
春アニメ『ガンバレ!中村くん!!』撮影監督・若林 優さん&ビジュアルディレクター・神田智隆さんにインタビュー| 第6話はなだらかに浅い夕景から深い夕景へと変わっていくようになっています
第6話の夕景は浅い夕景から深い夕景へとなだらかに変わっていくようになっています
──おふたりが担当したなかで、印象深いシーンやここは上手くできたと思ったシーンを教えてください。
神田:まずは第3話のラストシーンです。あそこのライトの入り具合や夜景は、まさにニューレトロ感が出たなと思っています。
若林:僕は、有名なアニメのエンディングの入り方をイメージしていました。
神田:まさにそういう感じに仕上がっていましたよね! 自分が作業したところで言えば、エンディングも印象に残っています。エンディングは僕が撮影を担当しているのですが、ちょっとカラフルな感じの背景になっていて、本編の撮影の処理とはまた違う考え方が必要だったんです。エンディングの撮影に関しては画面のデザインを重視して攻めました。
──なるほど。
神田:あと、第6話の夕景のシーンは監督からけっこう早い段階でこだわりたいというオーダーがあって。あの夕景のシーンは、中村が広瀬に友達になって欲しいと言うところがピークになるよう、なだらかに浅い夕景から深い夕景へと変わっていくようになっています。それを作画だけでやると、各カット細かく指示をして徐々に暗くしていかないといけないんですよね。加えて、カット毎で見たら明るさの統一はできているものの、シーンごとの色の相対量が違うことによって映像としてつないで見たときに明るく感じたり、暗く感じたりすることもあって。そこを少し整えるだけでもグッとお話のほうに集中できるようになるんです。あの徐々に暗くなっていくような絵作りは、全工程を経たあとに調整するカラーグレーディングの本領が発揮できたシーンだと思います。
──それによって違和感のないリアリティが生まれた。
神田:そうですね。だからこそ、見ている人は気が付かなかったかもしれません。先ほど若林さんも言っていましたが、こういうのは気が付いて欲しいからやるのではなくて、お話を盛り上げるためにやることなんです。見返すときに、実はこういう裏側の工程があったというのを知って、より楽しんでもらえたらいいかなというくらいの気持ちですね。
若林:第6話でいえば、水族館のシーンも記憶に残っていて。僕は1話の始まりから終わりまでにフィルターを徐々に濃くしていくクセがあるんですよ。それは、物語の流れに応じて画に厚みを持たせていくという意図があるからで。第6話も夕景のシーンをいちばんに盛り上げてと考えていたのですが、水族館のシーンもあえて色々と効果を入れているんです。これは、魚や水族館をリアルに感じられるような光の扱い方をすることで、このあとに何かあるかもと想像できる画になればと思ったからです。
神田:僕もその意図を汲んで、チェックの段階で魚が動いていないから動かしたほうがいいと提案をしました。若林さん、リテイクがいっちゃってごめんなさい(笑)。
若林:いえいえ(笑)。あとは、第12話の涙のシーンもよかったですよね。あそこの涙越しのカットはなかなかアニメでやることはないのですが、上手くいったと思います。
神田:(監督補佐の)吉邉尚希さんが作画を3回ぐらい描き直されていて。監督が「これ、自分で何回も見たことがある景色だ」と言って涙していたのが印象に残っています。
若林:撮影って、基本的に実際に起きることだったら体験したり、見に行ったりしたほうがはやいんですよ。例えば太陽の光を表現するシーンなら、カメラを持ってレンズ越しのフレアを見ればいいですし、水のシーンも実際に用意して動きを見たら理解できることもあって。ただ、涙はちょっと特殊なんです。だって、自分が泣いているときって、そのときの感情が強すぎて、景色まで覚えていないじゃないですか。だから、誰もが思う「泣いている」ってどういう表現なんだろうと悩みました。トライ&エラーを繰り返して、第12話の表現にいきついています。
特に引っ掛かることがなく、ストーリーがスッと頭に入ってきました
──やっぱり、実際に見られるものは見たほうがいいんですね。
若林:再現できるものは再現することが多いですね。ただ、純粋に再現しちゃうとリアリティが出過ぎちゃうので、それをどこまでデフォルメできるかが大事かなと思います。あまりにリアルだと、そのリアルを知っている人しか分からなくなっちゃうので。だから、僕は実際の体験をしたり、実物を見たりしてからすぐに作業をしないようにしています。何日か寝かせて頭のなかにある記憶で再現するようにしたら、ちょっとデフォルメがかかってちょうどいい感じになるかなと思っていて。みんなのなかにある「それ」を作る作業が、僕は面白いなと思っています。
──最後に、読者のみなさまにメッセージをお願いします。
若林:今日お話ししたことは見返すときに思い出していただいて、まずは一通りストーリーやキャラクターの物語を楽しんでいただければと思います。みなさんが中村くんを応援したくなる物語なので、ぜひ最後まで見守っていて欲しいですね。
神田:職業柄もあってか、アニメを見ていると「ここ、少しおかしいかも」って違和感を見つけてしまう癖があるんです。ただ、本作は放送されているアニメを見ていても特に引っ掛かることがなく、ストーリーがスッと頭に入ってきました。違和感がないというのは、みんながこだわって作った結果だと僕は思っています。まずは物語を最後まで楽しんでいただきつつ、見返す機会があったときには、今回お話ししたようなちょっとテクニカルな部分や、スタッフががんばっているところを色々と見つけていただきつつ、何度も楽しんでいただければ嬉しいですね。
[文・M.TOKU]
作品情報
あらすじ
主人公・中村男久斗はどこにでもいる内気な男子高校生。
友人ゼロの彼の前に現れたのは、クラスメイトの広瀬愛貴。
何だこの気持ちは…!?
まだ会話もしたことがないのに、広瀬をみると毎日ドキドキがとまらない…!!
内気な男子高校生・中村くんの広瀬への“片想いをめぐる妄想と暴走”をどこか懐かしい80~90'sタッチでコミカルに表現し、高い人気を博す、春泥による王道BLラブコメディ「ガンバレ!中村くん!!」のTVアニメーション化が決定!
キャスト
(C)Nakamura-kun!! Animation Project

































