい声が出ているような声の出し方だなって。
若山さんも梶原さんも先輩ですが、いわゆる“若手”という括りの中にいる身として、刺激的なお芝居がたくさん聞ける現場でした。本当に脱帽でしたね。すごかったです。
──この表現が正しいかはわかりませんが、キャラクターとの境目がなくなっていくといいますか。
和泉:見ている人、聞いている人を同じ気持ちにさせるお芝居って、本当にすごいなと。「霧尾ファンクラブ」は「やっているけれど、やり過ぎていないお芝居」という、絶妙なバランスで作られていると思っています。だからこそ、それぞれキャラクターたちの実在感がすごく出ているのかなと。他人事とは思えない、フィクションとは思えないところに感情を動かされる作品だなと思います。
──そんな素敵な作品のアフレコですが、コロッケパーティーが行われたとお伺いしています。
和泉:ありました! でも私、パーティーが行われることを知らずにその日の現場に入ったんです。だから突然梶原さんが「コロッケ作ってきた」っておっしゃったので「何でコロッケ……?」と(笑)。さらにプロデューサーさんもおしゃれなコロッケを出してくださって。「何でみんなコロッケを……?」みたいになっていました。
私はコロッケをいただいただけの人でした。とっても美味しかったです。
「めちゃくちゃ心が助かりました」
──放送された第10話、第11話の中からお気に入りのシーンを教えてください。
和泉:第10話は星羅の活躍も多い回でした。これまでは、行動力とわきまえのあるオタクとして活動していましたが、ちょっとわきまえがなくなってきて。推したちの仲が悪くなるより、私がわきまえられないオタクになった方がマシ、と動き始めました。
あのシーンは原作から本当に大好きなんです。星羅はずっと、一人だけ何にもわかっていないじゃないですか。読者の視点だと、霧尾くんはかなり危うい状態になっていることもわかっているし、藍美と波の関係性も繊細な状態にあることがわかるけれど、星羅だけ何も知らない。だから無駄に高いテンションで暗躍しているのは仕方ないことでもありつつ、どうにか空気が読めないかと(笑)。
霧尾くんが公園で「俺も、行きたいかも──そっちに」と言ったシーンも、読者は「霧尾くん、大丈夫?」となるところでも、星羅は「そっちってどっち?」と、本当に空気が読めなくて。演じていて、めちゃくちゃ楽しかったです。
和泉:また「湯船にうんこ浮かべてない」のところは、霧尾くんの発言を星羅が復唱する形でした。ここは何が正解かわからなくて難しかったです。面白くなっているかどうかドキドキです。アフレコ中、監督にも「面白かったですか?」って聞いちゃいました。「大丈夫でしたよ」と言われましたが、ちょっと疑っています。本当かな(笑)。
このあたりからみんなの関係がますます不安定な状態になってきます。早く解決してほしいなと思いつつ、解決の仕方もこの子たちらしいといいますか。あやしげな反面、楽しみな状態でもある第10話だと思います。
──第11話はいかがでしょうか。
和泉:ついに星羅が藍美先輩と波先輩のところに行きました……が、すごい怖いですよね、あのシーン。突然「あなたたちは知らないと思いますが、私はよく知っています」と話しかけてきて(笑)。めちゃくちゃホラーです。
第10話、第11話あたりの桃瀬と霧尾の雰囲気に、個人的に胸を痛めていました。霧尾は現状、胸を張って桃瀬を友だちとは言えない精神状態だと思いますが、傍から見たらやっぱり友だちだと思うんです。
そんな状態の霧尾に対する桃瀬も、作品でありがちな「霧尾はそんな急に縁を切ってくるようなやつじゃない」みたいに熱くなるんじゃなくて「あいつ、そういうところあるよな」という、ちょっと生々しい男子高校生感があって……。誰も悪くない状態で、縁を切らないでと、胸を痛めて見ていました。絶対に桃瀬も霧尾のことが好きだし、霧尾も桃瀬といる時間が絶対に好きなのに……「誰も悪くない」ことが辛くて。
──キャラクターの関係性や会話を見ていると、生々しいし、もはや現実のどこかで見たことがあるような気さえしていて。
和泉:きっと、どこかで日常的に起きていると思うんです。「霧尾ファンクラブ」においても藍美ちゃんがクレイジーな切り返しをしなければ、きっと桃瀬と霧尾は縁が切れて、霧尾は学校を辞めていたと思います。
やっぱり藍美ちゃんは“器のでけぇ女”だと思いました。なんか、いつだって他人が最優先……まぁ、満田に対しては図々しいですが(笑)。主に霧尾くんのために動いていたり、波のために動いたり、本当にカッコいい子だなと思います。
──藍美が消しゴムのおまじないで願ったことも「霧尾と付き合いたい」などではなく「霧尾の笑顔」でした。
和泉:本当に素敵ですよね。
もうあと一話で終わりというところで、物語が大きく動き出す気配がしています。霧尾くんが学校を辞めてしまうかもという絶望的な状況の中で星羅も合流して、アベンジャーズではありませんが、全員で力を合わせて何とかしようとする瞬間が来るというワクワク感もあって。この作品らしいフィナーレに向かっている雰囲気があって素敵な回でした。
──波が星羅を認知していることがわかった瞬間の「やばい認知されてる」というセリフも共感を呼びそうだなと思いました。
和泉:きっとオタクっぽくなっていると思います。でももう一度「同じことをやれ」と言われても絶対に再現できないタイプのキャラクターなので、毎回オンエアが楽しみなんです。
──ちなみに、これまで放送されたエピソードの中で、特にお気に入りのシーンを挙げるとすると……?
和泉:いっぱいあります! 霧尾先輩を藍美先輩と波先輩が妄想の中で取り合って(霧尾が)股から裂けて光るシーンとか(笑)。さきほどもお話ししましたが、霧尾先輩が望くんにメッセージを送りながら帰るシーンは本当に涙が出ました。
あと、第7話で満田が修学旅行に行かない理由を話していたときの、藍美先輩の本当に話を聞いていない感じも好きです。「マジで興味ないんだな」「満田のことを何だと思っているんだろうな」と思ってしまうような返事にめちゃくちゃ笑ってしまって(笑)。
意外とくだらないシーンが多いですね。感動的なシーンだと色々と説明しやすいんですけど……ギャグシーンって面白さを説明するのが難しいです(笑)。毎週、声を出して笑いながら楽しんでいます。
──お気に入りの中にギャグシーンとシリアスなシーンが入り混じっていて「霧尾ファンクラブ」っぽいなと思いました。
和泉:(笑)。あとは、風邪を引いて寝込んでいる藍美先輩のために、波先輩がメッセージを送ってあげるシーンも好きです。写真が届いたと思ったら波の自撮りで、それに対する藍美先輩の返しがすごく良くて! 一連のシーンを見て、めちゃくちゃ心が助かりました。



































