
『スター・ウォーズ:ビジョンズ/九人目のジェダイ』神山健治総監督&多田俊介監督インタビュー|「スター・ウォーズ」を日本人が作る理由ーージェダイとライトセーバーに秘められた侍の精神を改めて描く
様々なアニメーション監督とアニメーションスタジオが展開する「スター・ウォーズ」の人気シリーズ『スター・ウォーズ:ビジョンズ』。その中でも屈指の人気作となったのが、神山健治監督とProduction I.Gが担当した『九人目のジェダイ』です。
そんな本作が『スター・ウォーズ:ビジョンズ/九人目のジェダイ』として、2026年8月5日より全8話の長編シリーズとして、ディズニー公式動画配信サービス Disney+(ディズニープラス)で日米同時全話一挙独占配信が開始されました。
今回は神山健治総監督&多田俊介監督のタッグで制作され、シリーズ指折りの名作に仕上がっています。お二人はどのように本作を作っていったのか。
ファン視点で気になる質問をお二人にぶつけてみました!
「スター・ウォーズ」は意外と17世紀っぽい?
──まずは、本作が短編から長編シリーズになったことについてお聞かせください。作品のテーマなどは新たに設定しましたか?
神山:「スター・ウォーズ」シリーズでは、ライトセーバーの色が持つ者の気持ちを表すという設定はないんですが、本作ではそれを最大限に活かしました。さらに、正義と悪の違いが一概に定義しづらい時代設定で、ジェダイが標榜するライトサイドとはどういうものなのかを描ければと考えていました。
多田:ルーク・スカイウォーカーたちが生きている時代、いわゆる「スター・ウォーズ」でいう正史の部分とは、本作は絡みがないストーリーなんですよね。設定的にはルークが生きた時代の200年後をイメージしています。なのでその中で「スター・ウォーズ」たらしめているものは何かと言ったら、それはライトセーバーとジェダイです。
ただ、神山監督がおっしゃったように200年後をイメージした世界なので再定義しなければいけない。ルークの時代にはジェダイ・オーダーなども描かれていたと思うんですが、200年後をイメージした世界では改めてライトセーバーという存在とそれを持つものとはどういう存在なのかを再定義しないといけないと思っていました。
──たしかに「九人目のジェダイ」の登場人物たちは、我々が知っている「スター・ウォーズ」のジェダイたちに比べると、掟や文化に対する姿勢がちょっと薄い気がしました。そういったところも、この世界では時が経ってしまっているんだと感じました。
神山:ジェダイ・オーダーもなくなっていますし。そもそもマスターレス・ジェダイって、危ういところで言うとコスプレイヤーですよね(笑)。
けれど、昔存在していたジェダイ・オーダーをもう一度復活させようという志を持った人たちではあるんです。
──200年という時の流れをイメージした世界についてはどのように考えていらっしゃいましたか?
神山:なるべくテクノロジーや科学を描くものと定義しないで行こうと考えていました。作品全体のテクノロジーや政治的な部分のイメージは、だいたい地球でいうところの17世紀くらいに留めています。
宇宙船も出てきますが、科学的な進歩を描いているのではなく、17世紀の海賊船みたいなイメージですね。それを上手く使える人もいれば、そうでもない人もいる世界です。
多田:「スター・ウォーズ」の面白いところでもあるんですが、新しいテクノロジーの開発に主眼がないんですよね。例えば過去作だと、ワープユニットを新開発するのではなく、中古を探してくるという描写もありました。
ガジェットを次々と開発していくテクノロジーの世界ではなくて、宇宙船が壊れたら次の馬を探すような感じで新しい宇宙船に乗り換える。そうやって社会が成り立っている世界観というのは意識して作っていました。
──言われてみれば、「スター・ウォーズ」はやたらと中古だったりジャンク品を使うことが多いですね。
神山:科学者はあんまりいなくて、技術者がたくさんいる世界ですよね。
日本人が作る理由
──本作ではライトセーバーでの戦闘シーンも見どころかと思います。制作する上で意識したところは?
多田:まず初期段階で神山監督と話していたのが、ここ最近で発表された「スター・ウォーズ」作品が、「スター・ウォーズ」でありながらライトセーバーが主役になっていない作品が多かった、という話です。
我々が作ろうとしているのは、ライトセーバーやジェダイになっていくであろう人たちの話なので、ライトセーバーが主役である以上ライトセーバーが活躍できる映像にしていかなければいけないと思っていました。
実際に作画の面で意識したのは、全面に打ち出しているわけではないんですが、ライトセーバーがサーベルではなく刀をモチーフにしているところです。
神山:日本刀ですね。
多田:そうですね。日本刀をモチーフにしているので、戦闘シーンのコンセプトとしては構えやライトセーバーの持ち方などに日本刀の所作を入れています。
──前作から引き続きですが、セーバースミスも日本刀に通じる部分があります。
神山:元々、「スター・ウォーズ」を作ったジョージ・ルーカス監督は、日本の時代劇である黒澤明監督の『隠し砦の三悪人』をかなり参考にしていますよね。当初の「スター・ウォーズ」は、日本の時代劇から色々なアイデアやインスピレーションを得たんだと思うんですけど、シリーズが進んでいくと徐々に西洋の刀やアクションに影響を受けたであろうシーンも増えている印象です。具体的には中世の騎士のイメージですね。
それ自体は全然悪いことではないんですけど、元は侍をイメージしてジェダイが考えられたことや、せっかく日本人の我々が制作を任されていることの意味を突き詰めていった結果、侍の精神だったり日本刀への考え方をもう少し原点回帰してもいいのかなという気がして。ソルジャーでもなくナイトでもない“侍”を見せたいなと。
ライトセーバーだけではなく、ジェダイの精神や規範の部分に、侍のイメージをもうちょっと入れられたらなと考えていました。
細かいところまで見逃せない!両監督のこだわり
──前作では「わりと自由に作らせてもらった」と神山監督も仰っていましたが、今回の制作はどうでしたか?
神山:「スター・ウォーズ」の正史ではないからこそ、過去作品の縛りがなるべくないようにはさせていただきました。ただやっぱり絶対的な「スター・ウォーズ」ワールドの、ユニバースのルールはありました。
一番参考になったのはフォースの概念ですね。僕はライトセーバーの光もフォースそのものだと思っていたんですが、フォースはエネルギーではないんです。万物に宿ってはいるけど、この世界でのエネルギーではないということは参考になりました。
──そういう縛りも含めて本作はやはり「スター・ウォーズ」だなと強く感じました。最後にお二人が本作で「スター・ウォーズ」を強く感じた部分をお聞かせください。
神山:「スター・ウォーズ」を意識して作ったところはたくさんあるんですけど、「新たなる希望(エピソード4)」「帝国の逆襲(エピソード5)」「ジェダイの帰還(エピソード6)」を特に意識していたように思います。僕が初めて「スター・ウォーズ」を見た時のインスピレーションをなるべくそのままに作っていこうとしていました。
ビジュアルで意識した点は「何か既視感はあるけど地球ではないような環境」です。「帝国の逆襲(エピソード5)」で登場した雲の惑星のベスピンなどはすごく斬新だしもっとやるべきなんですけど、「スター・ウォーズ」のビジュアルとしてはちょっとピンとこない。やっぱり砂の惑星(タトゥイーンなど)や氷の惑星(ホスなど)、ジャングルの惑星(ダゴバなど)でないと、どうしても「スター・ウォーズ」らしさを感じないんです。
それからストーリー面で言えば、壮大な話だけど、なるべく個人の冒険にフォーカスしていくことが大事なんじゃないかなと。宇宙船での旅、どこか別の惑星に行くこと。そういうことを加味しながら作っていった記憶があります。
多田:僕はスタッフから上がってきたものを確認する立場なのでたくさんの成果物を見るんですが、それらを見ていて「九人目のジェダイ」の「スター・ウォーズ」らしさを強く感じたのはドロイドですね。
本編の最後の方で、民間船にミサイルポッドを積んであって戦うシーンがあります。ミサイルポッドに実は目がついているんですよ。あれはシングルタスクのドロイドなんです。「スター・ウォーズ」の面白さのひとつは、シングルタスクのドロイドがいっぱい出てくるところなんです。C-3POとかR2-D2みたいなマルチタスクのドロイドじゃなくて「これしかやりません」みたいなドロイドが出てくるんです。
そういうのを僕なりにデザインの中に仕込ませてもらったりして、私個人はすごく「スター・ウォーズ」っぽいことが出来てるなと思っていましたね。
[取材・文/石橋悠]





























