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【作品レビュー】もう俺に『上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花』を見せないでほしい

【作品レビュー】もう俺に『上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花』を見せないでほしい、あのころの俺に戻ってしまうから

『上伊那ぼたん』は懐かしい

2話がはじまるほんの一瞬の間に俺は考えた。そもそも、お膳立てされたおしゃれな空間の何が悪いというのか。

多くの人々がファンシーな世界に触れたいがために某夢の国に行く。あそこはお客のために作られた完璧な幻想の世界がある。だが、我々は幻想だとわかっていながらも、その幻想を楽しみに行くのだ。

だいたいそれを言い出したらエンタメの大半は幻想ではないか。人が作り出した嘘の世界を嘘だとわかっていながらどれだけ楽しめるか。それが人間を人間たらしめているのではないか。

だから、『上伊那ぼたん』のおしゃれ空間も楽しめるかどうかは俺次第なのではないか。俺のネトフリちゃんが次の2話を読み込む刹那、俺はすべてを感じ取った。なぜ、今回はそんなことを思ったのかは今でもわからない。これも「なんとなく」が成せる技なのかもしれない。

2話は雰囲気がガラッと変わったので単純に驚いた。キャラクターのタッチから違っていて、違うアニメが始まったかのような雰囲気もあった。調べたところ、どうやら全話演出が違うらしい。昔、このタイプのアニメって多かったよなぁ。演出する人によって全然違うアニメになって、毎回新しい気持ちで見られたっけ。たまに演出する人の名前がつけられて◯◯回とか言われて、ファンから名エピソードと言われたり。

今回の2話は演出がかわいい。露骨な効果音が聞こえてきたり、擬音がそのまま文字として描かれていたり。アニメらしい表現というかコミカルなTHE日本のアニメ的な良さがあった。

しかもさぁ、郡上かなでさぁ。上伊那ぼたんを誘って砺波いぶきのためにお酒を買いに行こうだぁ? そりゃ悪手だろ蟻んコ。「上伊那さんならいぶきの好みがわかるだろうから」
って? 馬鹿野郎!

しかもさぁ、上伊那ぼたんさぁ。お酒を選んでいるときにかわいいお猪口があって、「寮長(砺波いぶき)と使わないんですか?」「使わないなら私と使えば良くないですか?」(意訳) とかほざきやがってこいつ! 優しいのか狙ってるのかどっちやねん! この◯◯!

おっと熱くなりすぎていた。恥ずかしい恥ずかしい。

結局、郡上かなでは砺波いぶきと二人きりでお酒を飲むことはなく、寮のみんなとすき焼きパーティとなるのでした。やっぱ報われない系なんかなぁ。

俺はさ、『青い花』を見てるから知ってるのよ。献身的に尽くす女はだいたい捨てられて、泣いて悲しんでいるところに幼馴染がやってきて慰めてくれたりするわけよ。

でも郡上かなでには幼馴染とかおるんかなぁ……(まだ途中までしか見てないので知らない)。

この展開は昔からあるので馴染みがある。今でもこういう展開ってあるんだなと思いつつ、そのまま知っている展開になるのか、はたまた違う展開になるのか気になるところだ。あ、気になるとか言っちゃった。

そうやって俺がモヤモヤしていると、遊佐あかねと北杜やえかが口論しているシーンに。詳細はよくわからないが、何やら揉めているらしい。

だが、俺ならわかるぞ。だいたいキンキン声の金髪(今回は北杜やえか)やツインテールなどが「もう知らない!」とぐずっているときは、ワガママを言っているときか誤解があるときだ。俺は『マリア様がみてる』を全巻読んでいるから知っているんだ。

拗ねて上伊那ぼたんと砺波いぶきと出かけてしまった北杜やえか。遊佐あかねからの「いいすぎた ごめん」のメッセージを見て、「わたしも」の4文字が送れない。ああ〜これも見たことあるわ〜。もどかしいったらありゃしない!

案の定、見進めていると北杜やえかの勘違いで口論になっていただけだと気づく。最終的には北杜やえかは自分の間違いを認め、遊佐あかねに謝罪するのであった。キンキン声は感情で動くキャラクターだが、基本的にはいい子が多く、ツンデレ傾向がある。そんなツンデレ娘が素直になる瞬間ってのは良いもんだよな。

ここまで見てきて思ったけど、『上伊那ぼたん』ってもしかして、俺らの懐かしさをちゃんと押さえてきてる……? でも何かが今までとは違う気がする。

『上伊那ぼたん』ってやつは……

ここまできたら3話まで一気に見てしまおう。やはり3話切りとも言うし、そこまで見てから判断せねばわからぬことも多かろう。

3話はさらに驚いた。キャラデザがこれまた大きく変わり、なんだかキャラがふにゃふにゃしている。基本的にアニメのキャラクターというものは記号で描かれており、キャラクターデザインという指標を元に様々なスタッフが同じキャラクターを描いている。右向きの顔はこんな顔、上向きの顔はこんな顔、といった具合にキャラクターデザインが作ったお手本のおかげでキャラクターの顔が崩壊しないようになっているのだ。

しかし、3話のこれはどうやっているのだろう。絵のタッチが独特すぎてなかなか真似ができないような気がする。まるで画コンテをそのままアニメにしたような仕上がりだ。

よく見てみたらその独特なタッチを活かすためにあえて止め絵を多用しているような気もする。かといって手抜きというわけでもない。途中で原画をそのまま動かしているようなカットがあったり、こういう表現方法もあるのかと勉強になった。

ストーリー的には、自分の部屋にGが出てしまって殺虫剤が切れるまでは入れない砺波いぶきと、雷が怖くてひとりでいられない上伊那ぼたんが距離を縮めていくのがメインの回。

お酒の力もあってか、二人は徐々に打ち解けていき、上伊那ぼたんは部屋に入れない砺波いぶきのため、自分の部屋で一緒に寝ようと誘う。

ベッドに入る二人。上伊那ぼたんは先に眠ってしまったようだ。もう寝てしまった上伊那ぼたんを見て砺波いぶきは、「私ね。上伊那さんと一緒にいるとすごく楽しいの。またお酒飲もうね。おやすみ」となかば独り言のように語りかけるのであった。上伊那ぼたんが起きていたとも知らずに……。

うーん。良いですねぇ。相手が寝ているときに本音を言うやつ。嫌いじゃないですよ。

Bパートは遊佐あかねも加わり、おしゃれ度が加速していく。遊佐あかねはバンドマンということもあり、音楽関係に詳しい。両親から譲り受けたレコードをみんなでお酒を飲みながら聴いてみようということになった。

レコードは近年若年層にも人気のアイテムになっていると聞いているが、実際のところはどうなのだろう。しかし、おしゃれなアイテム、という認識を持たれているのは間違いなさそうだ。

実際にレコードを聴いてみるシーンの演出もおしゃれで面白かった。上伊那ぼたんがレコードに針を落とした瞬間、線画にラフな色をつけたような映像に変わり、柔らかな音が広がっていく様が描かれていた。

特に注目してほしいのが、音だ。俺はイヤホンをつけてアニメを見るタイプなのだが、そのおかげでレコードで音を再生したときのノイズ音を聞き逃さずにすんだ。俺も昔は趣味でレコードを集めていたことがあって、なんとも懐かしい気分になった。あのガサガサと聞こえるノイズが哀愁があって良いのだ。

遊佐あかねも「やっぱ好きだな。アナログの感じ。最高」と代弁してくれた。ありがとう、遊佐あかね。相当音楽が好きなんだなぁ。気持ちがわかる。

しかもさぁ、プレイヤーをくれたのがさぁ、北杜やえかだってぁ……。席を外してお礼の電話までするなんて、こいつ……。いいやつ……!

そして、二人っきりになった上伊那ぼたんと砺波いぶき。関係が深まらないわけがなく……。お酒が回り始めたその瞬間。上伊那ぼたんが行動に出る。

「寮長。貸切温泉行きませんか? 二人だけで」

上伊那ぼたんがそう言うと、砺波いぶきの耳は赤く染まっていた。苦みが強いPANK IPAのアルコールに酔ってそうなったのか、はたまた彼女の心境の変化か。顔まで赤くした彼女は「うん。行っちゃおうか」とつぶやく。

どっひゃああああああ。「行っちゃおうか」ですってよ! これが「行こう」でも違うし、「行ってもいいよ」でも違うし、「行こうかな」でも違う。

「行っちゃおう」というニュアンスには、「ええい、もうなるようになってしまえ!」という投げやり感もありつつも、消極的だった砺波いぶきが「なんとかなるやろ」で一歩を踏み出した瞬間でもあったのかなと思いました。このシーン、いいなぁ。

『上伊那ぼたん』はこういうボソッと言うセリフにキャラクターの本質が込められている気がする。みんな、本音はポロッと言うタイプなのだ。青春してやがるぜ。

しかし、またもや上伊那ぼたんが積極的すぎる。こいつは狙った獲物は逃さないハンタータイプかもしれん。気をつけて見なければ。

そこから二人の温泉旅行の話しになるのだが、またしても何も知らない郡上かなでさん……。やっぱ不遇キャラ⁉︎ もしかして不遇キャラじゃないよね⁉︎ 例えそうだったとしても私はあなたの頑張りを見ていますよ……。

そんな郡上かなでを秩父に残したまま、二人の温泉旅館の模様が繰り広げられていく。初めての遠出ということでいろいろと上手くいかないことがたくさんあって、なんとも初々しい。

目当てのお店は閉まっているし、代わりのお店ではソフトクリームしか売っていない。踏んだり蹴ったりだが、その時間さえ愛おしいのかもしれない。

上伊那ぼたんの頬についたソフトクリームを砺波いぶきがハンカチで拭ってあげるシーンもよかった。砺波いぶきの優しさ、急に物理的距離が縮まったことを理解してか、押せ押せドンドンの上伊那ぼたんも放心状態になってしまうのだった。

そしてメインの貸切露天風呂。もちろん、お酒も飲めちゃうぞってことで、ここでも何も起きないわけがない! と思ったら、このシーンで気になったのは、別にいかがわしい気持ちとかそういうのがあったわけじゃないんですけど、着替えのシーンとか入らないんですねと……。

いや、違うんです! 俺が見たいとかそんなんじゃなく、いや見たいですけど、そういう意味じゃなくて! なんか、裸で一緒にお風呂に入る(裸じゃないと風呂は入れんだろ)って、心の距離が近くないとできないことですよね? ってことです。

なんで敬語になっているんだ……。まぁそんなことはさておき、ここは演出の都合上カットされているのかもなとも思いました。やっぱりどうしても裸の描写って、エロティックになってしまいがちだし、『上伊那ぼたん』ではそういう方向で描きたくないのかもなとも思った。二人のはじまりはピュアなものであってほしいという俺の願望がないわけでもないし。

逆に、俺らが見られないところで、そういった心のやり取りが行われていたという妄想を膨らませるのもいいじゃないの。

とまぁ、俺の心境はどうでもいいんだ。二人は絶景露天風呂とお酒を堪能しながら二人だけの時間を楽しんでいく。

ここで二人は二人だけのお願いや気持ちを吐露していく。上伊那ぼたんからは名前呼びしていいかというお願い。こいつがまたニクくて、「名前で呼んでいいですか? 郡上先輩みたいに!」と言うのだ。この女、悪よのう……。

おそらく無意識のうちに、砺波いぶきと郡上かなでが培ってきた時間という超えられない壁を補完しにきているのかも……? と思ったり。せめて郡上かなでと同等には砺波いぶきと仲良くなりたい。そんな気持ちの表れではないかと俺は思った。

砺波いぶきも了承し、さらに自らも上伊那ぼたんを名前呼びにすることに。これはお互いに嬉しかったことだろう。片方だけが近づくだけでなく、両者が近づけばもっと距離は縮まるのだ。

そして、そんな上伊那ぼたんのアプローチに対する答えのような気持ちが砺波いぶきから吐露されていく。

最近は一人で飲んでも物足りないことがあること、「あの子」がいればもっとお酒が美味しいのにと思うこと。

そして、「もっとぼたんと二人で飲みたい」と爽やかな満面の笑み。

これには上伊那ぼたんもクリーンヒット。「なんですかそれ。やっぱりいぶきさんはずるい……」。

(レオナルド・ディカプリオが起立して拍手するgif)

普段奥手なキャラクターが自分の心を開示するこの瞬間。どんなにぐいぐい行くキャラクターでも、このカウンターがあれば一発OKなのです。砺波いぶき、ナイスすぎる。

砺波いぶきにとってお酒を飲む時間というのは、自分だけの特別なひとときだったはず。その空間を上伊那ぼたんと共有したいと言ったのだ。そりゃ上伊那ぼたんも茫然となってしまうのも当然。

うーん、この二人。ずっと見ていたいぜ。

でもさぁ郡上先輩はどうなるわけぇ!?

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