
夏アニメ『ふつつかな悪女ではございますが』石見舞菜香さん×川井田夏海さんインタビュー|身体と心が入れ替わる難役、その演技論に迫る
2026年7月12日より放送中のTVアニメ『ふつつかな悪女ではございますが ~雛宮蝶鼠とりかえ伝~』。舞台は、次期妃を育成するために、五つの名家から姫君を集めた宮――『雛宮』。美しく聡明な黄家の雛女・黄 玲琳は、悪女と呼ばれ皆から嫌われていた朱家の雛女・朱 慧月に身体を入れ替えられてしまう。
入れ替わる前と後、つまり中身が違う状態を演じた、黄 玲琳役の石見舞菜香さんと朱 慧月役の川井田夏海さんに、作品の印象や収録での思い出を語ってもらった。
実場プレスコで収録された本編、2人が感じていた演じる難しさとは?
──まず作品の印象をお聞かせください。
黄 玲琳役 石見舞菜香さん(以下、石見):中華風の世界観なので設定上漢字が多く、聞き馴染みのない単語がたくさん出てくるので「どういう世界観なんだろう?」と思うかもしれないですが、内容はそれほど難しくはないんです! 自分自身に向き合うことというか、相手が見る自分、自分が見る相手といった人間味のあるテーマが描かれていたりするので、内容の魅力に乗っていけると本当に面白く、とっつきやすい作品だと思います。だから原作もツルッと読めてしまいました。あとキャラクターもかわいくて、美しい世界観なので、目で見ても楽しいと思います。
朱 慧月役 川井田夏海さん(以下、川井田):もともと後宮モノに難しいという印象を持っていて、誰がどこのチームで誰と仲が悪くて、みたいなのがわからなかったんですよね。その上、侍女がいて、侍女の派閥とかもあったりするじゃないですか。でもこの作品は、色分けされているというのもあるかもしれないですが、それがわかりやすくて世界観に入りやすかったです。あと、女性だからわかる女性の気持ちみたいなものがあって、わかるところとやり過ぎなところの線引きが上手なんですよね。そのバランスが面白いと、読んでいて思いました。
──オーディションはいかがでしたか? 入れ替わりがある作品なので、何か特別なことはあったのでしょうか?
川井田:特別なこと……ありました!
石見:私は普通のオーディションで、自分の原稿のみで、玲琳の台詞と(中身が)慧月の台詞をそれぞれ演じさせていただいたんです。
川井田:私は石見ちゃんのオーディションの音声を聞きながら演じました。先に決定したのが玲琳役で、その声を軸に慧月を探すような感じだったのだと思います。
石見:お互いの役を演じるからということなんでしょうけど、オーディションの音声を他の役者さんが聞くことってあまりないと思うんです。私はそれをかわちゃんから聞いたんです。
川井田:他の現場で会ったときに、たぶんあれはまなてぃ(石見)だったと思うって。私も誰だかは知らなくて、突然音が流れてきたんですけど。ただ、こんなに口が悪いまなてぃは聞いたことがないなと思っていました(笑)。
石見:私もそれを聞いてビックリしました。
──決まった時はいかがでしたか?
石見:嬉しかったです!
川井田:なんとなく、もう少しキャリアが上の方がやられたりするのかな?と思っていたんです。だから、私にこんな難しい役を任せていただけるんだ!と思い、すごく嬉しかったです。
──今回、中身が入れ替わるというお話です。なので玲琳と慧月の両方を理解していると思うので、それぞれの魅力を教えていただければと思います。まずは、幼いときから虚弱体質だった黄 玲琳から。
川井田:やっぱり見た目とのギャップがありますよね。
石見:体は常にツラい。熱もあって体の節々が痛い……。その状態で動いて大丈夫なのかしら?と、周りが過保護になってしまうくらい大変な境遇で生きているキャラクターなんですけど、とにかく心が強いんですよね。根性がある!
川井田:鋼のメンタルどころじゃないんですよ。ツラい状態で稽古をしたり、より高みを目指すべく育ってきているから、それを表に出さないんですよね。
石見:デフォルトで持っている身体や運命が、本来はすごくツラいものだから、本人もそれに蓋をしているが故のタフさ、強さなのかなというのはちょこちょこ見え隠れするんですよね。死んでしまうことに対する覚悟もついていたり。
川井田:若干諦めている部分もあったからこそ、慧月の身体と入れ替わったときの爆発があるという(笑)。
石見:もう大興奮だよ! 当たり前の日常が送れることを幸せに感じる。そんなキャラクターなんじゃないかなって思いますね。
川井田:これまで蓄えてきた知識を、慧月の身体で実践してみるという、とてもオタクっぽい感じもあるんですよね。
──身体が弱くて、こういうことをしてみたいなと思っても、知識で蓄えることしかできなかったですからね。
石見:そうなんですよね……。
川井田:身体が資本ですね。
──続いて、劣等感が強い朱 慧月について。
川井田:慧月は諦めていない女性なんです。自分が負けている、人より劣っている状況を打破したいと思っているから、大胆なこともできてしまうのだと思っています。ある程度の生活は保証されているわけだから、もういいやと思っていたら何もしないはずなんですけど、あいつにだけは負けたくないという気持ちが強くあるんですよね。だから禁術を使ってでも入れ替わろうとする。到底私にはできないことだけど、力強い女性だなと思います。本来持っているポテンシャルは高いはずなのに自己評価が低い。でも、彼女が自覚していない良い部分を、玲琳によって気付かされていく。ただ、それも認められないというのが彼女のいいところでもあるというか……。
石見:良くも悪くも強欲なんですよね。常にのどが渇いている状態というか。最低限のお水はあるはずだけど、もっと飲まなきゃ死んじゃうという、どこか危機感を持っている印象がありました。これが欲しい、あれが欲しいという欲求に対する発散の仕方、対人の拙さみたいなところは、彼女が育ってきた環境、向けられてきた言葉、冷遇されてきた過去があるからなんです。つまり、感情のぶつけ方がわからないんですよね。玲琳が相手なら、話せば絶対に助けてくれるのに、そうされたことがないからわからない。相手をおとしめるしか、自分が救われる方法がわからない。境遇によって、こういうキャラクター性になったんだろうなと思いながらも、言葉が全部届かないわけではないので、ピュアさも兼ね備えているキャラクターなのかなと思っています。
──境遇を知ると、また見方が変わるキャラクターかもしれませんね。そして、精神が途中で入れ替わるわけですが、演じるのは大変でしたか?
石見&川井田:大変でした!!
石見:完成映像を観て、こういうことか!と理解する感じでした。この作品はなかなかキャラクターをつかめたという実感がなくて、本当に気が抜けない。普段も抜いているわけではないんですけど、この作品ならではの緊張感がありました。毎回ジャッジが怖いんです。
川井田:だいたい最初にテストをやってディレクションをいただくんですけど、そのとき「大丈夫だったかな?」ってなるという。
──ジャッジが怖いというのは、どういうことですか?
石見:マイクを通して聞くと、私とかわちゃんの声が似てしまうらしいんです。アフレコブースで聞く印象と、マイクを通して聞く印象にギャップがあることが判明したんですよね。
それはキャストのニケライ ファラナーゼさん(黄 冬雪役)が、一度スタッフブースで私たちの声を聞いてくれたからわかったんですけど、アフレコブースだと入れ替わったのがはっきりわかるのに、マイクを通すと似てしまう……。かわちゃんと声が似ていると感じたことはないんですけど、その調整に、ずっと時間がかかって……。
川井田:トーンも全然違うのにね。
石見:同じ玲琳でも、私は身体が弱い状態の玲琳なので、身体の弱さと線の細さをすごく意識するようにしているんです。一方でかわちゃんの玲琳は身体は元気で、声帯も少し低めだったりする。ただ、テンションが上がると人って声が高くなるんですよね。
川井田:そしたら「今のところ、音色が玲琳になっちゃってます」というディレクションが入るんです。
石見:だから低いままで感情表現をするみたいなことをしないといけなかったんですよね。逆に慧月は、パワフルな感情表現で、怒りをぶつけるキャラクターだけど、身体が玲琳になってからは病弱な身体になるので、声の線だけは細く、みたいな。
川井田:ちょっとやりすぎると女子高生感が出てしまい、姫さがなくなってしまうという……。
石見:きっと微々たるものなんですけど、すごく難しい。監督は、お芝居重視で見てくださる方なので、基本は音というより芝居を大事にしてくださるんですけど、唯一、私たち2人が掛け合うシーンだけ、音も重要になってくるんです。
川井田:どっちかわからなくなってしまうともったいないからって。
──入れ替わるということは、慧月の中身が玲琳の場合、しゃべり方も玲琳に寄せる感じになるのではないですか?
川井田:第1話の最初のテストは似ていたと思います。それは私自身が(石見さんが演じる)玲琳に寄せていて、音色が同じくらいでもいいと私は思っていたんです。
石見:私も私も。
川井田:でも、そこは分けようということになりました。それもかなり長考されてて。きっと、テスト後にどうしようという会議が行われていたと思うんです。その結果、分けることになって。
石見:やっぱり作品となると、耳で聞いてもわかるように表現していかないといけないから、すごく難しいところですよね。
川井田:あと身体は慧月で中身が玲琳の時のモノローグは玲琳(石見さん)がやるので、聞いていると「うん?」ってなるんです。そこでまたごっちゃになるから、表での声のところは、はっきり区別させるために違いを付けようということになったんだと思います。
──今話を聞いていても、混乱してきました(笑)。他にアフレコでのエピソードはありますか?
川井田:実はこの作品、絵を後から付けるプレスコ収録だったんです。だから尺とかは気にせず、好きにお芝居をして良かったんです。
石見:それはすごく助かりました。
川井田:画面を見ていないときもいっぱいありましたね(笑)。
石見:呼吸の間とかは自由に取ってもらって大丈夫だから、自分のテンポで、お芝居優先でやってくださいと言ってくださっていたので、本当にありがたい現場でした。
──それもあって、先程の完成を観たときに、ディレクションの意味がわかるというところにも繋がるわけですね。
川井田:そうですね。ただ漫画は結構大きな手がかりになってくれていたので、それはすごく助かっていました。






































